第3部 第6話 昏倒
〖ナオ〗
「レオパルトⅡ・・・私がずっと探してた。ドイツ製、NATOの主力戦車よ」
サキさんの大声のせいで、夕食を終えてそれぞれ自由に過ごしていたみんな・・・
僕は集まって来たみんなに、実はストレージの中に赤いモザイクで隠されて見る事が出来ない怪しい部分があった事。その赤いモザイクをマカと協力して解読する事に成功した事。そして、その解読内容をサキさんに見せたところ、先ほどのような声をあげたことを順番に説明した。
「そうかリストか・・・ならば、サキが叫び声をあげるのはいつもの事じゃな」
とミラセアの様に納得する者もいたが、ミリオタ達の意見は様々で・・・
「いや、それだけ思わせぶりに赤いモザイクを掛けておいて、中身がただの
「たぶん
「もっと単純な理由じゃないの? 他の大事なモノを保管するつもりが、間違えて隣に書いてある戦車にモザイクかけちゃったとか。
でも紗希ちゃん、私達って今朝、細菌兵器の実物を見たところなんだよ・・・このタイミングで赤いモザイクの中身を考え無しに取り出そうというのは、さすがに反対」
「でも、レオパルトⅡなんだよ・・・・」
サキさんだけは納得していないみたいだけど、3人共取り出すのは反対してくれたのでちょっと安心した。
「ところで、長谷川っち」
「なんでしょう・・・
「いや、このレオパルトⅡを取り出さないのはまあ当然として、これで赤いモザイクは長谷川っちと王さまの協力があれば解読出来る事がハッキリしたわけだよね?」
「まあ、これで見えなかった文字を見えるようには出来たのかな?」
「それならさ、せっかくだから他の赤いモザイクもいくつか解読してみない?」
「えっ?」
「ほら、今回はレオパルトⅡなんてわかりやすい文字が出てきたせいで逆に混乱しちゃったけど、その赤いモザイクって他にもあるんでしょ? やっぱり2~3個解読して内容を比較しないと、
「確かにそうだね。マカ、せっかくだからやってみようか?」
「そうだな・・・やってみるか」
こうして、次はみんなに見られながら赤いモザイクの解読をすることになった。
みんなの視線を感じながら、椅子に座って目を閉じる。
〖じゃあ、マカ。さっきと同じでいい? 今回も3回連続で良いよね?〗
《ああ、次の赤いモザイクの部分は・・・ココか?》
〖そう、マカ・・・準備いい?〗
《大丈夫だ・・・》
【カース・ミューテーション】
【トランスレーション(言語翻訳)】
【カース・ミューテーション】
【トランスレーション(言語翻訳)】
・・・あれ?
【カース・ミューテーション】
【トランスレーション(言語翻訳)】
今、ギフトを使ってみて・・・なんとなくわかった・・・これ・・・2回目と3回目のギフトは発動出来てない・・・
「ごめん、みんな・・・ダメだ、理由はわからないけどなにか失敗したみたい」
僕は、あからさまに落胆しているサキさんを少し気の毒に思いながら、椅子から立ち上がろうとして。
「あ・・・れ?」
気が付けばそのまま前のめりに草の上に倒れ込んでいた。
あわてて立ち上がろうとするが、どうしてか手足に力が入らない。
ズキッ
今度は心臓の鼓動に合わせるように頭の両側がズキズキと痛みだし・・・
身体のそこら中から変な汗が出てくる感覚
「ナオ、どうした?」
「ゴメン、ミラセア。頭が・・・痛い・・・それと動けない」
草の上にうつ伏せに倒れたままで応える僕を、ミラセアが抱き起してくれ
ミーラが近づいて来て、僕の額に手を当てる
「ナオさま・・・かなり熱いです」
「ゴメン・・・マカと一緒に3回連続でギフトを使おうとしたんだけど、2回目以降は発動しなかったみたい。それと、頭がズキズキ痛むのと胃の辺りがものすごく気持ち悪い」
「ナオ、この感じ・・・皆を引っ張り込んだ時と一緒かもしれない。クソ野郎の作ったモノに干渉した反動か症状はもっとキツイようだが・・・このギフトの連続使用、これはあまり多用出来ないみたいだな」
「頭痛い、気持ち悪い、フラフラする。船の上でこんな症状になって、僕・・・よく生きてたね」
「あの時は、中々船室から出てこようとしなかったが、たまに見かけた時は今にも死にそうな顔をしておったな」
「長谷川さん、気分の悪い所申し訳ないんだけど。ギフトが発動しないって・・・それってストレージは使えるのかな?」
その
「どうだろ・・・」
まずい、もしストレージが使えないなら、まず明日の朝食が出せない、今出している2台のハンヴィー以外の車両も出せない。それにここに出した椅子とテーブルを積む車両がない・・・
【ストレージ】 ヴォン♬
無事にギフトは発動して目の前に黒い靄が現れた・・・
「・・・いちおう、使えるみたい」
「良かった。それじゃあ、救急車のハンヴィー出してくれるかな。長谷川さんには
後部のベッドで寝たままで移動してもらうことになるから」
ストレージから救急車のハンヴィーを取り出すと、キーラが後部ハッチを開けて
中から病人搬送用の
「ナオ・・・コレ乗る」
やけに嬉しそうだ。前はキーラ、後ろはミーラが担当して僕を運ぶつもりらしい・・・
いや、ハンヴィーの救急車も僕が取り出したからすぐ目の前にあるんだけど。
「ミーラ、僕・・・歩け」
「ナオ・・・コレ乗る」
ごく短い距離の
ベッドに横になって目を閉じていたが、ふと人の気配に目を開けた
「どうしたの・・・
「長谷川っち・・・大丈夫?」
「まだ頭が痛いけど、かなり楽になったよ・・・どうしたの?」
「ごめんね、私が赤いモザイクの解析をやろうって言ったばっかりに、こんな事になって」
「それは気にしないで良いよ。今回は大丈夫でも、いつか残りの赤いモザイクを解析しようとして、絶対に同じ事になってたはずだから」
「でも良かった、長谷川っちが倒れた時はてっきり
「えっ?」
「ほら、長谷川っちのNBC防護服がちゃんと着れてなくて、あの金属ケースの密閉が不完全だった場合、長谷川っちが
「
「長谷川っち、目が赤くなってたから・・・もしかして
「僕の目が赤いのは、
心配で夜眠れなかったせいだと思うよ」
こうして僕は、サウラタに到着するまでの数日間、ハンヴィーのベッドの上で揺れに耐えながら過ごす事になってしまった。
〖〗ナオの声
《》マカの声
※作中では
感染後1週間ほどの潜伏期間の後に発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛・関節痛などの症状
が出るそうですが・・・目が赤くなるとは書かれていませんでした。
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