第2部 エピローグ 凶王の真実

『どうやら意識だけでなく、記憶も戻ったようだな、ナオ』


「全部思い出した・・・も、も。

ところで、左の頬のあたりがすごく痛いのと、両腕が声を上げそうなくらい痛いんだけど。僕が意識を失っている間に、何があったの? 」





僕の言葉を聞いて、みんなの視線が一斉にキーラに集中する・・・


それにつられて僕がキーラに顔を向けると、キーラが泣きそうな顔でオロオロしていた・・・・・・キーラ、君か?


『どうやら意識を失って倒れた時に、玉座とそこのだんかどに強くぶつけたみたいだな・・・私が気が付いた時には、その状態だった』


マカ・・・それで納得しておけと言う事かな?


「そうなの? かなり酷くぶつけたみたいだね、痛すぎる。でも、マカと一緒という事はDだったんだ」


『この状況だけ見ればそうなるのか? しかし、ナオが何も覚えていないなんて事態は、想像すらしてなかったな』


「ごめん、でもなんで忘れてたんだろう?」






「長谷川さん、忘れてたって・・・何の事?」


「そうだね・・・でも何から説明したら良いのかな? とりあえず、サキさん、こっちについて来て、ここを抜けると中庭に出るんだ。たぶんアレ、まだ残ってるんじゃないかな?」


僕は、痛む顔と両腕を我慢しながら、この王宮の中庭に案内した。






「よかった、みたいだ」


中庭にあったのは、異様な形をした鉄の塊・・・の残骸?


「長谷川さん、どういう事? どうして、あんなモノがここにあるの?」


「あれ・・・戦車・・・よね?」


「ヒドイ状態だけど、もしかして・・・M1エイブラムスかな?」





「あれは昔、マカが出したんだ。あのリスト・・・〖メザキユのオモチャ箱〗から」


「ナオよ、どういう事か説明してもらおうか?」


ミラセアから厳しい声で問われるが、僕は増してきた痛みに耐えられず、その場に座り込んでしまった。


「そのつもりなんだけど、その前に・・・マカ、痛みが酷くなってきた

もう限界、お願い・・・


『そういえばナオ、どうして治療しないんだ? ?』


「たぶん出来るけど、やったことは無いの。怖いから、お願い」


『しょうがないな・・・』


【ヒール】


顔と両腕の痛みが引いていく・・・


「・・・だいぶ痛みが和らいだ・・・ありがとうマカ」


当然、みんなからは驚愕の眼で見られるが、何から話せば良いんだろう?


「長谷川っち、顔の腫れがだいぶ引いたけど・・・それってギフト?」


「そう、マカの持っているギフト」


キーラが僕に抱き着いて・・・泣き出した。


「キーラ・・・何? どうしたの?」

キーラは僕の胸に顔を埋めたまま、顔を見せようとしない。


キーラは泣いている、みんなの眼はマカの事やギフトの事を聞かせろと強く訴えている・・・しかし、どこから話せば良いんだ?






そんな中、皆の後から遅れて中庭に出てきたのは、謁見の間で這いつくばって刻印術エグノスを調べていたオリウムさんだった。彼は、周りの混沌とした雰囲気も全て無視して声を掛けて来た。


「ナオさ~ん、すみません。あの素晴らしい刻印術エグノスを書き写すのに、ストレージから道具一式を取り出してもらえますか?」


その、あまりにのんきな言葉に、さすがにミラセアもあきれたようで・・・


「オリウムドラムよ、お主というヤツは、この状況を見て何とも思わんのか? 

きょ・・・マカ王なんじゃぞ?」


オリムルさんが、バツの悪そうに頭を掻きながら笑っている


伯母上おばうえ、申し訳ありません。伯母上の呪いの件や、凶王などという異名の手前、言い難かったのですが・・・」


「なんじゃ?」


「実は、マカ王の人となりは、から色々と聞いておりまして・・・

昔は母が楽しそうにマカ王の話をする度に、父がねてへそを曲げておりました。

そのせいか・・・どうもマカ王にはあまり・・・警戒心が持てないのです」


「ちょっと待て、確かに先王閣下からは、マカ王と何度か会った事があるとは聞いておった。キセラムフリスは、そんなにマカ王と親しかったのか? あやつからは、そんな話は一度たりとも聞いておらんぞ? ナオ、マカ王、もうどちらでも良いから、さっさと説明してもらおうか?」


『ミカラスキレア王とキセラムフリス王妃、あの2人には色々と世話になったんだ。ミラセアクアラ殿、私も全てを知る訳ではないが、千年前にこの場所で何が起きたかくらいは説明させてもらうよ。少し長い話になるだろうから、謁見の間に戻ろうか?』





再び先ほどのテーブルと椅子が置かれた謁見の間に戻って・・・


『さあ、どうぞ座ってくれ』


僕は椅子の一つに座ったんだけど、キーラが僕に抱き着いたまま離れようとしない。

困って周囲を見回すと、テーブルの上に懐かしいモノを見つけてしまった。


「ああ、この蜜菓子みつがし、懐かしいな。これけっこう癖になる甘さなんだよね、1つもらうね」


みんなの視線が集まる中、皿の上に置かれた白い紙の包みを開いて、中から黒い塊を取り出した。


『ナオ、それを口に入れられたら、私は話が出来ないのだが・・・』


口に放り込む直前の手を止めた。


「・・・そうだった、キーラ食べる?」


「ん」


キーラの口に蜜菓子を入れる。


『キーラよ、重い、そこをどいてもらえないか?』


「もっ(やっ)」


『しかたない、それでは千年前にここで何があったか、その話をさせてもらうとしようか』






※M1エイブラムス アメリカ製主力戦車、現在では製造は終了しています。


※この後、間章 マカ王の独白が始まります。




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