第13話 望まぬ再会

 その日の夜。

 俺とリュミエールは領主の屋敷に向かっていた。


 騎士からの要請には2つ返事で答え、兵士も仕事があるという事で帰っていったのだ。


「それにしても……話が早いですね。こんなすぐに領主様に会えるだなんて」

「決まっている。俺が最強であるという事が領主にも伝わったのだろう。最強である俺の力を借りたい……とな」

「そんな……こと……いえ、あるのかもしれません……?」

「それでは行くぞ。ここが領主の屋敷だ」


 俺達は屋敷の前に行くと、その前に立っている兵士たちは無言で扉を開ける。


「……」

「いくぞ」

「はい」


 中には広い庭が拡がっている。

 冒険者ギルド全体よりも広いのではないだろうか。

 庭に植えられている木々は手入れが行き届き、見る者を楽しませる。


 奥にある屋敷は3階建てで、白い宮殿きゅうでんと言うべきものだ。


 俺達が庭の中に入るとすぐに扉は閉じられてしまい、しかも、結界が張られた事が分かった。


「リュミエール」

「はい?」

「注意を払っておけ。何が起きるかわからん」

「え? で、でもここは領主様の……」


 そんな事を話していると、前方に3人の人影が見えた。

 その3人は……。


「皆……」

「皆?」

「ああ、俺が元々一緒に組んでいたパーティ。〈至高の剣〉のメンバーだ。追放された俺を笑いに来たのか?」

「い、行くんですか?」

「仕方あるまい、何かあるのだろう」


 俺達は近付いていく。

 ただ、3人の様子を確認しているけれど、どこか様子がおかしい。


 3人ともただ真っすぐに立っているだけなのに、どこかしら体がビクンとはねたりしている。

 しかも、顔の皮膚の下には細い何かがうごめいていた。


「これは……どういうことだ?」

「【標的固定ターゲットロック】」

「『火球魔法ファイアボール』」

「『断罪魔法ジャッジメント』」


 3人はいきなりターゲット集中と魔法を放ってくる。


 バスラがスキル自身を狙わせている間に、他のメンバーが攻撃するいつもの戦い方だった。


 俺はバスラを見つつも、剣を抜き放つ。

 そして飛んでくる魔法を切り捨てた。


 ドォン!


 爆発した魔法が顔を撫でるけれど、この程度ではダメージにならない。


 頭の上からは大きな光の柱が落ちてくる。

 これは剣を掲げて受け止めた。


「え? え? シュタルさん!? 彼らって元々は味方何ですよね!?」

「元々は……な」

「そんな……追放……したのに……なんで……」


 リュミエールが悲しそうな顔をしているけれど、俺は首を振る。


「あいつらは確かに俺を追放した。だが、決してこんな事をしてくる奴らじゃない」

「でも……実際に……」

「恐らく……『看破』」


 俺は魔法を使い、彼らの状態を見抜く。

 すると、操草そうそう状態と出てくる。


「うむ。やはり操られているな」

「そんな……きゃ!」


 リュミエールと話していると、奴らが今度はリュミエールの方に向かって魔法を放ってくる。


「『土槍魔法ロックランス』」

「『神聖光魔法ホーリーレイ』」


「おっと。狙いは俺だろう? 他を狙うな」


 スパっ!


 俺は土の槍の魔法を切り裂き、光の光線を見切って剣で受け止める。


「え……今のって……見えない程の速度で飛んでくる光線なのでは……」

「俺程に最強であれば問題なく止められる」

「で、でたらめ過ぎますぅ」

「しかし、操られているとは言っても……どうやって操られているんだろうな」

「それは……私にも分かりません」

「仕方ない。一度大人しくしてもらおう」

「え?」


 俺はまずはバスラを狙う。

 奴に意識が向くのは仕方ない。

 まぁ、振り払って行くことも出来るのだけれど、別に問題もない。


「大人しくしていろ」


 スパッ!


 バスラの足を斬り飛ばし、動けなくする。


「後は……ふっ」


 一瞬にして警戒する2人に近付き、2人の瞳を斬りつけた。


「……」

「……」


 2人は叫び声もあげない。

 それに加えて、魔法を使おうともしてこない。


 彼らは目視で狙いを定めないと狙いをつけられなかったからな。

 その時の事を知っていたのが役に立った。


「あ、あの……いいんですか? そこまでやってしまって……」

「後で回復してやる。だから今は……『看破』」


 先ほどよりも力を込めて魔法を発動させる。

 3人の体を隅々すみずみまで確認し、異変のある場所を特定する。


「ふむ。脳に何か植え込まれているな」

「脳に……? それは……どうやって回復させるのでしょうか……」


 リュミエールは諦めたような顔をしているけれど、この程度であれば問題ない。


「『幽霊の手レイスハンド』」


 俺は自身の手を半透明の状態、普通には触れない状態にする。

 そして、一番近くにいた魔法使いのセルジュの脳に植え込まれた何かに触れた。


「これだな、『闇火魔法ダークフレイム』」

「え? 燃やすんですか!?」

「当然だ。燃やさねばいつまで経ってもこのままだ」


 俺は対象だけを燃やす魔法を使い、脳に埋め込まれた何かを燃やし尽くす。

 しばらく様子を確認していたけれど、特に問題もあるようには思わない。


「いけたな」

「え? 何やったんですか!?」

「脳に植え込まれていたのを燃やしたと言ったろう。これで後は回復魔法を使ってくれればいい」

「わ、分かりました」


 俺は残りの2人の分も燃やす。


 その後はしっかりとリュミエールが回復をさせてくれた。


 しかし、彼らは目がめることはない。


「大丈夫でしょうか……」

「呼吸はしている。回復もうまくいったのだろう?」

「大丈夫だとは思いますが……」

「まぁ、どうしてこいつらがこうなったのか。分からないしな?」

「本当に……どうしてこうなってしまったのか……」

「心配するな。答えの方が自分から来てくれたぞ?」

「え?」


 俺達の前に、上半身浅黒い大男が降り立った。


 リュミエールはそんな男の姿を見てこぼす。


「ま、魔族……」

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