第2部 第31話 夜の襲撃者
翌朝、ギルドマスターのドノガンさんを訪ねると・・・新たな事件が発生していた。
「ドラゴンスレイヤー殿、すまない。ウチの職員全員でギルドにある資料を当たってみたんだが、このアイロガ周辺の生き物に、該当する黒いモノは見つからなかった。それと、昨夜のうちに、今度は町はずれの馬小屋が襲われたようだ」
「とりあえず、その馬小屋を見せてもらっていいですか?」
ドノガンさんに案内されて行った先は、小さな馬小屋だった。両開きの扉が開いたままになっていて、中に食い散らかされたような馬の死体が散らばっていた。
「被害は・・・馬が1頭ですか?」
見た所、死体は1頭分だけに見える。
「いや、ここには2頭いたらしい。どうやら1頭を持って行かれたようだ」
ちょっと待って・・・持って行かれた?
「馬一頭を引きずっていける生き物ですか? それだと、かなり大きくないと無理ですよね。たとえばメインベアとか?」
以前、メインベアに追いかけられた時の事を思い出した。あの大きな熊なら馬くらいは殺して引っ張って行けそうだ。
「いや、ナオよ。メインベアでは、たとえ何頭おったとしてもワイバーンを仕留めるのは無理じゃぞ」
「そういえばそうだね・・・確かに、ワイバーンは無理だ」
ドノガンさんが遠慮がちに、非常に戸惑ったようすで話し掛けてきた。
「ドラゴンスレイヤー殿、それが、少し妙な話がありまして・・・」
「妙な話ですか?」
「まず、この馬小屋の扉は外から
「・・・ずいぶん、器用な熊ですね」
「それと、地面に馬を引きずった跡が無いのです」
「・・・どうやって、持って行ったんですか?」
「それが、
「紗希ちゃん、馬2頭が昨日の夜で、ワイバーンが3日前の夜なんだよね。相手は夜行性の生き物かな?」
「動物でも
「監視カメラは無かったよね? それなら夜中に餌を置いて待ち伏せてみる? もし熊や狼、トラやヒョウみたいな生き物を相手にするなら、
サキさん達と相談した結果、とりあえず、今夜は罠を張って、みんなでブラッドレーの中で見張ることに。
かわいそうではあるけど、正体不明の黒いナニカをおびき寄せる為、ドノガンさんに頼んで、森の近くの開けた場所に杭を打ちこみ、その杭に用意してもらった馬を1頭繋いでもらう。
「長谷川さん、それじゃあM2ブラッドレーを出してください」
「長谷川さん、リストのココ、この車両と赤外線サーチライト2台と電気系の接続工具、あと赤外線ゴーグルを8つ出してもらえますか?」
「長谷川っち、リストからコレを2つ出して欲しいの」
【ストレージ】 ヴォン♬
サキさんと、一条さん、それに早乙女さんから頼まれたモノを取り出す。
サキさんはブラッドレーを移動させて、馬から50m程離れた所に横向きに設置した。
西園寺さんは、キーラやミーラと一緒にブラッドレーを隠す為の木や草などを集めてくれている。
一条さんは馬を左右から照らす様に距離をおいて、2台のサーチライトを設置している。骨組みだけに見える変な車からはコードを伸ばして接続しているようだ。
確か、砂浜を走るビーチバギーってあんな形じゃなかったかな?
「リモートで赤外線サーチライトのスイッチが入れられるようにしておくよ。スイッチは紗希に渡しておくね」
「ありがと、真輝・・・・ところであんた、なんて車から電源を取ってるの?」
「言うな、紗希。一番小さな車両がコレだっただけだ」
「これって、
「まあ、ちょっと悲しくなるけど。小さくて隠し易い、ピッタリじゃないか?」
「真輝ちゃん、それでも
早乙女さんが、両方の肩にショルダーバッグを掛けたままで文句を言っている。
「一応コレ、リストでは
ところで、椿。その濃い緑のショルダーバッグ、ドコカで見た憶えがあるんだけど、何だったっけ?」
「罠といえばコレで決まり」
早乙女さんが、片方のショルダーバッグを掲げて見せた。
「やっぱり、そのバッグ、
「そういえば、そうだった・・・位置が決まったら教えるね」
「ドノガンさん、今夜は町の人を絶対にココに近づけないようにしてください。
『遠くから見物しよう』も禁止です」
「もちろん、そのつもりではおりましたが・・・そんなに危険な相手なのですか?」
「いえ、相手はわかりませんが、僕達の攻撃に巻き込む可能性が高いです」
「そうじゃな、ここが見える場所なら間違いなく危ない。
町の人間の無残な遺体を見たく無ければ、ここには絶対に近づけさせない事じゃな」
「承知いたしました。徹底させます」
「そういうわけで長谷川さん、夜中に何か出て馬が騒ぎだしたら、赤外線サーチライトを点灯、そこに
「サキさん、そういえば、BMP-1の後席にも中からライフルを差し込む穴と覗き窓が付いてたね・・・結局使わなかったけど」
「長谷川さん、この中を見てください。ブラッドレーはスゴイんですよ」
そう言って、ブラッドレーの後席というか兵員室を案内してくれたんんだけど・・・
「サキさん、銃が壁に刺さったまま、固定されてる・・・・」
「そうです、これがM231。ブラッドレーの
「ゲームセンターで、こういうのを見た事があるかも・・・」
「それは言わないでください。せっかく開発したのに、ここが装甲の弱点になるからと、すぐに取り外されたあげくに、お払い箱になった可哀そうな銃なんです」
「サキさんも、けっこう酷い事言ってるよ」
「だって、この銃って
「・・・よくわからないけど、そうなのかな?」
「そうなんです」
「それで、今回、僕は何をすればいいですか?」
「ブラッドレーの操縦席は真輝、車長席に椿、砲手席は綾女に担当してもらいます。この兵員室は馬の方に向けて2ヶ所の
「了解、後方を警戒だね」
「夜は交代で警戒する事になると思います、良かったら今のうちに仮眠を取ってくださいね」
「そうだね、そうさせてもらうよ」
※
※濃い緑のショルダーバッグ クレイモア
※M231には、銃の狙いを付ける為の基準となる
(大雑把な説明になりますが、ゴムホースから出る水流を目標に当てる感じです)
※M2ブラッドレーには赤外線画像処理装置が取り付けられてはいるのですが、戦車や装甲車の高温のエンジンを識別する為のモノで生き物の識別は難しいようです。
※
※
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます