第2部 第10話 ひぃぃぃっっやぁっほぉ~~~~~~~~!!!!

【睡蓮の宿】


今日は、あの4人のご要望に応えての、ダンジョンアタック2日目


宿の1階の食堂でミラセアやキーラ、ミーラと他のみんなを待っていると、

2階の部屋に泊まっていたサキさんが、

今朝も眠そうに、身体を引きずるようにして階段を降りてきた。


「おはようございます。サキさん、これ昨夜書いた分です」

 サキさんに、多めに書けたリストを渡す。


 サキさんの顔色が少し悪いみたいだけど、大丈夫だろうか?


 サキさんは黙ってノートを受け取って

 眠そうな顔を顰めながらページをパラパラとめくっている。






サキさんの後から、他の3人が階段を降りてきた。


「ねえ、紗希ちゃん。

 もしかして毎朝、こうやって長谷川っちにリストを

 ミラセアさんもキーラちゃんも、

 これがあたりまえみたいに見てるけど?」


「・・・・・・・・・・・」


早乙女さんが話かけても、

サキさんはリストに集中している。


「サキはな、前は、朝、ナオの部屋の前でリストを待っておったんじゃが。

 その内に待ちきれず、部屋のドアを叩くようになっての。

 今は、なんとか説得して朝食の時に渡す事で落ち付いたようじゃ」


「ごめん、今夜も紗希を囲んで反省会するよ・・・

 じゃあキーラちゃん、毎朝こんな感じなんだ」


一条さんの問いかけに、キーラは


「サキ? えっと・・・時々、叫ぶ?」


「・・・叫ぶの?」


キーラが黙ってサキさんを指さす・・・・・


サキさんの手の中にあるノートが震えている


「きっ・・・」


「き? どうした? 紗希?」




「きっっったぁぁ~~~~~~~!!」





サキさんが、叫んだ。


「サキが、見つけたようじゃな」


「紗希、大きな声で叫ぶのはヤメテ。宿の人に迷惑よ」


西園寺さんが、見かねてサキさんを止めようと近づくが・・・


サキさんは、西園寺さんの方を見て、ニヤリと笑い

ノートを見せて、を指さした。









「ひぃぃぃっっやぁっほぉ~~~~~~~~!!!!」


 西が、奇声を上げてコワレタ・・・・・




 常軌を逸した2人様子に、一条さんが慌てて駆け寄るが・・・


 サキさんの後ろからノートを覗き込んで、

 あからさまな落胆の表情を浮かべると

 僕と早乙女さんを見て、首を左右に振った。



「一条さん、西園寺さんまで、どうしたんですか?」


「長谷川さん、椿、最悪かもしれない。

 あいつらリストの中にを見つけてしまった」


「それは・・・・あの2人には最悪の発見かも・・・・」


「あの? 一条さん、早乙女さん? ミニガンって、小さな銃? 

 それって最悪なんですか?」




「戦闘機に積んでいる20mmバルカン砲をしたのがM134ミニガンなんだ。

 あたりの弾丸をばら撒く、冗談みたいな兵器しろものなんだけど

 あの2人、あんなモノをどこで使うつもりだ?」


「ははははは・・・・・・・・・・」

「ふふふふふ・・・・・・・・・・」


うん、正直、ちょっと気持ち悪い・・・・


その2人が・・・・こっちを見て笑った。


僕に近づいてきて、サキさんが右腕、西園寺さんが左腕を掴む。


「長谷川さん、ちょっと部屋に行きましょう。

 このM134ていうのを至急、出してください」

「長谷川さん、弾薬はこちらの7.62mm×51 M13link の方です。

 何箱使うか分かりませんが、とりあえず1箱だしてくださいね」


腕を掴む手を振りほどこうとするが、がっちり掴んで離そうとしない。




「真輝ちゃん、確かミニガンって・・・・・・」

「そうか、でも、それで、あいつら止まるかな?」

「やってみるしか無いよ、

 あのミニガンだけは使ってほしくないの」


一条さん達が、何かコソコソやっている。

・・・・・お願い、助けて




、僕の腕を掴んで離さない2人に、声をかけはじめた。


「なあ、紗希、ミニガンの電源はどうするんだ? 

