第25話 衝撃の事実


さて、翌朝、僕達は再びハンヴィーで出発した。


ここからは初めて通る街道なので周辺を注意しながら走る。


念の為、ミラセアとキーラに周囲の警戒を頼んだ。


そろそろ、燃料が半分くらいになっているな・・・あれ?


「サキさん、確か、あの牽引トレーラーに入ってたのだよね?」


「発電機用に出した燃料タンク牽引車両ね。

 確かにそうだったけど、それがどうかした?」


「いや、このハンヴィーってディーゼルエンジンだよね、

 ディーゼルって燃料は軽油じゃないの?」


サキさんの顔色がドンドン悪くなっていく・・・・


「そういえば、戦車も装甲車も極一部を除いてディーゼルでした。

 なんで、こういう大事な事を忘れてたの、私。」


「サキさん、僕は逆に、その極一部がすごく気になって来た」


「えっと、航空燃料で動く高出力なアメリカ製の戦車が作られてたの」


「一時期? 今は無いんだ」


「限度を超えた凄まじいほどのと、

 ガスタービンエンジンから発生する、あまりに高温の排気のせいで、

 歩兵が戦車のという問題が起きて

 現在は作られて無いはずよ」


「ダメでしょ、それ」


「しかし、燃料はあのタンクがあったので気にしてなかったです。

 軽油 リストを探して見ますね」


「今、残り半分くらいだからカンカレラまでは多分大丈夫だよ」


危ない所だった。


「そういえば長谷川さん、護身用の、結局それにしたんだ?」

と僕の腰を指さす。


「実際そうだけど、ハッタリ銃っていわないで。

 これも結構重いけど、見た目威圧感があって、

 すぐに取り出せそうなコレを選んでみた」


「そっか、じゃあこんど落ち着いたらホルスター作って貰おうね」


そういえば、やけにキーラが静かだな?

