閑話 友の疑惑
【友ヶ浦 結星】
娘の紗希が突然の失踪を遂げてから1ヶ月が過ぎた。
ある日、娘が大学から帰宅しなかった。
家に連絡も無く外泊するような娘では無い。
私は即座に警察に届けをだした。
警察からの事情聴取にも、もちろん応じた。
ただ・・・娘の部屋を見せることだけは、かなり抵抗があったが。
警察官達も白いワンピース姿で微笑むの娘の
まるで銃器庫のような部屋の状況が嚙み合わず混乱していたようだ。
全てエアガンだと確認できるまで、警察官達の緊張は解けなかった。
「すみません、ガレージにも何かあるのですが念の為に確認して頂いて
いいですか?」
ガレージに置かれたモノも確認してもらって、違法なモノは無い事が判った。
紗希・・・お父さんは信じていたよ。
今日は、娘の友達が心配してきてくれた。
よかった、普通のお嬢さんたちだ。
「いらっしゃい、よく来てくれました」
「紗希さんが、こんな事になって、ご心配なところお邪魔して申し訳ありません」
「いや、心配してくださってありがとうございます」
「ところで、お父様には紗希さんの行き先に、
何か心当たりは有りますでしょうか?」
「これが、情けないことに全く無いんです。
去年行った冨士のイベントに、今年も行きたいねとも言っていたから・・・」
「お父様、差支えなければ紗希さんのお部屋を
見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「紗希の部屋をですか? 警察以外には見せていないのですが?
ちょっとあの部屋を見せるのは」
「大丈夫ですわ、お父様はご不在でご挨拶出来ませんでしたが。
紗希さんの部屋には、何度かお邪魔していますのよ。
それに、もしかすると私達に何かメッセージを残しているかもしれませんわ」
「それなら、どうぞ」
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綾「ありえないわね、あの娘、本当に何も持って行って無いわ」
真「ほんとうに、突発事態だったみたいだな」
椿「ハンドガン1丁減ってないね」
綾「今頃、禁断症状が出てるんじゃない?」
真「しかし、この部屋、家族に隠す気ゼロだね」
椿「学校では、あれだけ完璧に隠しているのにね」
綾「しかし、困ったな。これでは手がかりが無い」
真「とりあえず、チームのメンバーで情報を共有な」
椿「
綾「でも、なんでだろ。あの娘、どこかで銃を撃っている気がする」
真「さすがに撃っては無いだろう、でもどこかで銃に頬ずりしてるな、きっと」
椿「昨夜、夢に出てきた。それはもう楽しそうに
奇声をあげながらフルオートしてた」
綾「でも、かわいそうですね」
真「なにがだい?」
椿「お父さん?」
綾「だって、この部屋を警察に調べられたんですのよ」
真「確かに、紗希が知ったら今頃絶叫してるな」
椿「調べた警察官もけっこう可哀そう」
綾「私達はそんな事の無いように、ドコカに預けようか?」
真「チームで借りましょうか? こんな悲劇が起きない様に」
椿「メンバー全員に警告を出すね」
綾「一応お願いしますけど・・・他のメンバーはちゃんと隠してますわよ」
「お父様、ありがとうございました。
紗希さんの部屋を確認させて頂きましたが、本当に突発的な事態らしくて
彼女なら必ず持って行く物まで残っていました」
「いや、来てくれてありがとう。もし何か分かったら教えてもらえますか?」
「はい、情報がありましたらすぐに連絡します」
「ところで、変な事を聞きますが
聞き覚えはありませんか?」
「すみません、紗希さんの口から男性の名前が出る事は無かったので、
どなたですか?」
「はい、私と妻の知り合いなのですが、彼も半年程前に急に失踪しているんです。
娘とは直接面識は無いはずですが、娘と同じ大学の3年生でした」
「そうですか、記憶に無い名前ですが、こちらでも調べてみます」
綾「長谷川直弥って名前、聞いたことありまして?」
真「いや、ないな?」
椿「とりあえず、メンバーで情報収集」
綾「しかし、紗希を調べて男性の名前が出たのが意外ですわね」
真「直接面識は無いのかな?」
椿「同じ大学です、少なくとも男性側は紗希の事を知ってるはず」
綾「つまり」
全「「「
椿「ところで、みんな気が付いてた?」
綾「何をですの?」
椿「紗希のお父さん、私達と初対面だと思ってるよ」
真「いや、挨拶するときは、ちゃんとフェイスガード取ってたよね?」
椿「チーム戦の時には気合い入れてフェイスペイント入れてたはず」
綾「それだと識別は無理でしたね」
椿「それに、チーム戦の時は、あからさまに視線を逸らしてた」
真「紗希、あの時、奇声をあげながら敵陣に突っ込んで行ったから、
見たく無かったんじゃないか?」
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