第16話 ワイバーン・ハンター

 「というわけでワイバーン討伐を受けてきました、

  明日朝ギルド前から馬車で出発するね。

  場所は、ここから馬車で2日の距離にあるエルマイノ村

  確認されたワイバーンは1頭だって」


 「おお、そうか。前より数は少ないし、前と同じ方法で良いのではないか?」


 「ああ、向こうで地形を確認してからだけど、同じ方法で良いと思うよ」


 「長谷川さん、一応説明してもらっていいですか?」


 「もちろんだよ、ワイバーンは空を飛ぶ大きな蜥蜴で家畜被害がでてるんだけど

  冒険者は罠を使う方法で討伐するので、人数も準備も日数もかかるから

  あまりやりたがる人がいないんだ。

  そこで僕たちが、ワイバーンの飛行コースを調べて、

  大体500m離れた所でバレットを構えて待っている

  前回はミラセアとキーラに近くの建物に隠れて貰ってた。

  翼を撃って地面に落として、次に頭を撃ってトドメ、

  建物の陰に落ちたら移動して撃ってたけど

  僕の移動時間を稼ぐのにスタングレネードで動きを止めてもらったんだ。

  ただ前回は3頭いたから、3頭目が直接こっちに向かってきて

  死にそうになったね」


 「長谷川さん、ワイバーンは別に傷を付けて殺しても

  報酬に変更は無いんですね?」

 「そうみたい、害獣駆除の面が強いからかな、変更は無かったね。

  前回も1頭は手りゅう弾で首がちぎれそうになってたよ」


 「それなら、いいものがあるので向こうに着いたらストレージから

  出してもらえます?」


 「わかった、後で教えてね」


 「ところで長谷川さん、ストレージに入れた出来立ての料理って

  冷めるんですか?」


 「そいうえば、そういう検証が止まったままだった。

  液体の水がそのまま入るのか、とかやる予定だったのに

  ストレージの中に銃を見つけてそれどころじゃ無くなったんだ」


 「そうだったんですね、そいういのも便利そうなんでやってみましょう」


 「ああ、それじゃあ明日は出発するから今日はもう寝ておいてね」


 「長谷川さんもよろしくお願いしますね」





 翌朝、ギルド前から馬車で出発した。

 もちろん昨夜書いたリストはサキさんが眺めている。

 リストを見て、ニヤ付いている娘の顔を結星さんお父さんは見たくないだろうな。


「長谷川さん、向こうに着いたら、いくつか実験したいので

 よろしくお願いしますね」


「うん、わかった。サキさん、お手柔らかにね」


 サキさんは休憩中にミラセアとキーラに弾の入れ方や

 狙いの付け方をレクチャーしてくれている。


 どちらも楽しそうにしている。


 そうした事をしながら、何事も無く僕たちはエルマイノ村に到着した。


 村の人に村長の家を訪ねると、気前よく案内してくれた。


「村長、客人だぞ~」


 扉を開けて勝手に入っていく、この辺は田舎あるあるだな


「お~い、ちょっとまってくれ~」


 しばらくすると、ムキムキのおっさんがあらわれた


「すみません、村長ですかギルドからワイバーン討伐を

 受けてきましたナオ、冒険者ランクDです」

 

