第21話 海洋国家の奴隷商

「さて、とりあえず宿を決めてから奴隷商を当たらないとね」


【月夜の入り江】なかなか、しゃれた名前の宿だな。


「部屋は空いてますか、1人と3人なんですが」


 おお、金額は王都なみか、まあいいか。


「今日はずいぶん時間を取られたな、明日は奴隷商を当たろうか」






そして翌日の朝、奴隷商を訪ねに出かける。


宿の人に聞いたところ、このセンタには2つの奴隷商があるらしい、

大手のポザンド商会と規模のやや小さいミメット商会だそうだ。


まずは大手からいこうか。


中央の通りにあるポザンド商会に向かう


ここか? 入口で掃除しているおじさんに。


「すいません、グザシマイス王国から来た、

 ミーラという14歳の女の子を探しているんですが、

 こちらにはいませんか?」


「聞いた覚えがないが、いつ頃ここに来たのかわかるかい?」

 と、首を捻って考えている


「どうやら、1年前にマーグナスを出たらしいので、

 ここに来たのは、おそらく10ヶ月程前だと思うのですか?」


「ちょっと、待ってくれよ確認してくる」

 とおじさんは奥に行ってしまった。


しばらくして、おじさんがやってきた。

「確認したが、うちには来てないな」


「ありがとうございました」

「いや、奴隷が入用なら声を掛けておくれ」





次は、表通りから少し入った所にあるミメット商会に行く。

入口を掃除している若い男の人に


「すみません、人を探しています。10ヶ月前にグザシマイス王国から来た、

 ミーラという14歳の女の子なんですが、ここに来ていませんか?」


「ミーラ? ちょっと待ってください、聞いてきます」

 と中に入っていった。


 しばらくすると、その人が戻って来た。

「店長から案内するように言われました、中にどうぞ」


 応接室に案内される。ソファに恰幅の良い派手なおばさんが座っている

「ミーラを探しているのはあんたらかい」


「はい、僕はグザシマイス王国から来た冒険者のナオといいます。

 その子はこのキーラの妹らしく行方を捜していました。

 10ヶ月前にこの国に入ったと教えてもらって会いに来たんです」


「ミーラなら、いまうちに居るが、本当にその子が姉なのかい?」


「そのはずですが?」



「わかった、お~い、ミーラをここに連れてきておくれ」

 と奥に声を掛けた。




しばらくすると、さっきの若い男の人が一人の少女を連れてきた。

初めて会った時のキーラよりも、まだ小さく見える、

ぼさぼさの赤い髪の少女だった。


「赤い髪じゃと」ミラセアが驚きの声を上げている。


「ミーラ・・・会いたかった」


キーラが近づくと、その子は何故か怯えて・・・震えている。


キーラは袋から銃を取り出して、なにも言わずにその子に向けて発砲した


 ダァーン


間一髪、ミラセアがキーラの腕を蹴り上げた事で、銃は天井に向けて放たれた。


 僕も慌ててキーラに駆け寄りキーラを羽交い絞めにする。


 おばさんの「この子を奥へ」の声でミーラは連れていかれた





 

 今、目の前に縄で縛られたキーラが居る。


「どういうことなんだキーラ、何故、探していた妹を殺そうとした?」


 キーラは何も言わない。


しかし、ミラセアが

「古い獣人の風習に、赤い髪と白い髪の話を聞いたことがある。

 だがそれは、不吉だから成人するまで別々の所で育てる

 といったもののはずなんじゃが」


「キーラ・・・そうなのかい?」


「違う、赤と白の双子、どちらか生きている限り獣人に災いが起きる。

 15までに、どちらかの命奪う、それ村の掟」


 なんだそれ。ちょっと頭にきたぞ。


「すまなかった。妹を探していると聞いていたが、

まさかこんな事とは思って無かった」


おばさんが


「ああ、その様だね。それでどうするつもりだい?」


初めて・・・キーラに命令した。


「キーラ、君の村はどこ?」


「・・・・・・」


「キーラ、いいなさい!」


「・・・カンカレラ」


「ミラセア、知ってる?」


「ああ、グザシマイスの東端にある獣人の村じゃな」


おばさんに向き直り、

「すみませんが・・・

 ミーラをこちらで引き取るのに、そのお金と経費分を先に払うので

 ミーラを半年程預かって貰えませんか?」


「まあいいが、何をするつもりだい?」


「村に行って話を付けてきます」


「正気かい?」


「ええ、天井の修理代も含めて支払うので言ってください」


「本気みたいだね、わかった預かっとくよ。

 私はこのミメット商会の主でダーナだ、あんたはナオだったか?」


「ダーナさんですね。

 グザシマイスから来た冒険者のナオです。冒険者ランクB

 信用の代わりになるか分かりませんが、ドラゴンスレイヤーの称号を貰ってます」


「ダーナさん、すみません」

 とドアの外から声がかかる


「なんだい? 今、来客中なのはわかってるだろ?」


「それが、ギルドマスターのバイルさんが客人に急用だそうで」


 ああ、ボマラ島に行った冒険者、もう帰って来たのか。


 縛られたキーラを見て。

 あれ? この状態で仕事を受けるのは無理じゃないか?


