第22話 赤翼竜の島


 ボマラ島


向こうにボマラ島が見える、火山からは噴煙が上がっている。


「ああいう生き物は硫黄とかガスに敏感だと思ったのに

 なんであんな環境に行ったんだろうね」


「長谷川さん、そういえば地熱を使って卵を温める生き物が

 地球にも居たような気がします」


そうしている内に、とうとう赤翼竜が見えてきた。


「うわ~ホントに飛んでるね~

 見てください、羽ばたいてますよ」


「赤くて大きいなあ~」


「あれだけ大きいと、普通の食事では持つわけがありませんね、

 鯨でも取ってるんでしょうか?」


「意外とクラーケンの天敵だったりしてね」


 確かに、あの大きさだと人間を襲っても大して意味は無さそうに見える、

 やっぱり火山が目的か?





「それで、サキさん、アレどうやって落とすの? 

 ストレージに対空砲とかあった?」


「あの大きさだと、対空砲があってもキツイかもしれません、

 船を降りたらリストのコレだして下さい」


「コレ・・ね、わかった・・・いくついるの?」


「1発で落ちたらいいんですが。とりあえず3台お願いします。

 重いので操作もナオさんでお願いします」


「了解、指示よろしくね」


 船着き場に降りて、指示された物を出してみる。

 うん、筒の付いた測量か何かの計測機器にしか見えない


「サキさん。ごめん、さすがに説明をお願いする。これは何?」


「いわゆる地対空ミサイルという奴ですね」


「なんかかつげそうな位小さいんですけど?」


「はい、コレをかついでもらいます」


「コレでアレを撃つの?」


「撃っちゃってください、さすがに、コレを撃った経験のある人は

 ほとんどいません。すごくうらやましいです」


「頭が痛くなってきた」


「頭が痛くなるついでにもう一つ良いですか?」


「どうせだから、まとめて来てください」


「それ、日本製です。自衛隊の装備ですよ」


「・・・リストに日本語は有りませんでしたよ?」


「はい、まさかの略称表記MANPADSSAM-2でしたから」


「なんで、わざわざ自衛隊装備これを選んだんですか? 

  同じような物もあったんじゃありませんか?」


「確かに、これを撃つところを見てみたいというのも内心あります。

 ただ、赤翼竜アレに普通の赤外線探知とか、

 ちゃんと反応するのか自信がありませんから。

 コレは日本の某大手家電メーカーと共同開発なので

 なんと目標を画像で認識してくれるんです」

 

「安心安全の日本製ですか?」


「しかし、これがストレージに入っているとすると、

 入れた人は一体何を考えていたんでしょうね」


「これで赤翼竜アレを落とした後はどうします?」


「すみません、芸が無いですが、迫撃砲を叩き込みます。」


「では後は120mm迫撃砲を2台と砲弾ですね」


「はい、後は、こちらの位置がばれて近づかれた時の為に何か準備しましょう」


「今回はどこに落ちるか予想できませんね?」


「はい、なのでキーラちゃんには、その落下場所を確認してもらって、

 そこが見える位置に移動してもらいます」


「サキ、私、何する?」


「キーラちゃん、前にやったFOフォワード・オブザーバー覚えてる?」


「双眼鏡のヤツだ」


「はい、アレです。なのでキーラちゃんには目標の落下位置を

 無線で教えてもらいます」


「ナオ、双眼鏡と無線ちょうだい」


 そして、綿密な打ち合わせをして明日の攻撃予定が決まった。





「長谷川さん、さっきの地対空ミサイル、すみませんが、もう1台出してください」


「どうしました?」


「やっぱり、私も撃ってみたいです」






 さて、晴れた空を悠々と赤い翼竜が飛んでいる。

「この大空は俺の物だ」とか一度言ってみたいものだ。

 さて、地上こっちに来てもらおうか。


このミサイル、正式には91式携帯地対空誘導弾と言うらしい、

スイッチを入れてビデオカメラの様なファインダーを覗き込む。


中から壊れたラジオみたいな音がするけど大丈夫かな?


