第14話 親父さんの店

そして翌朝、惜しまれながらも王城を出た僕たちは城下町を歩いている。


サキさんの来ている白いドレスを見て、まずは近くの服屋に入った。


「サキさん、とりあえずの着替えと私服、必要なのを何着か買っといて、

 ミラセアこれで支払いをお願い

 ミラセアとキーラも良さそうなのがあったら買っていいよ」


ミラセアに金貨の入った革袋を渡す。


「ナオさん、ありがとうございます」「ナオありがと」「任された」


さて予想は1時間かな?


3時間でした、お昼前だからキーラがお腹を空かせたのかな。


サキさんは、細身のパンツ姿で髪を後ろでまとめていた。


「サキさん、荷物は僕が持つよ。さて、宿を決める前にお昼にしようか?」


「ナオ、あそこの店いい匂い」キーラの指さす先は行列が出来ている


キーラ、さすがだな。

あの店は、親父さんが継いだ店だった。


「並ぶけど良いかな、あと、あの店お世話になった人の店だから

 挨拶に行ってもいい?」


「ナオ、確か王都は初めてじゃろ?」


「ミラセア、僕はバールキナの街の料理屋であの店の店主に拾ってもらったんだ。

 ただ、あそこは店主の師匠の店でね師匠が亡くなって継ぐ事になったらしい」


「そうか、恩人なんじゃな」


「ああ、王都に来たら挨拶するって約束したからね」


 列に並ぶ


 ここが親父さんの店か、いい雰囲気だな。


 僕たちの番が来て席に案内される。


「みんな、好きな物を頼んでね、サキさんメニューは何故か読めるけど

 分からない事があったら聞いてね」


 それぞれがメニューを選んで注文する。


 ああ間違いなく、おやじさんの味だ変わらないな、涙が出てきた。


 お金を払うときに

 「すみません、ナオと言います。以前バールキナでここのご主人に

  お世話になった者なのですが、少し挨拶させてもらってもいいですか?」

  

