第18話 海の向こうへ

 王都はお祭り騒ぎだ、いや、実際に王家が主導でお祭りが開催された。


 僕たちが主賓らしいので逃げられなかった。


 ここぞとばかり王都の文官たちが近寄ってくる、

 ゴメン仕事の手伝いの話はやめて欲しい。



 今現在まで、甲殻竜が倒された記録は無く、

 竜種の討伐も500年ぶりくらい・・・らしい。


 僕たち4人は【ドラゴン・スレイヤー】の称号をもらってしまった。


 実際、僕は物資を出しただけで、ほとんどサキさんの手柄だけど良いのかな?


 貴族の地位や領地の話も出たが、全て断った。


 せっかくなので、この機会にキーラに奴隷からの解放を勧めたけど、

 こっちはキーラに断られてしまった。


 僕の冒険者ランクはB、皆はCになっていた。

 

 せっかくなので、一週間程冒険者仕事を休んで王都に滞在する事にした。

 親父さんへの挨拶は当然一番にすませたよ。





 そろそろ、王都を出ようかと、4人そろってギルド長に挨拶に行った帰り


「お~い、ドラゴンスレイヤー」と声をかけられた。


 タリアさんだ


「タリアさん、ご無沙汰してます」


「おお、ナオ、すごいじゃないか」


「いや、仲間が全部お膳立てしてくれました」


「それでも500年ぶりのドラゴンスレイヤーだぞ」


「ありがとうございます」


「ところで、ミラセアクアラ様、先日頼まれていた件で少し」


「うぬ、では部屋にいこう」


「はい、ではこちらに」


「ナオ、キーラ、サキ ちょっと一緒に来てくれぬか?」


「どうしたの?」


「あの子にキーラの妹の行方を当たってもらっておったのだ」


「ミーラ?」


「何か分かったらしい、聞きに行こう」


「そうだね」





タリアさんの部屋に伺う

「よく来て下さいましたミラセアクアラ様」


「ああ、タリアルモイラ。手間をかけたな感謝する、それで情報は?」


「はい、ミーラは今、グザシマイス王国にはおりません」


「では、国の外なのか?」


「はい、1年前に、マーグナスの港から海洋国マルザムに奴隷として

 船に乗っていたようです。その後の行方は確認出来ませんでした」


「それなら行くしか無いですね、タリアさん、船でどの位かかるんですか?」


「風が良ければ2ヶ月かな」 


 そういえばマーグナスで帆船を見ましたね・・・船で外国か?


「僕は、この国から外に出た事は無いのですが、

 出るのに届け出は必要ですか?」


「ギルドに出せばいいが、今、国から出れるのか?」


「え? どういうことですか?」


「いや、ドラゴンスレイヤーで国の英雄扱いだから、

 ギルドに国から出さない様に指示が出てるかもしれないぞ」


「・・・それは困りますね、確認しておかないと」





  急いで、王都ギルドに確認に向かう。

  ギルドの受付で、担当者に


「結論から申しますと、出国を控えて頂きたいのですが。

 これは、あくまで国からの要望です。

 出国を止める程の指示はでておりません」


 「ありがとうございます」


「ただ、ギルドでも皆さんの動向を確認しておきたいので。

 行く先々で必ずギルドに顔を出して頂く様お願いします」


 「はい、承知しました」






  宿でこれからの予定を話し合う


 「みんな、王都から港町マーグナスまで馬車、

  そこから船で海洋国マルザムなんだけど、

  何を準備すれば良いだろうか?」


 「海上では、弾をばら撒いても大丈夫ですから、

  フルオート出来る銃でもオッケーですよ」


 「いや、いきなりそっちですか? サキさん」


 「万一の為に、水と食料をストレージに確保しておいた方が良いぞ」


 「流石です、ミラセア」


 「ねえ、海って何?」


 「ごめん、キーラ。海に連れて行った事無かったね」


 「ところで、海洋国マルザムってどんな国なのかな? 

