このストレージ、誰のですか?
黄昏 暦
プロローグ ワイバーン殺し
僕は今、うつ伏せに寝そべった体勢でいる。
別に、スマホを眺めているわけじゃない。
その体勢でバカみたいに長い
耳に入れたイヤホンから声が聞こえた
『ナオ、来たぞ。ワイバーンじゃ』
「了解」
僕はライフルに取り付けたレーザー照準器のスイッチを入れる
「キーラ、場所は?」
『ナオ、ワイバーン 2・8の位置』
キーラとは事前に地図の位置情報は共有してある、
数字で大体の位置は確認できる。
2・8の位置、つまり、ここから南南西の方角の上空
「了解、見つけた」
大きな灰色の膜の翼を広げて飛んでいるワイバーンが見える。
ワイバーンの翼に照準器の緑の光を当てて引き金を引いた
耳の痛くなる轟音と同時に、僕の右肩に強めの衝撃が伝わる。
ワイバーンは耳障りな叫びを上げながら地上に落ちていった。
「キーラ、この場所から、今落ちたワイバーンは見えない。
少し高い場所に移動するから、
引き続きワイバーンの監視を頼む」
『了解、ワイバーンは地上で暴れてる、変化があれば報告』
長くて重たいライフルをよいしょと担ぎ上げる。
ここに来た時に比べれば、だいぶ力がついたと思う
右手の小高い丘を登って行くと丘の頂上付近でやっと
暴れているワイバーンの姿が見えた。
「いま、ワイバーンが見えた」
左の方から、軽い ボンッ という音と共に
ワイバーンに向かって何かが弧を描きながら飛んでいく。
ソレがワイバーンに当たって、片方の羽根が吹き飛んだ。
僕はまた、地面に伏せてライフルを構える
今度はワイバーンの頭に緑の光を当てて引き金を引く
頭に銃弾を受けたワイバーンは叫びを上げる事も無く倒れた。
「キーラ、ここからは死んだように見えるけど、そこからはどう?」
『ナオ、間違いなく死んでいる』
「了解、警戒しつつワイバーンに接近するね」
【ストレージ】 ヴォン♬
目の前に黒い
これが僕の持つギフト・・・ストレージだ。
僕は長くて重い対物ライフルをストレージに放り込むと、
ワイバーンの落下地点に向かって気を付けて歩いて行く。
目だけでなく、耳もすませて、周囲に何かいないか探りながら歩いていく。
近くの草むらでガサッと音がしたのに反応して、
自分の口から「ヒッ」と声が出る。
そこにはキーラが立っていた。
十歳位の白い髪の少女だ。
手にグロックという、いわゆる自動式拳銃を持っている。
キーラは僕を見るなり
「ナオ、それセーフティかかったまま」
と僕の持つ
あわててセーフティを解除する。
「ナオ、こっち」
ワイバーンの死体の場所までキーラが案内してくれました。
「うわ~ 死んでるね」
でかい蜥蜴の死体にしか見えない。
「死んでいるようじゃな」
ミラセアもやって来た。
金髪碧眼のエルフのお姉さんだ。
こちらは肩にM4カービンを掛けている
「きっちり死んでるね」
サキさんがやって来た。
長い黒髪を後ろで束ねた華奢な美少女だ
手にKH69というグレネードランチャーを持っている。
【ストレージ】 ヴォン♬
精神衛生上も良くないので、ワイバーンの死体はストレージに回収した。
「よし、回収完了、さあ、キーラ、ミラセア、サキさん、街に帰ろうか」
「「「了解」」」
それから2時間、馬車に揺られて帰って来た。
手ぶらなのに疲れるのはなんでだろう。
ようやくバールキナの街に帰って来た。
まっすぐギルドに向かう。
ギルドに入ると、周りの視線が突き刺さる
「なんだ、あの格好は?」
やっぱり、この世界に
合わないのかな?
でも、金属鎧は絶対無理だし 皮鎧でも伏せ撃ちはつらい。
受け付けカウンターに行って、
受付の美人さんに「討伐確認をお願いします」と声をかける
美人さんに「討伐対象はどこですか?」と聞かれるのでいつも通り
「すみません、裏にお願いします」と答える。
こんな目立つ格好なので、そろそろ覚えて欲しいな。
「裏ってなんですか?」・・・・おい、新人か?
カウンターの中を見ると奥に人影がみえる
「すみません、ナオです。裏に回りますね」と声を掛ける
やっぱり奥にいたのはカークさんのようだ
「ナオさん、すみません こっちにお願いしますね」
と裏口から外に案内された。
「おい、あの変な男だれだ? 何で裏なんだ」
「ばか、見るな。あれがワイバーン殺しだ」
「あれが、わざわざ狩りにくいワイバーンを狙う変わり者か」
こんなに有名になったんだから、職員さんも覚えてよ
ダンディなカークさんに案内してもらって、ギルドの裏庭にやってきた
「ではお願いします」
【ストレージ】 ヴォン♬
ストレージからワイバーンを取り出す
「相変わらず、すばらしいギフトですね」
ほんとうに、便利です。
「今回、このバールキナ近くでワイバーンが出たと言う事で
周辺にかなりの被害が出ると心配されていました。
早急に対処して頂いてありがとうございます」
と、頭をさげてくれる。
「いえ、僕たちの得意分野なので近くの仕事はありがたいですよ。
でも、このあたりでワイバーンが出るのは珍しいですね」
「そうなんです、エサになりそうな大きな生き物も見当たりませんので、
おそらく群れから追い出されたハグレだと思われます」
「それは、運が悪かったですね」
「まったくです。はい、確認しました」
カークさんが向こうにいる、職員に声を掛ける
『おーい、これ解体にまわして』
2人で荷車を引きずってきた・・・
「では支払いを行いますのでカウンターまでどうぞ」
「はい」
カウンターには、さっきの美人さんが、怪訝な顔をしてこっちを見ている
「はい、金貨50枚です、ご確認下さい」とカークさんが袋をだしてくれた
袋の中の50枚、確かに確認しました。
日本円に換算すると大体500万円くらいかな
「はい、確かに受け取りました」
「カークさん、どうして手ぶらの人にお金を渡しているんですか?」
おい、美人さん。
「メルノさん、後で説明するので口を出さないで貰えますか?」
カークさん口元が引きつってますよ。
「ですが、こんな変な格好の人」
「メルノさん、黙っててもらえますか?」
美人さんがヒートアップしてきた。
「でも金貨50枚ですよ、そんな大金をそんな」
カークさんが、とうとう一喝した。
「メルノさん、黙りなさい、そしてすぐに裏に行って状況を確認しなさい。
いいですね」
「はい、失礼します」とこちらを睨みつけながら裏口から出て行った。
「ナオさん、本当に失礼しました」
なんだろう、変な正義感かな?
「新人さんですか、すみませんが、あまりギフトについて広めたくないので」
「分かっています、あの子にもちゃんと教え込みますので、どうぞご容赦を」
「すみません、よろしくお願いします」
その時、裏口のドアが乱暴に開かれた。
「カークさん、裏にワイバーンが、どうして」
カークさんが鬼の形相で新人の腕を掴んで外に出て行った。
・・・・さて帰るか。
「キーラ、ミラセア、サキさん帰ろうか」
「「「了解」」」
4人で宿への道を帰りながら、僕は、ここに来た時の事を思い返していた。
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