第17話 グザシマイス王国の危機


 さて、僕は、なぜここに居る


 ここは王城の会議室で王様と宰相とミラセアとサキさんが

 僕の前で話をしている。


 どうやら、王国最大の危機が来ているようだ。

 さて、僕ななぜここに居る?





 この世界には甲殻竜という存在が居る、

 おおよそ50年周期で北部森林地帯から現れて南下して海に到達する。

 50年に1度の事なのでまあ、見物客も出て大騒ぎになるんだが・・・


 今年、50年ぶりに出てきた場所は記録より、やけに東寄りの場所だった。

 調べてみると、前回よりも東に5kmずれていた。


 50年前のコースを5km東にずらしてみた

 そのずらしたコースの下に王都があった


 「宰相、甲殻竜の大きさは」


 「はい、全長300m程です」


 「王都へは、どれくらいで到達するんだ?」


 「およそ1月ですね」


 「対策は?」


 「各騎士団の出動とランクA以上の冒険者にはギルドから

  強制参加依頼を出しています」


 「確か・・・甲殻竜には接近不可能では無かったか?」


 「王よ、正確には生き物が1km以内に近づくと、

  警戒して背中の岩の槍を飛ばしてきます」

 

 「槍を避けながら接近して攻撃するしか無いのか?」


 「いえ、先遣隊の報告では槍の数が多く速度が早すぎます、

  乗馬した状態で接近を試みましたが近づくどころか

  逃げるのが精一杯だったそうです」


 「王様、宰相閣下、方法があります」


  サキさん? 何?

 

 「おお~、さすがサキ殿」

 「ただ、必殺の罠を仕掛ける為に、ご協力をお願いいたします」

 「もちろんじゃ」





 僕は今、双眼鏡を覗いている、

 視線の先には赤い旗が立っている。

 旗を中心に地面には

 半径5m、10m、15m、20mの円が描かれている。

 

 耳に差したイヤホンからサキさんの声が聞こえた

 「長谷川さん、準備いい?」

 

 「大丈夫、見えてるよ」

 

 「それじゃあ、行くね。発射・・・・・弾着~今」


  視界の中で爆発が起こる。


 「目標の右5m、後ろに15mだね」


 「了解、修正してする・・・準備できた、次いくね。 発射・・・・・着弾~今」


 「左右はばっちり、でも前に5mに落ちた」


 今、これは迫撃砲というのを試しているらしい。


 なんでも8km程離れた所から、放物線を描いて落ちてくるらしい。


 高台の上に2台設置するのだそうだ。


 あらかじめ、距離と方向を設定しておいて、甲殻竜が来るのを待つ作戦らしい。


 ちなみに無線機は発電機とガソリン入りの牽引トレーラーと一緒に

 ストレージから取り出して、最近使うようになった。




迫撃砲設置の後


今、僕はムキムキさん達の穴掘りを見ている。


あの腕力はとても真似できないな、

まる1日かけて乗用車がすっぽり入りそうな穴が出来た


穴の中に降りる梯子が掛かっている。


サキさんがリストを指さしながら

「長谷川さん、ストレージから、これ100個だしてくれる?」といわれて


【ストレージ】   ヴォン♬  


出してみる。何だろうコレ? 薄い透明のビニールに包まれた

石鹸か粘土みたいだね。


「ごめんね、長谷川さん。とりあえず危ないからストレージから出したら

 少し離れててくれますか?」


「これ、危ないの?」


「いや、大丈夫なはずなんだけど。私も実際に使った経験は無いし

 さすがにこの量の爆薬は精神的にね」


 サキさんも緊張の面持ちで、動きが硬いきがする。


「サキさん、この粘土、爆薬なの?」


「長谷川さん、C4コンポジット・フォーとかプラスティック爆薬って聞いた事無い?」


「ごめん聞いた事無い」


「これ自身は、少々乱暴に扱っても大丈夫で、たとえ火を着けても

 ゆっくり燃えるだけなんだけど、起爆装置を使うと爆発するの」


「そうなんだ」


「前に、動画で見たけど、この塊3個でバスが吹き飛んでたよ」


「こんどは100個、使うんだ?」


「うん、それから、これも使うよ」


 サキさんは爆薬の上に土を掛けさせて、その上に古い剣やナイフを並べだした。


 「サキさん、これ何?」


 「爆発って熱と爆風だけだから、その力でこれをぶつけるの」


 「実際に使うときも、こうなの?」


 「釘やパチンコ玉、あとワイヤーとかが多いのかな?」

  導火線を出しておいて、上から土を掛けるように指示をしている。





 「さ~て、現代兵器がファンタジー生物に、

  どれだけ効果を上げるか楽しみですね」


 「サキさん」

 さすがに不謹慎では?