  やっぱり王様がいる王制の国?」


 「いいや、マルザムはいくつかの島からなる諸島国家でな、

  島から代表を出して話し合い等で決めているらしい。

  海運と漁業が主産業の貿易国家じゃよ」


 「そうなんだ、でも、それだとマルザムの冒険者って何をするの?」


 「船の護衛や、海賊討伐、海や島の生き物の採取や討伐じゃな」


 「それだと、普通は飛び道具が無いと無理だよね?」


 「あそこでは弓の需要が高いな、

  あとは自然と槍などリーチの長い武器を使う人間が多くなるそうだ」


 「確かに僕たちには有利な場所だね」


 「そうじゃろう」


 「向こうに着いたら、奴隷商を見つけてキーラの妹を探そう」


 「それがよかろうな」


 「それじゃあ、明日は、みんなで水と食料品を買いに行こう」


  そうして、部屋に戻った。




 【サキ】


 私は自分用に作ったリストを見ながら考えている。


 これは長谷川さんの書き出したリストを写させてもらった物だ。


 しかし、このリストの内容だけど、

 まずこれ、かなり古いな、

 おそらく私が生まれる前に作られたものだと思う。

 少なくとも、ここ10年の新しい銃はリストには記載されていない。

 それと・・・実際にはありえない物が有る。

  

 AUTOMUG44 通称オートマグ 


世界で初めて、自動拳銃でマグナム弾の使用を可能にした、この銃

しかし、あまりにも作動不良ジャムが多いのでオートジャムと呼ばれた銃

刻印からして、近年発売された復刻版ではないだろう。

物珍しさから、ストレージから出してもらって試射してみたが・・・

何度撃っても作動不良が起きない・・・なんで普通に撃てるの?

この銃に作動不良が起きないなんてありえない。




 H&K G11 


薬莢を使わない画期的な弾丸を使用する事で

1マガジン50発を達成した自動小銃

しかし、色々と問題が有って開発中止。

こんなモノがストレージの中に何故かある。

この自動小銃が使う4.7mmCls弾は、今やレアアイテム扱いで

海外のマニアにコレクターズアイテムとして高額で取引されている。

あれ? 4.7? 4.73じゃなかった? 覚え違いかな?

弾丸だけでも、向こうに持って帰れたら一財産出来そうだ。


忘れてた・・・ダメだ、実弾を日本に持って帰ったら逮捕案件だ。





 120mmAPFSDS   装弾筒付翼安定徹甲弾


・・・これ主力戦車メインタンクの砲弾だね、

 まさかストレージの中に戦車あるの?






 【ナオ】


 僕は夜に頭の中のリストをノートに書き写す事を日課にしている。


 リストは大量で、いつこの作業が終わるのか想像もつかない

 ただ、リストを見ている時、たまにに行き当たる。


 その文字はモザイクが掛けられていて読めなくなっている。


 どうやら危険なものらしく、隠してあるらしい

 文字に集中するとまるで警告する様に文字が点滅して

 頭痛と吐き気がやってくる。


「いや、迫撃砲やプラスティック爆弾より危険な物って何よ?」


 どうせ、読めないのでサキさんには黙っているけど、これは一体なんなの?






【ミラセア】


おかしい、キーラに感じるこの違和感は一体なんじゃ?


特に、ミーラの行き先がわかった時、


キーラから感じた殺気は一体?


キーラ、おぬしの目的はミーラに会うだけでは無いのか?


キーラの目の奥に、何か暗いものを感じる。


これは、何か大きな勘違いをしているのかもしれん。


キーラから目を離さぬようにせねばな。






【キーラ】


私、キーラ、14歳。


今、自分の銃に弾を入れている。


サキはキーラには、この銃がいいと教えてくれた。


なまえは ぐろっく26 という名前だ


だから【ぐろっく】と呼んでいる


海の向こうマルザムという国にミーラが行ったとタリアが教えてくれた。


私、ミーラを見つけないといけない。




今、自分の銃に弾を入れている。


私、



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