第8話 ちょっと待て

【マカ】


・・・マカ王よ、契約とはなんだ?」




まあ、今までよく口をはさまずにいてくれたものだと思う。


途中、何度か(特にナオが王妃にプロポーズをしたあたりで)

手に持ったカップがミシミシと音を立ててはいたが・・・


「ミラセアクアラ殿?」


「いや、なにぶん1000年前の事ゆえ、わらわの中で朧気おぼろげになっている部分もある、しかし、あの日の記憶だけはかなり鮮明に残っているのだ。

あの時、わらわが眼を覚ました時にはもう、貴方は消えてしまっていたはずじゃ。

何しろ目を覚ました後でに事の顛末てんまつを、 ”貴方あなたの最後の言葉” など言う虚言たわごとを聞かされたのだから。

だから、今聞いたマカ王との契約の事・・・わらわにはまったく覚えがないのだ。」


「ああ、そうだろうな。ただ、あの時の私は確かに貴女あなたと言葉を交わし、そして契約も成立している」


「呪いの影響で、わらわの意識が朦朧もうろうとしていたのだろうか? それにしてはずいぶんハッキリと返答していたようだが」


「いや、あなたの認識も間違ってない。結論から言うと、これは全部だ」


マカ。 なんで・・・僕のせいなの?」


「正確にはナオの持っているギフトのせいだ。 貴女にあの時の記憶が無いのも、私が今日まで表に出る事が出来なかったのも全部、いつの間にか生えていたのせいだったんだ。」



って何? それにミラセアの記憶を消す? マカを閉じ込める? 僕にえてきたギフトってどれだけ悪辣あくらつなの?」


「ナオ、それを話しだすと長くなる、だから説明は後だ。」


「そんな事を言われると、かえって気になるんだけど?」



。それよりも大事だいじなことが。マカ王さま、ナオ様のストレージの中に次元神メザキユが入ってるって本当なんですか?」


と・・・ミーラが顔を強ばらせて質問してくるが、それを押しのけるように割り込んで来たのは、興奮状態の選ばれし者たちミリオタ

彼女達にブレーキは無かった。


マカさん、次元神メザキユの自慢話って、つまりストレージの中身を次元神メザキユ自身が解説してくれたってことよね? その辺りをもっと詳しく」


紗希さき、そんな漠然ばくぜんとした質問じゃマカ王も答えられないだろ。攻撃ヘリは? アパッチAH-64は無いんですか? 航空機も絶対ありますよね? あるなら次元神メザキユって滑走路も無しにどうやって・・・でも垂直離着陸機VTOLならOKか?」


真輝まき、さすがに航空機の運用は無理じゃない? マカ王さま、船は無いのですか? 航空機に比べたらハードルは低いですよね? 小型揚陸艇こがたようりくていとかミサイル艇とかありませんでした?」


綾女あやめちゃんこそ、もっと具体的に説明しないと王様もわかんないと思うよ。もしかして潜水艦とかイージス艦とかも入ってるのかな?」


「あんたたち、自分で使えないモノを聞いてどうするの? それよりも戦車は?

マカさんお願い。とりあえず、あのエイブラムスをもう1台出してほしいな」


「紗希、気持ちはわかるが戦車が必要な状況なんて起きるのか?

それよりせっかくマルスM270があるんだ。きっとATACMSエイタクムスもどこかにあるんじゃないか?」


真輝まきは甲殻竜を見て無いからそんなコトを言えるのよ。全長300mの亀が真っ直ぐに向かって来たんだよ、あの時はC-4とTOWミサイルを使ったけど、あれはどう考えても戦車の出番だった。」


「紗希ちゃん、そんな話は戦車を見つけたからにしようよ。それよりも、さっきの話だとストレージの中身って、これまで通りバンバン使っちゃって問題無いって事だよね?」


「そうなの、椿。これからは撃ち放題だよ」


「サキ、今までもそうだったような?」


「そんなことないよ。ストレージの中身を全部使い切っても良いって確かに聞いたよね?