 「だって、東京ドームより大きい生き物ですよ

  国立競技場でやっと同じくらい。

  こんな生き物を相手にするんですから、それ相応の準備をしないと失礼ですよ」


 「実感わかないけど、そんなに大きいの?」


 「長谷川さん、これでダメならもう一つ出してもらわないといけませんから

  よろしくお願いします」


  ・・・・まだだすの?







  甲殻竜がやってきた、デカイ、

  国立競技場が歩くって言われても理解出来なかったけど・・・


  カタチは、いて言うならカメ?

  岩山の様な甲羅にハリネズミの様に岩の槍が密集して生えていて

  象の足に似た6本の脚には尖った鱗が生えている。

  そして、カメの頭の所に長い首と2本の角を持つ龍の頭が付いている。


  岩の槍は、射出した後、体内から生えてくるそうだ・・・

  いくら6本ある、あの太い脚でも、自重が支えられるわけがないよな。

  ソレが動いている、物理的におかしい。


  

 「キーラちゃん、聞こえますか?」


 『サキ、聞こえる』


 「甲殻竜が接近してきています、指示を出したら予定通り起爆してください」


 『分かった』


  甲殻竜が歩く度に大きな音と共に振動が伝わる


 「キーラちゃん、起爆準備・・・・・・・起爆」

 『起爆』


  甲殻竜の胸のあたりで赤い炎が上がり、甲殻竜の身体が


  爆発音とともに甲殻竜の叫び声が辺りに響く


 「では、こちらも開始します。長谷川さん、ミラセアさん、やってください」


 僕とミラセアはそれぞれ砲弾を持ち上げて、手順通りに砲身に落とし込む

 落とし込まれた砲弾は シュポ っという音と共に空に撃ちあがった。


「着弾・・・・今 命中しました。このまま続けてください」


 僕とミラセアは次々と砲弾を落とし込んでいく 

 両方の砲弾がそれぞれ20を超えたあたりで動かなくなった。


「目標、動きませんが、それぞれ、あと5発お願いします」


 サキさんの指示通りに撃ち込んだ。

 周囲の人々が歓声を上げている。


『サキ?』


「どうしました、キーラちゃん」


『馬に乗った冒険者が、甲殻竜に近づいている』


「まったく勝手な事をして、甲殻竜が死んでるか、まだ確認できてないんですよ」


『サキ、甲殻竜動いてる』


「死んだふりですか。キーラちゃんは、そこから退避してください」


『わかった』


「長谷川さん、高台から降りて少し甲殻竜に近づきます。

 そこで、もう一つアレを、お願いします。

 ミラセアさんは、この後の攻撃でトドメが刺せなかったら

 通信を送りますので、引き続き迫撃砲の発射をお願いします」



サキさんと一緒に高台から降りていく

甲殻竜は? 動きは鈍いが、まだ周囲に岩の槍も飛ばしている


【ストレージ】 ヴォン♬


高台を降り切ったあたりで、僕はサキさんに頼まれたもう一つを

ストレージから取り出した


見かけは大きな天体望遠鏡にも見える

設置してスィッチを入れるとモニターに映像に甲殻竜が写し出された。


「頭を狙って、撃っちゃってください」


発射ボタンを押した、大きな筒の中から筒(?)が発射される

ヒモ? が2本、糸電話みたいに筒から出てるけど? なにか失敗した?

その時、それまで頑なに直進して来た甲殻竜が向きを変えようとした、

このままだと頭に当たらない


「長谷川さん、ジョイスティック動かして頭を追いかけて」


 え? これ動かしていいの? 動かすと何と筒の方向が変わった

 筒は甲殻竜の頭に当たって頭蓋にめり込み爆発した。


「サキさん、これ何?」


「ああ、TOWミサイルですよ、いわゆる対戦車ミサイルです。

 これ、有線誘導なんですよ」

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