第2部 第12話 エルフの国へ

エーライザル王国から届いた、ミラセア宛ての書簡には、

ミラセアいわく、


できれば近日中に王都ナーエムナの王城に来る様に、

そこで国王との謁見の場を設けると

書いてあったらしい


「すまぬが、ナオ、皆と一緒に来て貰うぞ」

「僕は、ミラセアの横について行くだけだから別にいいよ」


こうして、この皇国から北に向かって隣国であるエーライザル王国

に顔を出しに行く事になった訳だけど・・・


「そういえば、ミラセア。

 僕達、船以外で国境を越えた事が無いんだけど

 何か手続きはいるのかな?

 どうしたら良いんだろう?」


「そういえば、そうじゃったか。

 国境の検問所で確認くらいははあるじゃろうな、

 たいていの冒険者は依頼で国家間を移動するわけじゃから

 ギルド登録証の提示で問題ないはずじゃぞ

 まあ、この書簡があれば確認すら無いやもしれぬな」


「そうか、王様からの呼び出しに応えての入国になるのか。

 エーライザル王国までハンヴィーだと、どれ位かかるかな?」


ここ皇都オーヴェリアからエーライザル王国の王都ナーエムナに行くには

街道を北に向かって、まずは北の街ヴェンシア、

さらに北上して国境近くの街ギュスを通り

そのまま、北の国境を形作る翼の山脈のフェク峠にある検問所を通過

王国側の町、ピクトを通って王都ナーエムナに到着となる。


「急げば、国境まで2日ほどじゃと思うが、

 サキが、あの3人にハンヴィーの教習きょうしゅうをするとか言っておらんかったか?」


「そういえばそうだった、

 それなら、ゆっくり練習しながら

 夕方までに次の町に到着すればいいね」


そうして、僕達は皇都の北ある大きな街ヴェンシアを目指して

ハンヴィーを走らせた。





え~っと、現在、広い平原でハンヴィーを

サキさんは、始めは西園寺さん、次に一条さん、そして早乙女さんと

ハンヴィーの運転方法をレクチャーしていましたが、

3人共、あっという間に運転を覚えてしまいました。


今は、ストレージから、あの運転しやすいUAZ-3151を出して

草原で自由に練習してもらっています・・・・そして、ココでは


「紗希、そっちのケーブルは繋いだ?」

「3回確認したから大丈夫」


ミニガンをハンヴィーのバッテリーに繋ごうと色々試行錯誤している

サキさんと西園寺さんの姿がありました。


「出発する時には、そのケーブルはちゃんと外してくださいね」


どうやら、陽が傾く前に、バッテリーを接続して

ミニガンが稼働する事は確認できたらしいです。





日が暮れる前に無事ヴェンシアの街に到着しました。


ミラセアに宿を確保をお願いして、僕はギルドに顔を出しに行こうとしたら

僕の護衛にキーラとミーラが付けられた。


そういえば、キーラって元々は僕の護衛の為に来て貰ったんだった。


「すみません、皇都から今到着しました。

 カリキュレーターのナオです。冒険者ランクA。

 明日にはギュスに向けて出発しますが、挨拶にきました」


「ドラゴンスレイヤーのナオさまですね、

 よーこそヴェンシアへ、ギルドをあげて歓迎させて頂きます」


よし、義理は果たした。


「ナオ、さっきの屋台見たい」


「さっきって、いつ? どれ? このギルドに来る途中

 けっこう沢山の屋台が出てたよ?」 


「いい匂いしてた」


「僕には、それだけじゃ特定は無理」


「ナオさま、姉の気にしていた屋台には見当がついてますので

 宿が決まって迎えがきたら一緒に行きましょうか?」


「ありがとう、ミーラ、助かるよ」


しばらくすると、一条さんと早乙女さんが迎えに来てくれた。


「屋台、待ってる」


キーラに腕を引っ張られる・・・


「ごめん、一条さん、早乙女さん、キーラが屋台に行きたいらしい

 ちょっと付き合って」


ミーラの案内で行った屋台は、かなり大きな串焼きだった。


「ナオ、3本」


「一条さん、宿で夕食は?」


「もちろん頼んでるよ」


「キーラ?」


