第31話 城の雰囲気
***リュミエール視点***
私は一人で王城の
「それでは
私は所作を正しく行ない、玉座に座る国王を見つめる。
国王は
目は気だるげで、早く終わらせてしまいたい。
そう心の声が漏れ出て来るようだった。
膝をつくのは私一人で、周囲には大勢の貴族達が私を見つめている。
国王は私をじっと見つめ、口を開く。
「貴公が光の巫女か」
「はい」
「それではその証明をせよ」
「証明?」
「スキルを使って見せよ」
「……畏まりました」
私は見下すような視線に耐えながらも、国王の言う通りにする。
「【
「おお!」
「これが光の巫女の……」
私はスキルを使い、自身が本物であることの証明をする。
これで少しは私を見直しただろうか。
そう思って国王を見ると、その表情はピクリとも動いていない。
「なるほど、確かに本物のようだ。それで、どの様な用件でここに来たのだ?」
国王は面倒そうに口を開く。
「……勇者様がこちらの方で誕生したと聞き、魔王討伐の旅に一緒に行かせて頂きたいと思って参りました」
「勇者か……。大臣。今勇者はどこにいたか?」
「はて……確か国内で魔物狩りに行っているはずで……どこかまでは正確には今は分かりませんな」
「だそうだ。分かり次第使者を送ろう。今日は帰るが良い」
国王はそれだけ言うと玉座から立ち上がり、席を後にする。
私は驚いてそれを見つめた後、すぐに止めた。
「お、お待ちください!」
「……なんだ?」
「今この王都には危機が迫っております! 魔王四天王の一人、【策謀】のミリアムが潜伏しているのです!」
私はこの時、これを言えば国王が席に戻ると確信していた。
それほどに魔王四天王の名前は重い。
けれど、国王は一言言うだけだった。
「それで?」
「それで……魔族がこの王都を狙っているのですよ? どうして……対策を打とうとしないのですか?」
「必要ない」
「必要ないって……」
「我が国はこれまで魔族の侵攻を幾度も阻んできた。今回もそれに1度増やされるだけだ。心配は要らぬ」
国王はそれだけ言うと去っていく。
そんな……どうして……。
私の疑問を余所に、周囲の人達が私に意見を言って来る。
「全く、光の巫女が言うからなにかと思えば、ミリアム? 我が国はその程度の者では揺るがんわ」
「左様。この国は今まで一度も落ちた事などない。先日も国境に軍を派遣したばかり、負ける可能性など万に一つもない」
そう私の言葉が軽んじられる一方で、それに反対する者もいた。
「何を言っておるのだ! 魔王四天王の1人がここにいるのだぞ? 放っておいて言い訳などなかろう!」
「そうだ! 貴様らどうかしている! 至急、前線に送った兵士の一部を呼び戻すべきだ!」
それからは様々な者達に別れての議論の嵐だった。
私はそれらをじっと聞き、どの様な行く末になるかを聞いていた。
そこで分かった事が1つある。
派閥がいくつにも別れている……ということだ。
最初こそミリアムなんていない、という派閥と、ミリアムに対抗するべき。
という派閥で別れているのかと思っていた。
しかし、話を聞いていると、ミリアムがいても問題ない、という派閥や、むしろ王都にいるのなら積極的に狙いに行くべき。
という感じで好戦的だったりして中々に大変だったのだ。
正直、途中からは考えるのを止めていた。
なので、静かに私はシュタルさんの所に戻る。
シュタルさんは控室のソファに座ってのんびりと果実を食べていた。
ちなみに、一緒に来ていた商人の方々は王城に入れない、と言われてしまって別れることになった。
ただ、その際に泊まる宿は聞いたので、いざとなったら会いにいける。
「シュタルさん……ダメでした。誰が敵で……誰が味方かも分かりません」
「ミリアムが本気でこの王都を落とそうとしているのだ。セントロやベリアルでも王都の動きは鈍いと言われていた。恐らく……貴族の連中にもミリアムの息がかかっている者達が存在しているのだろう」
「そうだとしたら……どうやって奴の計画を止めればいいのでしょうか……」
「決まっている」
「決まっている?」
「そうだ。こんな所で調べようとしてもどうせ新しい何かが出てくるだけだ。それよりも、冒険者ギルドに行くぞ。あそこの方がまだ可能性はある。王都にはSランク冒険者もいるはずだ。そいつやギルドマスターに情報を聞き出す。そして、ミリアムの計画を止めるんだ」
「なるほど……」
「行くぞ。ここにいる意味などない。いつまでも自分のイスが壊れないと、信じることしか出来ないグズ共に構っている暇はないからな」
「もう……言い方があるんじゃないですか?」
「奴らにそれ以上上等な言葉などいらないよ」
私達はそれからすぐに王城を出る。
王城の中もどこか緩んだ雰囲気をしていて、国境に魔族が侵攻してきている。
という事が無いかのようだった。
これは……かなり危険な状態かもしれない。
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