第1部 取り扱い説明書・・・どこ?

第1話 転移

僕の名前は長谷川直弥はせがわ なおや、首都圏の大学に通う3年生だ。


スポーツは苦手な部類、他に何か特出する物が有る訳でもない

今日も講義を受けた帰りに、あれ? 電車に乗ったよな、

それで降りた・・・そこまでは憶えてるぞ

でも、それからどうしたっけ

駅の改札をでて、駅前を歩いてた・・・よな


で・・・ここどこ?


外国の片田舎? 広場の真ん中に大きな噴水があって、

その縁に腰をかけている?


ごつごつした座り心地、夢じゃないぞこれ。


景色だけだと、地方の欧風テーマパークに紛れ込んだ可能性もあるけど

ここには決定的に違う物があった。


そこにいる人が圧倒的に違う、何だろう、

重量挙げの人もボディビルダーも柔道の無差別級の人も

みんな鎧を着て物騒な物を持っている。


最も、もしここが日本なら

全員が銃刀法違反と凶器準備集合罪だよな。


しかも、どうしてかわからないが。


その危ない人たちが話している外国語らしき言葉が

僕の脳内で変換されて日本語で聞こえている。


その内容がまた

「森林狼相手に斧なんか振り回すな、危ないだろう」

「うるさい、当たれば一発なんだよ」

「なら、俺から離れてろ。こっちだって一発で死んじまう」


「てめーの方が荷物軽いんじゃないか?」

「槍は軽いんだから、もっと持てるだろう」

「なら、剣のほうが軽いだろ、あいつに持たせろ」


「おーい、こっちの脚に大蜥蜴の牙が刺さったままなんだ、抜いてくれ」

「自分でやれよ、それくらい」

「左腕が折れてんだよ、片手じゃ抜けね」


 そういえば、よく見たら斧とか槍とかヌラヌラしてますね


これがか、

これで僕も背の高い細マッチョな金髪碧眼に・・・なってるわけ無いよね


服もパンツも変わってない、貧弱な坊やのままだ

持ち物はスマホと財布と本とノートや筆記具が入ったショルダーバックだけ。


うん、巨大錦鯉マッチョの水槽に屋台の金魚が1匹いるとこんなかな。

絡まれなくても、ケンカに巻き込まれただけで十分死ねる。


覚悟を決めて、まずは衣食住を何とかしよう。


言葉は分かるんだから、少しはましだろう

・・・・・はい、5件目で親父さんに雇ってもらいました。


料理屋?かな、料理を運ぶのと汚れた食器を洗います。


屋根裏に泊めてもらって、まかないを食べさせてもらえる最高じゃないか。







一週間が過ぎた、親父さんに色々と教えてもらったよ。


この街はバールキナというらしい、

グザシマイス王国という国の北西の外れにある街なんだって。


それで、あのムキムキの人たちは資格を持った冒険者で

この近くにあるダンジョンを探索したり、野生動物を狩って生活をしているらしい。


この街にも冒険者ギルドがあって、15歳になると登録できる仕組みになっている。


あんなムキムキの人と15歳の子供が一緒に仕事をするのか聞いてみたら

登録は15歳だけど、すぐに街の外には出ないで街中の雑用から始めるらしい

身分証明書にもなるから、金出すから取ってきておけって親父さんに言われました。


ちょっと明日いってきます。






そんなわけで、やってきました冒険者ギルド。


ドアを開けて、カウンターに並ぶ

若い女の子の所は絡まれるのがセオリーだから、

ダンディなおじさんの所に並びました。


「いらっしませ、冒険者ギルドにようこそ。今日はどういったご用件でしょうか?」

「すみません、ギルドに登録をお願いします」

「初めての登録ですか?」

「はい、そうです。お世話になっている料理屋さんで、

 身分証明書代わりに取っておくように言われまして」

「わかりました、ではこの用紙に記入をおねがいします」

「名前と住所と生まれた国は日本と、はい書きました。確認をお願いします」

「はい、ありがとうございます。日本とは聞いた事の無い国ですがどの辺りですか?」

「それが、気が付いたらこの街に来ていたので、よくわからないんです」

「そうですか、不思議な話ですね?」

「冒険者の登録をするのに問題はありますか?」

「いえ、問題はありません。最後に犯罪歴の確認をしますので、

 この石に手を置いて下さい」

「はい、わかりました」


おそるおそる、手を置いてみた。


「はい、前歴はありませんね、大丈夫です」

「ありがとうございます」


「これで、あなたはGランク冒険者として登録されました。

 では、説明をさせて頂きます。

 まず冒険者ギルドは国や商人や一般の方からの依頼を受ける窓口として

 報酬の受け渡しを問題無く行うために存在します。

 ですからギルドを通さないで依頼を受ける事はギルドの規約違反になります。

 そして、依頼にはそれぞれ難易度が設定されていて、

 Gランクの方は一つ上のFランクの依頼まで受けることができます。

 また、ギルドへの貢献度によってギルドランクが上がりますが、

 上がった場合はそのランクよりも2つ下まで

 例えばCランクの場合は上はBランク、

 下はEランクまで受けることが可能となります。

 ここまではよろしいですか?」


「はい」


「あと、依頼によっては、人数や期間にも指定がありますのでご注意ください。

 ギルドで依頼を受けた後は、依頼主の元に出向き依頼を開始、

 完了して依頼人に確認を取るまでが冒険者の仕事になります。

 その後、ギルドで依頼料の受け取りを行います、

 依頼の失敗や期限に間に合わなかった場合ランクが下がる可能性や

 悪質な場合はギルド資格はく奪までありえますのでご注意ください。

 ギルド証は明日昼には出来ますので取りに来てください。

 何か質問はありますか?」


「いま、料理屋でお世話になっているのですが、この場合はどうなりますか?」


「料理屋と仕事上金銭の授受はありますか?」


「宿と食事を提供して頂いてます・・・あっ、今回の登録手数料を出してもらいました」

「それだけなら、問題ありません」

「はい、ありがとうございます」

「では、仕事の合間にでもギルドの仕事も受けてみてください」

「はい、ぜひそうさせて頂きます、今日はありがとうございました」


店に帰って。

「親父さん、ただいま戻りました」

「おう、無事登録できたみたいだな」

「はい、とどこおりなく」

「それじゃ、手伝いの合間に色々依頼を受けて見な。

この辺の若い奴はそれで街の事を覚えて行くんだ」

「はい、そうさせて頂きます」


そうして、店の手伝いの合間にギルドの依頼を受けていった僕だったけど

大勢で受ける依頼の場合、僕は、この街の少年少女達に比べて圧倒的に

反射速度と筋力持久力に劣る事が分かった。


何か捕まえるとか、力仕事は向いてないので受ける数は減っていく。


その分事務仕事や書類関連は圧倒的に僕が有利だったけどね。


いつのまにか僕は事務作業でいっぱしの報酬が貰えるようになり。


そうして1月が過ぎるころには無事Fランクの冒険者になっていました。




その頃、親父さんに一通の手紙が来て

それ以来、考え込む姿が見えるようになった。


「親父さん、何かありましたか?」

「お前に気を使われるようになるとはな」と親父さんは笑いながら教えてくれた。


親父さんの料理の師匠が急に亡くなって、

そこに居る弟子では店を支えられないらしい。


それで師匠の店を親父さんに継いで欲しいという内容だったそうだ。


「僕の事は気にしないで下さい、親父さんのおかげで生きていく力は

 与えてもらいましたから」


「そうか、じゃあ今度は立派な冒険者になって喰いにこい。 

 王都で待ってるからな」と


僕は親父さんを笑顔で送り出した。

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