ファインダーの中に大きな赤い影が映り込んだ。


ボタンを押し込むと


シュコッ とミサイルが飛び出し そのまま白煙を吹きながら


恐ろしいスピードでミサイルが飛んで行って飛竜の胴体に当たって爆発した。


「ぎゃ~~~」翼竜が声を上げる


「こっちも行きます」


サキさんも肩に担いだミサイルのボタンを押し込む


シュコッ ボシャー っと白煙が伸びていく


今度は左の翼に当たってバランスを崩した


「まだいけますね、どんどんいっちゃってください」


 僕は次のミサイルを肩に担いでファインダーを覗く、ボタンを押す


 シュコッ ボシャー


 また左か、取り出したミサイルは次が最後だけど、まだ追加を出すのかな


 肩に担いでファインダーを覗く、ボタンを押す

 今度は首に当たった。


うわぁ~~~~~あ 


あの200mの巨体が上空から落ちてくる悪夢のような光景が見えた。


 地面に立っていられないような振動が伝わってくる。


「キーラちゃん、落ちたよ場所報告ヨロ」


『了解』とキーラちゃんの声がイヤホンから聞こえる。





5分程経ったろうか

『見つけた、場所6・12 まだ動いている』


「了解、キーラちゃんありがと」


サキさんの迫撃砲操作を手伝う、準備オッケー

僕は砲弾を抱えた。


「キーラちゃん、初射いくよ、観測ヨロ」

『了解』


砲弾を滑り込ませる。シュポ 

砲弾が空に飛んでいく


『着弾 前に120 左に180』


「了解」


サキさんが調整している間にミラセアが次の砲弾を持って待っている。


「キーラちゃん、次いくよ」

『了解』


ミラセアが砲弾を滑り込ませる。シュポ

砲弾が空へ

『着弾 前に20 右に30』


僕が次の砲弾を抱える

「よし、キーラちゃん、次」


僕は砲弾を滑り込ませる。シュポ 

『命中、右の翼』


「ぎゃ~~~」


「オッケー キーラちゃん、こっちの迫撃砲はミラセアに任せた。

 次の照準に移る、次は、ずれるから気をつけて」


『了解』


こうして、2台の迫撃砲からの攻撃を受け続けて砲弾の数が50を超えた頃・・・


『こちら、キーラ、赤いの死んだみたい・・・』

とイヤホンから声が聞こえた。


「みんな、お疲れ様、6・12に行って確認しようか。

 あれ? サキさんどうしたの?」


なんだろう、酷くがっかりしているような?


「せっかく・・・TWOと重機関銃も準備してたのに使えなかった」





みんなで地図の6・12に到着した。

自然と赤翼竜の頭付近に集まる


「サキさん、これだけ大きいと死んだかどうか、どうやって確認したらいいかな?」


「わからないけど、とりあえず口に手榴弾でも投げ込んでみたら?」


「わかった、やってみる」


手榴弾を投げ込んだが反応は無い、死んでいる様だ。


「よし、死亡確認、後始末はまかせて帰ろうか」





島の船着き場に到着した。


案内の冒険者さんが青い顔をしている

「すさまじい振動と音がしたがどうなったんだ?」


「ああ、赤翼竜は倒したよ死亡も確認した。ここだ」と地図を指さした。


「すまないが、俺達も確認させてもらう」


「ああ、僕たちは、ここで休憩しているよ」

 冒険者は走っていってしまった。





「じゃあ、ここで少し休憩しようか」


「そうじゃな」


「キーラ、のど乾いた」


「久々に疲れたね」


「そういえば長谷川さん」


「なに?」


「そろそろパーティネーム決めませんか?」


「でも、なかなか良いのが思いつかなくてね」


「決めないと、が定着してしまいますよ」


「う~ん。いっそこの世界に無い物がいいかな?」


「バレット、ベレッタ、S&W、グロック・・・」

「いや、サキさん、銃の名前はいいから」


「ビーフシチュー、グリルドチキン、ミートローフ」

「いや、キーラ、対抗しなくていいから

 それよりも、それMRE保存食料のメニューだよね、いつ食べたの?」


「そういえば、ナオ、算術の神様と呼ばれておったな、

 その辺から名前を取るかな?」


「でもミラセア、僕のやっているのは数学じゃなくて算数だしね、

 ・・・その様子だと、ミラセアも共犯か

 僕だといいとこ電卓の神様かな」


「じゃあ電卓、calculator カリキュレーターでいいんじゃない?」


「カリキュレーター、音だけ聞くと何か始末しそうな名前だね」


そうして僕たちのパーティーネームはカリキュレーターに決まった。




 【とある冒険者】


目の前に赤翼竜の死体がある。


頭だけでギルド会館よりデカく見える。


これだけ大きいのに、いたるところがずたずたにされている。


というか、ここは森だったはずが森が無くなっている。


さて、口で説明しても分かって貰えそうにないことはわかったな。


しかし・・・この死体どうやって始末するのかね。

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