 無線用に使ってる発電機じゃ、消費電力が追いつかないだろ?」


「ねえ、紗希ちゃん、そもそもドコに固定するの?

 ハンヴィー? アレってバッテリーに繋げられるの?

 三脚トライポッドってリストに無かったよね? 

 あたしたちに工具も技術も無いよ」


「今日、2人はダンジョンには入らないで、

 眺めるのに時間を費やすのかな?」


「まあ、だからね、しょうがないよ。

 私達はダンジョンに射撃に行くから、まあ、よろしくね」


「ミラセアさん、この2人はと一緒に宿に置いていきます。

 我々は、はやくダンジョンに行きましょうか?」


「そうよね、たとえミニガンでも、見てるだけで幸せだよね」


 いつの間にか、僕の腕を掴んでいた手が離れていた。






「昨日は手ごたえが無かったじゃろ。今日は、少し深い階層に行ってみるかな?」


「深い所だと、何が居るの?」


「それなら昨日の内に聞いておいたぞ ポイゾナ・バット ブラッドライン・バイパー ギガリテ・センチピード この3種じゃと」


「名前からして、絶対に毒を持ってそうだね」


毒大こうもりポイゾナ・バットは咬まれた場所が酷く腫れて高熱が出るな、

 血毒蛇ブラッドライン・バイパーは咬まれた場所からの血が止まらん、

古代種ムカデギガリテ・センチピードは毒は無いが、単に食いちぎられるぞ」


「ミラセア、毒の治療薬はあるの?」


「ギルドで2種類共、軟膏を購入できる。

 出かけに寄って買って行こうかの」


「長谷川さん、コウモリなら、みんな耳を塞いで、スタングレネード投げれば、

 きっと一発ですよ」


「紗希、耳を塞ぐタイミングを間違えたら、こっちが悲惨な事にならない?」


 サキさん、、会話に入ってきたね。


「蛇やムカデなら、散弾が良いかな? 紗希、リスト見せて」


「綾女ちゃん、私、M4カービンに銃剣バヨネット付けたい」


 西園寺さんも、やっと諦めてくれたのか、無事に復帰したみたいだ。


「「でも、ミニガンは絶対に諦めないから、

  みんな、今夜はリストの解読会をするから

  全員、リストに目を通しておいてね!!」」


三脚トライポッドと大容量のバッテリー、

 それから電気系のツールセット見つけたら最優先で教えて」


「紗希、長谷川さんのリスト貸して。

 まず、私がチェックするわ。

 チェックが終わったら、椿に渡すから

 椿のチェックが終わったら真輝に渡してね」


前言撤回、2人共、まったく諦めてないぞ。


「それは、了解だけど。2人共、その・・・

 ミニガン関連以外に探したい物は無いのかな?」


「ディーゼル燃料、あと医薬品関係があれば欲しいかな?」






「長谷川っち、ちょっと良いかな?」


宿を出る直前に、早乙女さんから呼び止められた。

いつもとは、感じが違う酷く深刻そうに見える?


「どうしました、早乙女さん?」


「実は・・・・お願いがあるの・・・」


何かあったのか? 緊張で思わず息を呑む・・・・


「・・・・・・なんでしょうか?」






「7.62mm×51の弾丸、キープをお願いできないかな?」


「はぁ?」


「あの2人にミニガンなんか使われたら、

 たとえストレージの中の7.62mmが何万発あっても足りないの

 狙撃銃で使う分が無くなるのよ」


「はぁ」


「まだ、ろくに狙撃銃も触ってないのに。

 あの2人に使う弾丸を喰いつくされたら困るのよ

 くれぐれも、お願いね」


「はあ・・・・わかりました」






ミニガンM134の1秒あたり60発は書き間違いではありません。

 1分間に最高で4000発撃てるそうです。


※作中では、一条、早乙女が説得材料にミニガンの電源について言及していますが

 ハンヴィーのバッテリー(24V)で稼働出来るようです。


※NATO加盟国の狙撃銃の多くは、

 その弾丸として、ミニガンと同じ7.62mm×51を使用しています。





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