第2話 まさか・・・マカのせい?
〖マカ〗
私の中にいる少年、ナオの事を相談しようと、呪いを研究者であるアートを呼び出した。
《マカ、呪いの研究者って、このちょび髭のおじさんなの?》
「ハァ~ッ で? マカ王、何かあったのですか?」
《ねえ、マカ。おじさん、こっちを見て大げさにため息をついたよ》
「アートよ、私もいよいよ最期の時が来たようだ、頭の中で他人の声が聞こえてきた」
《おじさんは・・・嫌そうに『またか』って顔してるけど?》
「はいはい、その声は男性ですか? それとも女性ですか? もし妙齢の美女なら是非とも
「いや・・・その声の主は男性で・・・どうやら子供みたいなんだが?」
「・・・王よ、見損ないましたよ。たとえ妄想とは言え、そこまで落ちぶれましたか?」
《おじさん・・・わざとらしく表情を作って、芝居がかった仕草で腕を振り回して抗議の声をあげてるね》
「ちょっと待てアート、お前、話を無理矢理、変な方向に持って行こうとしているだろ?」
「あの方を亡くされて10年、よもやこのような事になるとは・・・」
《マカ、今度はハンカチを目に当てて、泣くふりをしているよ。
なんで僕はこんな、親父ギャグ混じりのコントを見せられてるの?》
「バカ者、この件に私の呪いが関係して無いか、それが気になったから来て貰ったんだ。呪いを研究している、お前にな」
「そうだったのですか? てっきり、また王の無駄話に付き合わされるのかと思っておりました」
《マカって、ほんとうに王様なんだよね?》
「とりあえず、相手とは会話できていて、視覚、聴覚、味覚、あと痛みの感覚も共有しているようだ。ただ、話した感じだと彼が住んでいた世界は、かなり高度で便利な技術が生活に使われているみたいだぞ」
「住んでいた世界ですか? つまり王は、彼はこの世界の住人では無いと考えている?」
「ああ、国の名前はもちろん、文化や社会の形、食べ物や道具にいたるまでまるで違う。彼の知る過去の歴史にも共通点になりそうなモノは見つけられなかった」
「・・・王よ、それは王を呪っているクソ野郎の影響では?」
《おじさんの口から、暴言、クソ野郎が出たけど・・・誰のこと?》
「アートよ、クソ野郎って・・・
「それって、
「ちょっと待て・・・確かに代々の王は
『まさか・・・マカのせい?』
私の口から出た言葉が、静かな謁見の間に思った以上の大きさで響いていた。
《あれっ? 思わず口走った言葉が、何故かマカの口から飛び出した?》
「マカ王、もしや・・・今の声は?」
「私の口が勝手に動いたな・・・・ナオ?」
『マカ、僕、マカの口を使って話せるみたい』
「それは面白いですな、ナオ君ですか? 私は呪いの研究をしている者でアートと申します」
『
「マカ王は、ちょっと黙っていてくださいね、ナオ君ちょっと話をしましょうか?」
『アートさん、面白そうですね』
〖ナオ〗
【ストレージ】
僕の言葉で、目の前にゆっくりと、黒い
『すごい・・・僕にも出来たよアイテムボックス』
「できましたね。どうやらマカ王の使えるギフトは、ナオ殿にも使えるみたいですな」
『でも、マカよりも発動に時間がかかるし、発動自体が難しいのも多いね』
「なんのなんの、ギフトなんて持ってる人が珍しいのですよ。他のギフトも是非使ってみましょう」
こうして、マカと僕とアートさんが協力して、マカの持っているいくつかのギフトを使った実験が行われた。
『
「さすがに私がマカ王にケガをさせたら、即座に牢屋に直行ですからね。残念ですが実験は止めておきましょう」
『でも、証拠のケガが無くなれば、アートさんが牢屋に行く理由も無くなるよね?』
「そうですね、確かにマカ王さえ黙っていれば大丈夫です。マカ王、覚悟は良いですか?」
「ヤメロ、アート・・・そのナイフを隠せ。どこの国でもそうだが、謁見の間では王の護衛以外が刃物や武器を出しただけで罪に問われるんだ」
「・・・だ、そうです。ナオ君、今回は諦めましょう。マカ王がケガをしたら試してみてください。さあ、次は
【カリキュレーション】
アートさんの持ってきた何かの決算書類に目を通してみて、ギフト発動前と比べてみる。
『すごい、見た数字の一覧が全部記憶出来てる。とりあえず加算と乗算は意識しただけで結果が出てきた。多分、他にの色々と出来るんじゃないかな?
この
「使えるといいですね。たぶん、マカ王も一番良く使っているギフトです」
ちなみに、鏡で見たマカは黒いぼさぼさの髪に金色の冠を被った、目の下に隈を作って口元を引きつらせた普通のおじさんだった。
そうして、マカの中で1ケ月が過ぎる頃には、僕もギフトを使って色々な事が出来る様になっていた。
〖マカ〗
キンッ♬ ピン♬ ビョン♬ ビュエン♬ ピュオン♬
この謁見の間の広い空間に、なんとも珍妙な音が響いている。
ここにはいくつもの弦楽器が並べられ、ナオが私の身体を使ってぎこちない手つきで、1本ずつ
「なあ、ナオ、こんなに幾つもの弦楽器を用意させて、何をやっているのかな?」
『ちょっと実験、ほら、マカの持っているギフトに、呪いを変質させるギフトがあったじゃない』
「ああ、【カース・ミューテーション】だな。私の受けている呪いには使えなかったが、呪いを変質させられるギフトだったはずだ」
【カース・ミューテーション】
ナオが発したキーワードに反応して何かが、私とナオの中でゆっくりと変化していくのが感じられる。
『マカは呪い影響で
「・・・何が出来たんだ?」
『まあ、見てて』
【ストレージ】 ヴォン♬
ナオのキーワードで、いつもの黒い靄が・・・現れたが
「ナオ、なんだ・・・この変な音は?」
『ギフトにカッコイイ起動音つけてみました』
あまりのくだらない実験に、頭を抱えたくなった・・・
「よりにもよって、なんで【ストレージ】に付けたんだ? こういう実験は、せめて一番使い道の無さそうなギフトでやってくれないか? これでは毎回うるさくて使いにくい」
『いいじゃない、カッコイイよ』
「まあ、ギフトが変質出来るというのはスゴイ発見だな。ただ、今度からは、せめて相談してからにしてくれないか?」
『わかった、もっとカッコイイの考える』
「・・・すまないが、さっきの発言は撤回する。今後、効果音を付けるのをやめてくれ」
『え~』
『』ナオの声(マカの口を使った)
《》ナオの声(マカだけに聞こえる)です。
※ストレージの起動音は、当時中学2年生のナオが貼り付けました。
まさか・・・ナオのせい・・・です。
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