「キーラ?」


キーラが妙に挙動不審だ、故郷が近づいて緊張しているのか? いや・・・


次に行く街カルストキアで何かあった?」


キーラの驚愕の顔、キーラの反応が全てを物語っていた。


「カルストキアに行きたくない理由があるのかな?」

 キーラの顔が絶望に染まる。


「話してくれるかな?」

 そして、僕たちは驚愕の事実を知ってしまった。





「カルストキアで・・・?」



ミラセアもサキさんも、あまりの驚きに動けないでいた。


「ちょっとまって、キーラは犯罪奴隷じゃなかったよね?」

 キーラはうなずく。


「じゃあ、どうして?」


「キーラ、食い逃げで捕まった。

 でも小さかったから犯罪奴隷にならなかった」


「ミラセア、そんな事があるの?」


「うむ、身寄りがなく、子供で本人に支払い能力が無い場合はあり得るの」


「じゃあ、カルストキアに行くと、その時の知り合いに会ってしまうんだ?」

 キーラはうなずく。


「でも、罪は償ったんだよね?」

 キーラはうなずく。


「じゃあ、キーラ。もし知り合いに会ったら、その時は僕が対応するから

 気にせずに行こうか」





そして16時頃、向こうに街が見えて来た、

おそらくあれがカルストキアだろう。


カルストキアに入った、もう遅い時間なので、

ギルドへの連絡は明日にして、とにかく宿を探す。


【大アナグマの寝床】なんとも変な名前だ


「1人と3人、部屋空いてますか?」

「はい、泊りで銀貨5枚になります。何日ですか?」

「明日には出るので1泊で、お願いします」

「部屋に、ご案内します。どうぞこちらに」


食事を取ってから、部屋でゆっくりする。

「明日の朝、ギルドに寄ってからこの街を出発して、カースサイダに向かう。

 おそらく昼過ぎには、到着すると思う。

 そのまま、カンカレラに向かえば明日の夕方には到着しそうだね」


「ああ、道中何も無ければその予定でいいじゃろうな・・・・」






ああ、


結局、キーラの事を知る人に会う事も無く。


朝、カルストキアを出発して1時間程だろうか。


山道に入って間もなく、運転中の僕は馬車を襲撃中の盗賊を見つけた。


「前方、馬車が3台、盗賊に襲われている。護衛の冒険者と戦闘中だ」


ミラセアさんが馬車から離れた所に居る盗賊たちにM4の一斉射を浴びせる。


「長谷川さん、馬車の横をすり抜けて向こうで止まって」


言われた通りすり抜ける。キーラがすれ違いざまに盗賊に一斉射を与えて、

ハンヴィから飛び降りて馬車の護衛にまわる。


サキさんも一斉射を入れている。


馬車近くの盗賊は倒せたようだ。


いや、馬車の下に隠れていた盗賊がこっちに向かって来る。


僕は腰の袋から銀色の拳銃を取り出して、引き金を引いた


ダァーン


一応練習はしてるけど右の肩に反動がくる。


盗賊は倒れて動かなくなった。


このデザートイーグルって拳銃、やっぱり目立つな。





僕たちが助けたのは、カルストキアの商人の馬車だった

盗賊の捕縛や遺体の積み込みに、けっこうな時間をとられてしまった。


その時だった。

「もしかして、キーラかい?」商人のおばさんがキーラの名前を呼ぶ。


「おばちゃん」キーラが動揺している


「キーラ、知っている人かな?」


「うん、果物屋のおばちゃん」


「すみません、冒険者のナオといいます。いまキーラとパーティーを組んでます」


「そうかい、キーラは冒険者になったのかい」


「うん」


「立派になったね~」


「以前、キーラがご迷惑をおかけしたそうで、申し訳ありませんでした」


「ああ、あの事かい、キーラ安心しな。あの子達も元気でやってるよ」

 あれ? ちょっとまってよ。


「キーラ、あの子達って何の事かな?」


「キーラ、あんた言って無いのかい。

 あんたが孤児たちに、ずっと食べ物をあげていた事も。

 それが続かなくて、孤児たちが盗んだ分まで責任をかぶってしまった事も」


「キーラ、食い逃げで捕まったって言ってなかったっけ?」


「うん、


「いや・・・全然違うから」


おばさんから、ちゃんと話をきいた。

キーラはカルストキアの孤児たちに食べ物を与えていたらしい。


初めは、お腹を空かせた小さな子に、

森や山で採った物を持って来て与えていたそうだ。


それで、採取依頼の時、あんなに詳しかったんだ。


ところが、冬になって採れる物が減ったことで、

お腹をすかせた小さい子が、お店の物に手を出した。


その責任が、一番年上だったキーラにかかったらしい。


「みんな小さかったし、仕方ない」

 いや、キーラ、君に会った時まだ10歳くらいにしか見えなかったよ。


他の子は、いったいどれだけ小さかったの?

護衛をしていた冒険者にも挨拶する、

カースサイダを拠点に活動してる冒険者パーティーのようだ。


向こうもランクAのドラゴンスレイヤーに恐縮している。


キーラの事も聞けたし、一度助けた以上、

この馬車を残して先に行くのも後で何かあったら悔やまれる。


「仕方ないな、カースサイダまで送って行こう」


この後、ゆっくりした運転になったので、運転をサキさんに代わってもらった。


「このぶんだと、カースサイダ到着は明日の昼ですね」






なんてこった、目の前の道が大きな岩で塞がれている。


岩を前に商人さん達が途方にくれている。


どうしよう?

ハンヴィと馬車をストレージに入れて、

足で乗り越えて向こう側で出す?

いや、これだと馬が移動出来ない


「長谷川さん、この岩砕いちゃいましょう。ストレージからこれを出してください」


サキさんが指さしたところの文字は僕にも普通に読めてしまいました

【dynamaite】・・・なんでだろう、

ダイナマイトって鉱山で使うものじゃないの?


【ストレージ】  ヴォン♬


木箱を開けると、中にはダイナマイトが入っている。

きっちり100本入っていた。





岩の所々にダイナマイトを差し込んで、導火線でつなぐ。


サキさんが電波式の起爆装置を使いたいそうなので、その辺はお任せする。


周囲の人(もちろん岩の向こう側も)退避してもらって

物陰に隠れてサキさんは起爆スィッチを押した。


思ったよりも小さい爆発音がしたので、向こうを覗いてみる。


大岩はこなごなになっていた。


これなら数時間あれば通れるようになるだろう。





結局、僕たちがカースサイダの街に到着出来たのは

カルストキアを出てから3日目の夜になった。


カースサイダでやっと宿を見つけた僕たちは、

食事もそこそこに就寝した。


僕は、どちらかというと、運転疲れと岩運びの筋肉痛に悩まされた。

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