「おお、よく来てくれた。俺がこの村の長でドノバラスだ、よく引き受けてくれた

 こちらのワイバーン被害について説明しよう」


 ドノバラス村長の説明がはじまる、どこで何時ごろ被害が出たか

 地図にに書かれている。


 地形を確認すると、


 前回の村とのにめまいがしてきた。


「どうした、なにか問題があったかな?」


「いえ、ご協力感謝します。この情報は助かります」


 この村長、元高ランク冒険者だろう。



「大体説明はこれ位だ、お茶でもだそう、おーい客人にお茶を頼む」


「は~い、今持って行きます」これまた若い奥さんがあらわれた。


「すみません、ありがとうございます」


「いえ、皆さんの事はから手紙を貰って良く知ってますのよ」


「え? どなたの妹さんなんですか?」


「すみません、私カークの妹でカーリアと申します」


 ドノバラス村長からも・・

義兄あにから、ワイバーンが得意と聞いているのでね

 なんの心配もしていないよ」


 カークさん、教えといてよ、前回との落差が大きすぎるよ。


 「皆さん、ゆっくりしていって下さいね」


 「はい、ありがとうございます」

  ゆっくり休ませて頂きました。





 「長谷川さん、リスト」 

  翌朝、サキさんにリストを見せながら


 「長谷川さん、これとこれをお願いします」

 と言われてストレージから出しておく。


 「ちょっと練習に行ってきますので、ミラセアさん、付いて来て下さいますか?」

 「いいぞ」



 「じゃあ、キーラ僕たちは被害の出ている牧場に行こうか?」

 「うん、行く」


 「ナオ、あそこ」

  キーラが指さす方にワイバーンが飛んでいるのが見える。


 「なあ、キーラ、あれ大きくないか?」


 「うん、大きいね」


 「どこから狙うか?」


 「ん~あそこ?」


 「あの高台の茂みの中か?」


 「うん、見つからない」


 「よし、行ってみよう」


  高台に登ると確かに行けそうだ、ただ、


 「ミラセアとキーラの隠れられる場所が無いぞ」


 「大丈夫、1頭だから1回だけ隠れればいい」


 「そうか? とりあえず帰って相談しよう」


 「うん」


  村長の家に戻ると、サキ達はもう帰ってきていた。


 「ちょっと作戦会議をするので集まってくれ」


  みんな集める


 「キーラと確認にいってきた、ワイバーンは1頭だがかなり大きい」


 「ライフルの位置は決まったが、今度は前に隠れる場所が無いんだ」


 「大丈夫、隠れるの1回だけ、草を被っていれば見えない」


 「いや、やっぱりダメだワイバーンは嗅覚が鋭い、すぐにバレる」


 「それなら、ちょうどいい物があるわ」サキさんがニヤリと笑って説明を始めた。


  そうして、明日の作戦内容が決まった。


 さて、僕は昨日の茂みの中でライフルを構えている。


 僕の横には護衛と周辺警戒の為にキーラが居る


 今回、ライフルにはサキさんの勧めでレーザー照準器と言うのを取り付けた。


 何でも、これを使うと弾丸の当たる所に緑色の光が当たる仕掛けらしい。


 そして僕のにある納屋の陰で隠れているサキさんとミラセアが見える。

 上空にワイバーンが現れて旋回している、予定通りだ

 スコープにワイバーンを入れて・・・本当に緑の光が見える。


引き金を引く


ダァーン


ワイバーンが落ちていく。


僕は立ち上がって、レバーを引くとワイバーンに向かってキーラと走りだした。


サキさんが納屋の陰から出てきて持っていた銃?を構えた。


狙いを付けて引き金を引く ボシュ と音がして小さなモノが放物線を描いて


地上のワイバーンに向かって飛んでいく。


それはワイバーンに当たって爆発した。ワイバーンが叫び声を上げる。


サキさんは銃?を操作するとパコンと銃身の根元部分が上がって、

大きな薬きょうが見える。

それを手で引き抜いて、次の弾を差し込み銃身を元に戻して、

狙いを付けて発射した。


その小さなモノが直接当たっても、また近くで爆発しても

ワイバーンは叫び声を上げるだけで動けない。


サキさんが5発目を撃ったころ、やっと僕の位置から狙える場所にきた。


うつ伏せになって、ワイバーンの頭を狙う


ダァーン 


頭ではじけたが・・・・まだ生きている?


レバーを動かして次の弾を装填して、もう一度頭を狙う


ダァーン


やっと動かなくなった。





「うまくいきましたね」サキさんは嬉しそうだ。


その手に持っているのはH&K HK69グレネードランチャーという

銃なんだそうだ。


なんでもコレは、小さな手榴弾を遠くまで飛ばすための銃らしい。


【ストレージ】 ヴォン♬


ワイバーンを入れて・・・・


「ミラセア、キーラ、サキさん。それでは村長に報告に行きましょう」







 エルマイノ村のワイバーン退治をしてから3ヶ月が過ぎた。




 カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ


 あの後、何回かワイバーンを倒してから


 カチャ カチャ カチャ カチャ・・・・・・・・・


 僕たちはバールキナのワイバーンハンターと呼ばれるようになっていた。


 カチャ カチャ カチャ・・・・・・・・・・・・・


 僕は今作業をしている


 カチャ カチャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やっと5.56mmのマガジン30本に弾込めが終わった」

 疲れて固まった肩をグルグル回して息を整える


「次は7.62mmか」


 カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あの後、僕が書いたリストによって 


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


パーティーメンバーの装備が大きく変わった。


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


キーラは背も急に伸びて幼女から少女に変わった


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 髪も肌も灰がかった色が抜けて、真っ白になった


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


武器もグロックという9mmのハンドガンを使うようになった


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「次は9mmパラだな」


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


サキさんはグレネードランチャーを主に


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


サイドアーム(というらしい)にキーラと同じ9mmのハンドガンを使っている


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、一番変わったのはミラセアだった。


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


彼女は今M4カービンに


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


グレネードランチャーを装着して使っている


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、僕は、弾を込めている。


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


壁を見ると予定表が貼ってある


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ギルドが商会からの経理協力依頼を纏めてくれたらしい


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


個別に対応しなくていいのは助かるが


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結構タイトなスケジュールだ。


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ああ、これが終わったらリスト書かなきゃ


カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・




やっと、おわった・・・・・・・・


「なあナオよ」


「なにミラセア?」


「いや、このあいだギルドで、お主の事が噂されておってな」


「うん?」


「いや、わらわ達とナオとのあいだで主人設定の契約がされておるだろう」


「そういえば、そうだね」


「ギルドに来ている冒険者の奴ら、勘違いをしておるようだ」


「何を?」


「どうやら、いつも忙しいナオを見て、

 お主が奴隷だと思い込んでるみたいでな」


「やっぱりか、僕のご主人様が誰か分からないけど。

 僕も最近そうじゃないかなって思ってたよ」


いつのまにか僕は冒険者ランクCに皆はランクDになっていた。

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