「大丈夫、問題無い」


「ミーラは?」


「では、1本だけ」


「おじさん4本ください」




その後、宿での食事の時に、キーラがわざわざ僕の隣に座って

苦手な食材を僕の皿に押し付けていったのは言うまでもない。





翌朝

「おはようございます。サキさん、これ昨夜書いた分です」

 サキさんに、リストを渡す。


 サキさんが、今朝は叫ばずに西園寺さんに手渡す

「はい、拝見しますね」


 西園寺さんが一条さんに手渡す

「ありがとう長谷川さん、見せてもらいます」


 一条さんが早乙女さんに渡す

「長谷川っち、ありがとね」


 僕の手元にリストが帰ってきて

 今日は国境近くの街ギュスまで

 ハンヴィーでゆっくり行く予定。





 さて、草原にハンヴィーを止めて

 UAZ-3151を出して運転の練習をしている。


「おお、なかなか楽しいではないか」


 ミラセアが・・・・・


どうやら、以前から運転してみたかったらしい、

助手席には西園寺さんが座って運転方法のレクチャーをしている。




そして僕は、ストレージから”橋”を取り出していた。


【ストレージ】  ヴォン♬


『M104 Wolverine Heavy Assault Bridge』


なんだろう、たまに幹線道路で見かける

大きな鉄骨を運ぶトラックと大差無いようにみえる。


「一条さん、これが・・・・橋?」


「長谷川さん、橋なんですよ。良く見てください、

 上が分割された橋で、下が戦車なんです」


「ほんとうだ、キャタピラが付いてる」


「しかも、結構なスピードで走るらしいですよ

 燃費は最悪でしょうけど」


「燃費、最悪なんですか?」


「ええ、燃料1リットルで300mほど・・・」


「一条さん、その燃費、いくらなんでも悪すぎます」


「長谷川さん、自衛隊の戦車が、おそらくくらいで、

 戦車としては、かなりのなんだそうです。

 この、ただでさえな戦車の上に

 ここまで重量物を乗せたコレの燃費はもはや想像すらできません」


「燃費の悪いのが有名な戦車ですか? どこかで聞いたような?」


「紗希じゃないですか? 長谷川さん、アレを動かすなら、

 車体の後ろには立たないでくださいね」


「それで、わかりました。あの航空燃料を使ってる戦車ですね」






街道沿いの小さな町、ギュスに到着した。


「すみません、ヴェンシアから今到着しました。

 カリキュレーターのナオです。冒険者ランクA。

 明日にはエーライザル王国に向けて出発しますが、挨拶にきました」


「ドラゴンスレイヤーのナオさまですね、

 よーこそギュスへ、ギルドをあげて歓迎させて頂きます」





フェク峠の検問所は、ミラセアが王国からの書簡を見せる事で問題無く通過できた。

王国の方からも通達があったようだ。


ここからは、エルフの国 エーライザル王国





「「「「「ミラセアクアラ様、お帰りをお待ちしておりました」」」」」


ピクトの町で大勢の歓迎を受けている・・・これは素通りする訳には行かないようだ。


「すまぬが、王に呼ばれておる。

 明日の朝にはピクトを出なければならんのでな、

 歓待は、またの機会に受けさせてもらうとしよう」


ありがとう、ミラセア。




そして・・・・・・

王都に到着した僕達を待っていたのは人々は熱狂だった・・・・・・


「「「「「ミラセアクアラ様、お帰りをお待ちしておりました」」」」」


「「「「「念願であった、解呪の成就おめでとうございます」」」」」


「「「「「2体の竜をほふられたと聞きました」」」」」


「「「「「ドラゴン・スレイヤーの称号獲得、お見事でございます」」」」」

                :

                :

                :




僕達は、初めて・・・・ギルドに挨拶に行くのを断念した。


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