私の妄想じゃないよね?」





おお、さすがは選ばれし者たちミリオタ


「もちろんだとも、これまで通りバンバン使ってくれ。君達が暴走するたびに、ストレージから漏れてくる次元神メザキユ怨嗟えんさの声がそれはもう心地よくてね。今度は、この声をさかな祝杯しゅくはいげたい気分だ。」


向こうの世界で覚えた親指を立てるポーズ、サムズアップで応える。


「マカさんったら太っ腹! みんな、これで持ち主から正式なお墨付きが出たわけだし、とことん楽しむわよ」


「「「オー!!!」」」


私も上機嫌で軽口で返していたのだが、そんな中

今度は私の、いやナオの口が動いた。


「そんなことよりマカ・・・黙っててくれるはずじゃ無かったの? なんで全部バラシちゃったの?」


「ん? なんの話だ? もしかしてナオの失恋の話か? 過去の事実を説明するのにココの部分は避けられないだろ?」


「口の上手いマカなら色々と誤魔化せたよね?」


「誤魔化してどうする? お前、記憶が無かったせいか色々と変な可能性コトばかり考えて、とても見れたもんじゃなかったぞ。 ここは中途半端に情報を小出しにしてまわりに心配をかけるより、全部バラして呪いが復活する可能性が無い事を説明したほうが良いだろう?」


「だからって、僕が王妃さまに告白した話は要らなかったよね?」


「それだと、私が言い訳・・・いや、私と姉君の見合いを勧められて

承諾してしまった話が出来ないじゃないか。」


「キセラムフリス・・・あやつは・・・」

ミラセアクアラ殿は何かを思い出したのか、苦笑いを浮かべている。


「まあ、それなのに。見合い話を進めていた相手が突然自分の国を滅ぼしたあげく、

それを討伐した姉がその見合い相手に呪われたんだ。私の意図するところではなかったにしろ、王妃には本当に気の毒な事をしてしまった」


「マカ・・・・・」




心の中でナオに話しかける

《ところでナオ・・・》


〖どうしたの、マカ・・・何か内緒の話?〗


《私はこのまま・・・次の話、君の世界で目覚めてからの話を続けて良いのかな?

さすがに1000年も待たせたんだ、これ以上彼女を待たせるのは無粋だと思うが?》


〖でも・・・〗


《でも、なんだ? だいたい想像はつくが、とりあえず言ってみろ》


ストレージの中には大量の破壊兵器とオマケに次元神メザキユがいるんだよね?

こんな僕が告白というか、プロポーズなんて良いのかな?〗


《祖国を滅ぼした凶王と呼ばれるのは心外だが、私が保障しよう。告白してこい、プロポーズしても良いぞ》


〖マカ・・・〗






《それに、君がプロポーズをしても、相手がそれを受け入れてくれるかどうかはまた別の話だ》


〖えっ?〗


《安心しろ。もし、振られた時は責任をもって ”やけ酒” に付き合ってやるから。

心置きなく玉砕してこい》


〖・・・おい〗


《特別にストレージから秘蔵の酒を出してやる。こいつは美味うまいぞ、今から楽しみにしておくといい》


〖マカ・・・プロポーズの前に、振られる前提で話を進めるのはヤメテヨ〗


《ほ~ら、あまり黙っているから、みんなから注目されてるぞ》






「ナオ、どうしたのじゃ? 顔色が悪いが。 マカ王に何か言われたのか?」


不安そうに問いかけるミラセアを見て・・・僕は覚悟を決めた。







※〖〗ナオの声(マカだけに聞こえる)

  《》マカの声(ナオだけに聞こえる)です



アパッチAH-64アメリカ製の代表的な攻撃ヘリコプターです。

ATACMSエイタクムス アメリカ製の地対地ミサイル

マルスM270(第2部 第19話既出)やハイマースM142といった自走多連装ロケット砲を使って発射できるミサイルです。

ロケット6発入りのコンテナとミサイル1発入りのコンテナが同じ形状になっていて、コンテナごとロケット砲に装填されるため、コンテナの外観からはロケットなのかミサイルなのか判別できなくなっています。

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