第3部 第10話 王都・・・到着
〖ナオ〗
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
青空の下、リズミカルな射撃音が響いている。
ここは・・・街道から少しだけ外れた、とある大岩の近く。
僕(マカ)は、やや前かがみの姿勢でM4カービンを構え
その大岩に向けて、ひたすら射撃を繰り返していた。
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
「マカ王さま、とにかく(銃を)撃つことに慣れてくださいね」
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
「マカ王、その調子です・・・命中は
ダダダッ
「は~い王さま、撃ち尽くしたらすぐにマガジン交換。
まあ・・・そのうち身体が勝手に動くようになるから大丈夫だよ」
えっ・・・今は、王都に向かって移動中のはずじゃないのかって?
そうなんだよ・・・どうしてだろう・・・おかしいよね?
でもね、移動中・・・射撃訓練が出来そうな場所を見つける度に・・・
前を走ってるハンヴィーが・・・急停車するんだ
そして、その急停車のたびに、
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
「あの~みなさん・・・先を急ぐ予定では?」
「長谷川さん。私達は王都の後、ニョロニョロのいるサーサンタに行くのですよ。マカ王さまには、サーサンタに到着する前に、とにかく銃に慣れておいていただかないといけません」
「そうだな、特に最初の内は、変なクセが付かない様、反覆練習が必要だ」
「しかも本人がやる気なんだよ。この機会は絶対に逃しちゃダメ」
《マカ・・・みんな、マカがサーサンタで銃を使う前提で話をしているね》
〖まあ確かに、そんな状況が絶対無いとは言い切れないが・・・できれば避けたいな〗
《いくらマカが銃を覚えたいって言っても、言ったその日にもう3回目の射撃訓練だよ、さすがにこれは多すぎない?》
〖ああ、かなり疲れてきたが・・・あの3人が、ここまで熱心だとチョット断りにくい、まあ、さすがに今日はこれで最後だろう・・・もう少しだけ頑張ってみるよ〗
ちなみにサキさんは珍しく今回はフォローにまわってくれているらしい。
〖サキ〗
「ねえみんな、どうして私だけ・・・マカさんの訓練に参加しちゃダメなの?」
ああ、マカさんの撃つM4カービンの、軽快な3点バーストの射撃音が聞こえてくる・・・
マカさんの射撃訓練中、私だけが、
カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ・・・・ジャッ
もちろん、前みたいに1発づつ指で押し込んだりはしていない。
ドワーフの職人さんに作ってもらったマガジンローダーを使って
30個並べた5.56mmを一気にジャッ・・とマガジンに押し込むので、
思ったよりも大した作業じゃない。
「ごめんね紗希、マカ王さま1人の訓練に、さすがに4人はいらないと思うの」
「それを言うなら3人だって多いわよ」
「というか・・・紗希には、グレネードフィッシングとかピッキングとか、キーラちゃんにろくでもない事を教えた前歴がある。悪いが、信用出来ない」
「キーラちゃんには、ちゃんとした事も教えたよ・・・ねっ キーラちゃん?」
私のそばで作業を見ていたキーラちゃんに同意を求めると、キーラちゃんは即座にうんうんと頷いてくれている・・・が、悲しい事に、だれもそっちを見てくれない。
「ねえ、紗希ちゃん」
「なによ、椿」
「紗希ちゃんは王さまに、
「え~」
カチャ カチャ カチャ カチャ ・・・
肩を落とし、再びマガジンローダーに銃弾を並べ始めた私の肩を、キーラちゃんが優しくポンと叩いた。
「キーラちゃん?」
カチャ カチャ カチャ カチャ ・・・
「大丈夫、サキはスゴイ先生」
「ありがとう、私のことをわかってくれるのはキーラちゃんだけだよ」
カチャ カチャ カチャ カチャ ・・・
「ん、だから次も教えてほしい」
「何かな? 先生がなんだって教えちゃうよ」
カチャ カチャ カチャ カチャ ・・・
「じゃあ・・・
「えっ?」 ガチャッ
手元が狂って、マガジンに押し込もうとした銃弾を全部ばら撒いてしまった・・・いや、そんな事より・・・
「えっとね、キーラちゃん・・・アレ、けっこう危ないんだよ」
「・・・ダメ?」
可愛らしく首をかしげるキーラちゃん・・・最近見せる、こういった仕草はミーラちゃんの影響か?・・・いや、ミーラちゃんの教育の成果かもしれない。
