第32話 王都の冒険者ギルド
「ここか」
「そうみたいですね。ここまで大きいとは思いませんでしたが……」
「王都なだけはあるな。それと、その服も似合っているぞ」
「もう……何で今更……」
俺達は冒険者ギルドに来る前に、服装を着替えてきた。
今更ながらにだけれど、ミリアムに姿がバレている。
なので、少しでもそれを紛らわせる為に服装を変えたのだ。
俺は黒色の服から水色の服に、リュミエールは光の巫女の服から教会のシスター服に変わっている。
俺はリュミエールにそんな事を言いながらギルドの中に入っていく。
ギルドの中は酒場と依頼受付が一体となっていて、酒を飲んでいる連中も依頼を受けている者もいる。
「それで、最初はどうするんですか?」
「そうだな。まずは受付に……」
俺がそこまで言った所で、声をかけられる。
「おいおい。シスターがここに何のようだ? っていうか、そこそこ可愛い……エルフじゃねぇか。そんな雑魚より俺達の元に来いよ」
そう言って来たのは如何にもチャラそうな雰囲気をさせた男だった。
装備の感じから見てシーフだろうか、彼の後ろには同じような雰囲気の男が他に3人もいる。
「あ、そういうのはいいので、どいて頂けますか?」
リュミエールはそんな奴らにも笑顔で対応している。
流石光の巫女と言われる存在、懐は広いのだろうか。
しかし、シーフは納得していなかった。
「はぁ? いいからちょっと来いよ。俺達の事知らない訳ないんだろ?」
「申し訳ありません。全く知らないです」
「……俺達は〈
「セントロですが」
「セントロ……ああ、あそこか」
俺はリュミエールとこいつがその話をしている間に、ギルドの職員が裏に行くのを見逃さなかった。
その視線を捕らえたのか、奴が俺に話を振ってくる。
「おいテメェ、一体どこ見てんだよ。あ? そういうことか、いいぜ。紹介してやる」
「何の話だ?」
「あのギルドの受付と話してぇんだろ? 俺が紹介してやるっつってんだよ」
奴の視線を辿ると、そこには確かに妖艶な雰囲気を漂わせた女性がいた。
彼女はとてもにこやかに笑って対応していて、目の前にいる冒険者もデレデレしているようだ。
スタイルもリュミエールと違って出るとこは出ていてハッキリとした差を感じられる。
俺がギルドの職員を見た時に、彼女を見たと勘違いしたらしい。
「シュタルさん。どこ見てるんですか?」
「……別にどこも見ていない」
(じっー)
リュミエールの視線が痛い。
別にやましいはずがないのに、なんだか申し訳ない気分だ。
「おいお前、シュタルっていうのか」
「そうだが」
「おれはファティマ。おれがさっき言っていた意味が分かったらそのエルフをこっちに入れさせろよ」
「断る」
「はぁ? このおれの誘いをお前程度が断れると思っているのか?」
「当然だ。むしろなぜそんな理不尽な要求が通ると思った?」
「決まってんだろ? 神官職は貴重なんだよ。それがお前みたいな雑魚と組むなんて損失だ。おれ達のような上位冒険者パーティに来る方がいいんだよ。お前もそう思うだろ?」
奴は同意を求めるようにリュミエールに問いかける。
しかし、リュミエールは首を傾げながら聞く。
「貴方達がシュタルさんより強いとは思えませんけど……」
「は? てめぇ……舐めてると殺すぞ?」
奴がいきなり殺気を俺達に向けてくる。
でも、俺にとっては赤子の笑顔と大差ないし、リュミエールも最近は修羅場を潜り抜けている。
その為か不思議そうになんで怒っているんだろう、という目を奴に向けていた。
「殺すか……それは……お前が殺される覚悟もある。という事でいいのか?」
俺は少しだけ奴に向けて殺気を放つ。
「ひぃ!」
「!」
「なんだ?」
俺のほんの少しだけ漏れ出た殺気が他の奴の所にも飛んでしまい、ギルドにいた多くの奴らがこちらを振り向く。
「どうした? 俺を殺すつもりなのだろう? この最強の魔剣士、シュタルを。それがこの程度でビビる? 本当に正気か?」
俺はさっきよりも殺気を調整して、奴だけに狙いを絞って浴びせ続ける。
「ひ、ひぃ……お、俺の師匠には……Sランク冒険者が……ついて……」
ファティマはそう言いながら腰を抜かしていた。
足に力が入らない様で、少しでも俺から離れようとしている。
それでも負けず嫌いに言うのは中々根性があるとは思う。
「なるほど、では貴様を殺したらSランク冒険者が出てくると言うことだな? 楽しみだ。俺が最強であると証明してやろう」
「ひぃ! ぼ、冒険者ギルドで……そんなことしたら……どうなるか……」
「お前が先に喧嘩を売って来たんだ。勘違いするな。お前が殺そうとして来たから、俺がお前を殺すんだ。最初を間違えるな」
(ガチガチガチガチ)
たったこれだけで歯をガタガタ言わせている。
まさか剣に手をかけていないのにここまでビビるなんて。
正直これが王都のレベルかと思うとがっかりだ。
「そこまでにしてくんねぇかな」
「お前は?」
「あんたがそこに転がせている奴の師匠だよ」
「ということは……」
「ああ、王都唯一のSランク冒険者。【千刃】のステークスだ」
そう言って現れた男は、さえない
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