第3部 第7話 精霊の愛し・・・子?
〖ナオ〗
僕の熱が下がって、脱力感と酷い頭痛から解放され自分で起き上がれる状態になるまで・・・それからまる3日が必要だった。
マカから伝えられた『黒いヌメヌメパタパタ』と『赤いニョロニョロ』の情報、この事をなるべく早くアイロガ王国に伝えなければと、急いで出発した僕達だったが・・・
僕は・・・まだ胃に残る気持ち悪さも
断言しよう、この経験は、間違いなくこの世界で受けた
この3日間、食事などはミーラが「私の出番ですね」と、かいがいしく世話を焼いてくれたが・・・
ようやく自分で起き上がれるようになってからも身体の不調は残り、その後の2日間はハンヴィーの助手席で揺れに耐え続けた。
夕闇の向こうに、サウラタの灯りが見えた時不覚にも涙が出そうになった。
黄昏時のサウラタの街に入って、そのまま宿に直行したい気持ちを抑え込んで、念のためギルドに顔を出した僕達だったが、残念ながら既に状況は悪い方に動いていた。
ミラセアの顔を見たギルド職員が開口一番、
「呪姫様、ナオ様、お帰りをお待ちしておりました。アイロガ王国のオーバン王より2通、書状が届いております。どちらの書状も御一行がサウラタに到着もしくは付近で見かけられたら最優先でお渡しする様にという指示が付いております。第1報は2週間前、第2報は5日前にこちらのギルドに届きました」
ああ、イヤな予感しかしない・・・
「見せてください」
第1報は・・・
『深夜、あの黒い生き物が群れとなって襲来、サーサンタの街周辺のいくつかの村を襲い人と家畜を連れ去ったらしい。とりあえず軍を送り私も向かう』
やっぱり出たか・・・ヌメヌメパタパタ
そして第2報は・・・
『私は現在、サーサンタの街に陣を敷いている。この付近の村の住人はすべてサーサンタに退避させた。ここ何日かはこのサーサンタの街にも襲撃してくるようになってきている。申し訳ないがこの書状を見たら、なるべく早くサーサンタに来て、あの黒い生き物に対する対策会議に参加して欲しい』
どっちにしろ、赤いニョロニョロの事をオーバン王に伝えないといけないか・・・
「わかった、なるべく早くだね。みんな・・・どうする?」
「どうするって・・・長谷川っち泣きそうな顔で何を言ってるの?」
だって、今夜はちゃんとしたベッドで眠れるかと思って・・・
「ナオさま、自分の体調わかってますか? 今夜はゆっくりベッドで寝てください」
「そうだね、みんな特に今回は野営ばかりの長旅で疲れているはずよ、出発は明日で良いと思う」
そしてここは前回も泊まった宿、水辺の乙女。
ここで夕食を食べた後、明日の出発について話し合っていた時、
ふいに僕の口が動いた・・・
「すまない。少し街に出たいのだが・・・良いだろうか?」
「長谷川さん・・・いや、マカさん?」
まさか・・・
「マカ・・・お酒はダメだからね」
「ち・・・違うぞ・・・酒じゃない。せっかくサウラタに来たのだから、ちょっと ザーに挨拶に行こうかと思ってな」
「水の精霊殿か? それならば、わらわ達も一緒に行って構わぬのかな?」
何気ないミラセアの提案だったが、マカの返答は予想外のものだった。
「悪いが・・・キーラとミーラは連れて行けない。あと念を押すが、君達が行っても何も見えなし聞こえないぞ。それでも良ければ来るのは構わない」
思わぬ所に自分たちの名前が出てきてキーラとミーラはキョトンとしている。
「マカ王よ。どうして、キーラとミーラは連れて行けないのか?」
「そんな氷の精霊と火の精霊の
「マカ王さま。私もお姉ちゃんもこの髪色のせいで精霊の子なんて呼ばれていますが、実際に精霊さまとはお話しをしたことはありません。こんな髪の色だけで精霊さまに嫌われてしまうんですか?」
「キーラの髪色、氷の精霊については
「そんな・・・」
結局、
サウラタの中央の広場、あいかわらず青い大きな岩の裂け目から滾々と湧き出す水が
小さな泉を作っている。
小さな声で話しかけた。
「やあ、ザー 久しぶり。今度はちゃんと来たよ」
マカ・・・意思疎通は出来ないって言ってたけど、ちゃんと話し掛けるんだな。
「おいおい・・・まだ、怒っているのか? あの時はまだ、私は表に出れなかったんだからしょうがないだろ?」
・・・あれっ? ちょっとおかしくないか?
「だから勘弁してくれ。それと今夜はゆっくり眠りたいんだ。
お願いだから前みたいに悪夢を見せるのはやめてくれよ」
「マカ・・・ちょっと良い?」
「どうした、ナオ?」
「もしかして、マカって・・・精霊の愛し子・・・なの?」
「おい、ナオ何を言っているんだ・・・違うぞ、もし私が ”愛し子” なら、わざわざ妻に聞く必要はないだろ?」
「それはそうだけど、今してたのってマカと精霊の会話じゃないの?」
「そんなのじゃないよ。ほら、一時期ナオのせいで、人の深層意識にしか接続出来なかっただろ?」
「僕のギフトのせいだよね、絶対に僕のせいじゃないよ」
「ナオが初めてサウラタに来た時、みんなが
「そうだった? あんまり憶えて無いな・・・何か説明されたような気がするけど」
「ミラセアクアラ殿の説明を熱心に聞いていたのは
「そうなんだ」
「それなのに、すぐにその場を離れたものだから機嫌が悪くなって、
そうだな、言葉にすると『ば~か、今夜は悪い夢でも見てるがいい』って感じかな?」
「なんかごめん・・・」
「その後、オーランドに向かう時は、せっかくサウラタに泊まったのに
「それで、最初の質問なんだけど・・・マカって、精霊の愛し子なの?」
「だから、違うって。単に、ナオのギフトのせいでザーと意思疎通できるだけ・・・あれっ?」
「僕自身はそのギフト使った事が無いわけだけど。ほら、 精霊の愛し子=深層意識に接触出来るギフトを持つ人間 だとしたら?」
「そうか・・・私は・・・精霊の愛し子・・・になるのか?」
「ザー・・・話は終わったかって? ああ、置いてきぼりにして悪かったな」
「なあ、ザー。昔、シーナローンとおしゃべりしていた時と、今みたいに私と話す時とでは、何か違いはあるのかな?」
「わかった、わかった。次も必ず来るから、それじゃあ」
「ねえ、マカ。何か違いについて聞いてたけど、ザ―の答えはどうだったの?」
「『違い? ローンはローン、マカはマカでしょ』だ・・・そうだ」
「そうか、『ローンはローン、マカはマカ』・・・か? あれっ? 悪夢?」
「そういえば、
「ごめんマカ、失礼な事を聞くけど ”ローン” って?」
「私の妻、シーナローンをザーが呼ぶときの呼び方だ。
まあ、私もつられてそう呼んでしまう事があったな」
「
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