「キーラちゃん・・・C4もクレイモアも、覚える事がいっぱいあるんだけど大丈夫かな?」
「ん、クレイモア・・・きっと便利」
「えっ・・・便利?」
「湖で使う・・・今度は魚と鳥が両方、いっぱい取れる」
私の脳裏には、湖の上を平和に泳ぐ水鳥の群れが、一瞬で水に浮くたくさんの肉塊に変わり果てる、そんな凄惨な映像がハッキリと浮かんでいた。
「おい・・・
私の後ろで
振り向くと、3人が何か信じられないモノを見るような目で私を見つめていた。
「ちっ・・・違うから、私、こんな方法は教えてないからね」
「何を言ってる・・・どう考えても、お前が教えた、グレネードフィッシングの応用じゃないか」
「そんなこと言われても・・・えっと・・・これはダメ・・・だよね?」
私が3人の方を見ると、3人は少し考えてから・・・
「キーラちゃん、その使い方は止めておこう。鳥の群れを・・・ひな鳥や、まわりの他の生き物も含めて全滅させかねない」
「そうね、もし湖の向こう側に生き物がいたら、むやみに傷つけるだけになりそうだわ」
「そう、大きな動物だと逃げ出した先で怒り狂って暴れるかもしれない」
「わかった・・・鳥には使わない・・・サキ・・・教えてくれる?」
私はもう一度3人の方を見たが、今度は目を逸らされた・・・
「長谷川さんに・・・キーラちゃんにも教えていいか・・・聞いてみるね」
〖ナオ〗
道中、4回目の射撃訓練が入ってしまったせいで、僕達が王都オリハガーダに到着できた頃には、すっかり日が落ちてしまっていた。
僕の身体はもうクタクタで・・・正直、今日はもう休んで、ギルドに顔を出すのは明日にしたかった。でもイサーダで貰った伝言が・・・急いで中央ギルドにも行かなければならない。
「では・・・ナオ殿、伯母上。私はこれより王宮に向かいます」
そう、背中に重そうなバックパック、両手には大量の紙束がパンパンに入った手提げ袋を
「ねえ、オリウムさん。僕の方で預かっているそれ以外の荷物は、明日の朝、王宮の方に持って行けばいいですか?」
「はい、明日の朝、王宮の西側の門の前でお願いします。皇国から送ってもらった
こうして僕達はオリウムさんと別れて、やっと中央ギルドへと向かった。
さすがは王都の中央ギルドだ、建物の外にまで中の喧騒が聞こえてきている・・・
「まあ、ギルドマスターの相談したい事っていうのが何なのかわからないけど、ギルドだって僕達が王様に呼ばれてサーサンタに行く事はわかっているはずだよね?」
「それはそうじゃろう。大方、ギルドマスターから王に宛てての手紙か何かを託されるのではないか」
「確かに、それが一番ありそうだね」
ところが僕達が中に入ると・・・正確には僕の後から入ってきたミラセアに気がついた冒険者(大半が巨漢のドワーフ)が次々に口を閉ざしてしまい、騒がしかったギルドの中が見る間に静かになっていった
「・・・まさかアレ、呪姫さまか?」
「・・・じゃああれが、・・・
ほんの一部しか聞き取れなかったけど、コソコソ話の声が聞こえてきた・・・
気になって声の方を振り返ろうとした、その時
「カリキュレーターの皆様、お待ちしておりました。どうぞこちらにいらしてください」
あきらかに顔を引きつらせた女性職員さんが、分厚いファイルを両手に持ったまま、僕が後ろを振り向くのを阻止するかのように、あわてて駆け寄ってきた。
長い薄茶の髪をアップに纏めた女性、彼女は表面上は穏やかな笑顔を浮かべていた。でも、僕にはわかる・・・あの目は絶対に笑ってない。
「あっ、はい。よろしくお願いします」
「誠に申し訳ございません、先ほどからギルドの中が少々騒がしいようですね」
そう言って、女性職員さんが・・・ギロリと、僕の背後に鋭い一瞥をくれる。
「ひっ」「げっ」
短い悲鳴の様な野太い声が聞こえて、ギルドの中は沈黙に包まれた。
「では・・・カリキュレーターの皆様、どうぞ・・・こちらに。
あの件は応接室にて、ギルドマスターが対応させていただきます」
僕達の先を歩く女性職員、マイリアさんというらしいが。
ほどなく、あるドアの前に辿り着き・・・マイリアさんがドアをノックする。
ドン ドン ドン
「ギルドマスター、お話中のところ申し訳ありません」
あれ? マイリアさん。ちょっと待ってください・・・もしかして来客中なんですか?
※グレネードフィッシング 閑話 第1回 ギフト研究会 参照
※ピッキング 第2部 第28話 刻印術研究者 参照
※
《》ナオの声(マカだけに聞こえる)
〖〗マカの声(ナオだけに聞こえる)です。
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