  しばらくして「ナオ、よく来たな」元気そうな親父さん


 「親父さん、ご無沙汰してます。やっぱり親父さんの料理が一番です」


 「そうか、お前もとうとう王都に来たか」


 「いえ、偶然王都に来ることになっただけで、まだまだ駆け出しです」


 「その娘らがお前のパーティーか別嬪さんぞろいじゃないか」


 「はい、いつも助けられてます」


 「あんたら、すまないがこいつの事を頼むな」


 「親父さん」


 「おお、すまないまだ仕事中なんでな、また王都に来たら必ず来いよ」


 「はい、絶対にきます、ごちそうさまでした」


  僕は深々と頭をさげた







  店を出て、宿を探す


 「王都の宿り木亭」


 「すみません、部屋は空いてますか? 1人と3人なんですが」


  空いてたが、泊りだけで4人で銀貨6枚、バールキナの3倍か王都恐るべし


 「宿を決めたから、後はサキさんのギルド登録だな、

  それからサキさんの移動に必要そうなものを買いに行こうか」


 「長谷川さん、移動は馬車なんでしょう、

  あまり買っても持てないんじゃないですか?」


 「内緒でお願いしたいんだけど、

  僕はゲームでいうストレージが使えるみたいで」


 「へっ?」


 【ストレージ】 ヴォン♬


 「なんです、この黒いの」


 「とりあえず、さっき買ったの入れておくね」

  とポイポイ入れていく


 「はい?」


 【ストレージ】 ヴォン♬ 黒いもやが消えた。


 「長谷川さん、もしかして異世界から来た人間は特殊能力を持っているとか?」


 「もしかしたら、そうかもしれない」


  サキさんが恐る恐る「ストレージ」


 「何も起きないね」


  サキさんが赤くなっている、それをごまかす様に

 「長谷川さんはどうやって気が付いたんですか?」


 「果物の群生地を見つけてね、とても持って帰れる量じゃ無かったので、

  色々やってたら出来ちゃった」


 「出来ちゃったんですか?」


 「だからサキさんも、色々やってみると出来るかもしれないんだけど」


 「だけど?」


 「人の居ないところでやろうね、恥ずかしいし、

  万が一何か出来たら危ないかもしれないし」


 「危ないですか?」


 「部屋の中でファイヤーボールとか唱えて、ホントにでたら危ないでしょう」


 「確かに」


 「じゃあ、ギルドに行きましょうか」






  4人で王都のギルドに行く、当然だが一番大きい。


  掲示板も大きいな後で見てみよう。


  受付の列に並ぶ、僕の番が来た

 「すみません、この人のギルド登録とパーティーメンバーの追加をお願いします」


 「はい、承知しました。ではリーダーの方のカードをお預かりします

  少しお待ちください」


  すこし待っていると


 「ではこちらの用紙に記入をお願いします。

  後、ナオ様ミラセア様キーラ様はランクアップの指示が出ています。

  ナオ様がランクD、ミラセア様キーラ様はランクFになります、

  変更作業を致しますのでミラセア様とキーラ様もカードの提出をお願いします」


  ワイバーンのお陰かな


 「はい、サキ様のカードが出来ました、

  これで冒険者ランクGでの登録が完了しました。


  では説明をさせて頂きます・・・・・

  これで説明を終わります。

  ミラセア様キーラ様のカードができました、こちらになります」




  これで王都ギルドでやる事は全て終わったな


 「さて、王都ではどんな依頼があるのか見物してみようか? 

  明日には王都を出るから受けるつもりは無いけどね」


  王都ギルドの大きな掲示板だ、

  バールキナと違ってランク毎に違う掲示板になっている


  ランクGは掃除や修理ばかりだな、Fは採取と小型の討伐、Dは討伐が多いな、

  今度からCも受けられるのか


  確かワイバーンは通常ランクC10人以上だったな。

  向こうにはB,A,Sと並んでいる依頼書を眺めてみる。

  すると後ろから

 「坊や、王都は初めてかい」と声を掛けられた。


  後ろを振り返ると、いかにも姐さんといった雰囲気の

  赤い髪に褐色の肌をしたお姉さんがいた。


 「すみません、邪魔してしまいましたか」


 「いや、物珍しそうに見てたので、気になってね」


 「用事で昨日、初めて王都に来て、明日には出る予定なんですが、

  王都にはどんな依頼があるのか気になりまして見てました」


 「へ~、どこから来たんだい」


 「バールキナです」


 「なら、カークの坊やは元気かね」


 「ははは、サブマスターですね。仕事熱心ないい人ですよ。

  いつもお世話になってます」

 

「そうか、あの坊やがサブマスターか歳はとるもんだね」


よく見ると、このお姉さん耳が長い・・・エルフか?


 「いや、お姉さんにそんな事を言われると、カークさんも困ると思いますよ」


  周囲でざわざわと噂をしている


 「あれランクA、剛戦斧のタリアだろ」「破壊槌のリーダーか」


  このお姉さん、有名人か

 「すみません、ランクDになったばかりの新人でナオと言います」


 「ああ、あたしはランクAのタリアだ、破壊槌のリーダーをしている」


  すると、ミラセアさんがタリアさんに近づいて抱き着いた


 「え?」


 「坊や、この人は?」


 「すみませんタリアさん、ミラセアさんどうしました?」



  こんどはタリアさんが驚きの声を上げる


 「まさかミラセアクアラ様ですか?」


 「ええ、タリアルモイラ。久しぶりね」


  昔馴染みかな?


 「では、ミラセアさん僕たちは宿に戻ってますね」


 「ナオ、ありがとう」


 僕たちは、ギルドを後にした。




 夜遅くに帰って来たミラセアさんは


 「久しぶりに昔話が出来たわ」と、とてもうれしそうだった。

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