「ダーナさん、すまないが急用なので邪魔をさせてもらうよ」

 バイルさんが入って来た。


 床に縛られて転がっているキーラを見て

「すまんな、こっちも急用だったんだな」


「いいえ、急いでグザシマイスに帰る用事が出来たので、

 これから帰国の準備と手配をすると決めた所なんです。

 その様子だと、ボマラ島から冒険者が帰って来たのかな?」


「ああ、非常にやっかいな情報を持って帰って来たよ」


「わかりました、話を聞きましょう。ギルドに行けばいいですか?」


「ああ実際に現地を見た人間でないとわからないだろうから、

 向こうに捜索に行った冒険者を呼んである」






 ギルド応接室


偵察してきた冒険者の話を聞く。


「赤翼竜ですか?」


「はい、翼を広げた長さが200m程の赤い竜でした。

 その竜が上空を悠々と飛んでおりました。

 たまに、口から火の玉を吐いて村を焼いていました」


「長谷川さん、ワイバーンの時にも少し思いましたが。

 これはもう物理とか無視してますよね」


「確かに、実物のワイバーンって結構重かったよね、

 あれはどう考えても飛べる代物じゃなかったけど

 今度は200mが悠々とですか。反重力ですかね?」


「200mだと、今度こそ東京ドームと同じ大きさですね。

 まあ甲殻竜も、あの脚で支えられるような体重では

 無かったでしょうから、いまさらなんですが」


「全幅がほぼ同じなだけでしょう。

 東京ドームと比べるは違和感あるのでやめてください。

 でもサキさん、今度は火を吐くんですよ。

 何がどう進化したらこんな事が出来るんですか?」


「毒袋に可燃性の液体でも詰まっているんでしょうか?」


「火の玉を飛ばすとなると、液体を飛ばして途中で点火するのかな?

 この大きさだと、かなり上空を飛んでますよね?」


「はい、島に活火山があるのですが。火山の高さの3倍程の所を旋回していました」


「住民の方の避難は終わりましたか?」


「5人、行方不明者が出ていますが、それ以外は済みました」


「それじゃあ長谷川さん、まずは、どうやって地面に落とすかですね」


「翼に大穴を開けても浮いてたらどうします」


「あながち無いとも言えないですね。

 でも、それだと翼を持ってる必要が無くなりますから、

 翼がある以上、飛ぶのに使っていると考えましょうか」


「サキさん、相手はかなりの高高度ですが

 リストの中に有効な攻撃手段はあるんですか?」


「はい、いくつかありますから、それは大丈夫ですよ」


「では、叩き落した前提で、またC4と迫撃砲ですか?」


「これだけ上空から落ちると、落下位置なんて確定出来ませんから

 C4は無理ですね」


「となると、迫撃砲とTOWですか? それで足りますか?」


「甲殻竜ほど固くない事を祈りましょう」


「もし、火口の中に落ちたらどうしましうか?」


「流石に溶岩の中に落ちて無事な生き物はいませんよ、

 長谷川さん、怪獣映画じゃ無いんだから」


「そうですよね、すみません」


「でも、火口の中でしたら周囲の被害を気にせず思う存分撃ち込めますね」


「それで火山が噴火したりしませんか?」


「対生物とか対車両、対建物なら効果は高いですが、迫撃砲で

 噴火を誘発するのは無理ですよ」


「そうですか、安心しました。島に行く前に必要な物、あと何でした?」


「位置情報を共有するのに複数枚の島の地図が必要ですね」


「それ以外は、島に行ってみないとわかりませんね?」


「そうですね、島の地形も確認しないといけません」


「ギルドマスター、島に行く船の準備をお願い出来ますか?」


「それは、大丈夫だが。うちの冒険者を何人か連れていくかい?」


「島の地形に詳しい人がいれば案内をお願いしたいのですが?」


「物資の輸送に使う船は何隻だ、どれくらいの量を運べばいいんだ?

 なんせ、国の一大事だからな、なんなら国中の船を集められるぞ」


「いえ、僕たちを運ぶ船だけで十分ですよ」






【キーラ】


 「キーラ、縄を解いても大丈夫だね?」

  ナオがキーラの縄を解く、キーラは何も言わない。



 「ところでキーラ、君、何でわざわざ近づいて撃ったの?

  あの位置から撃てたでしょう?」

  キーラは何も言わない



  呪姫さまだ

 「のう、キーラ、さっき銃を袋から取り出す時も、

  わらわの位置を気にしている様に見えたのは気のせいかな?」

  キーラは何も言わない



  サキが【ぐろっぐ】を手に持っている。

 「このグロッグ、ホールドオープンしてるね。

  弾丸を1発だけ入れてあったんだ・・・どうして?」

  キーラは何も言わない



 「もしかして、奴隷から解放を嫌がったのも、妹さんが原因?」

  キーラは何も言わない



 「とりあえず、妹さんの件は僕が預かったから、

  村で話を付けるまで、妹さんに攻撃禁止」

  キーラは何も言わない


 「ところで、キーラ、赤翼竜の島行く?」


 「行く」


 「了解、準備して」

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