第83話 魔陣と剛腕
俺達の前に急に現れた2人の魔族は、観察するように俺達を見る。
俺はそんな2人組に声をかけた。
「お前達はなんだ?」
「ワシ等か? ワシ等はそうじゃのう。【魔陣】と言えば伝わるかのう?」
「ああ、魔王四天王の1人……だったか?」
「そうじゃそうじゃ。よく勉強しておるのう。それで、ワシ等がここにいる理由は知っておるか?」
「知らん……が。勇者と言ったな。勇者を探しているのか?
「奇遇……とな?」
「俺も探しているんだ。それで、どこにいるのか知っているか?」
俺がそう言うと、老人は少し驚いた様に目を見開く。
そして、口を開いた。
「勇者はそこにおるではないか。知らんのか?」
「何?」
俺は後ろを向くと、そこには『
「アスタ。お前……勇者だったのか?」
「……に、逃げよう! 早く! 急いで!」
「どうした急に」
「あいつらは魔王四天王の2人だよ! 【魔陣】だけじゃない! 【剛腕】もいるんだ!」
「ほう」
それはいいことを聞いた。
でも、敵から攻撃をして来ないのに攻撃をするのはよろしくない。
なぜなら俺は魔族を知らない。
まずは知る所から始めないといけないだろう。
ウリルやミリアムの様な奴ばかりではないかもしれないのだ。
俺がそんな事を考えていると、アスタは更に
「そいつらはボクの仲間と……Sランク冒険者2人を瞬殺したんだ! だから、逃げないと!」
「……そうか。冒険者を殺したのか」
「ほっほっほ。当然じゃろう? 強い者が奪う。それはこの世の真理。それは全ての者に平等にもたらされる」
「おで、強い奴と戦う」
「なるほどな。お前達は2人とも人を殺しても何とも思わない質か」
「当然。魔王四天王ともなればそうなるものよ」
「……残念だ。ここでお前達を殺さねばならないとはな」
俺は殺気を放ち、2人に重圧をかける。
「!?」
「!?」
次の瞬間、2人は大きく飛び退り、戦闘モーションに入る。
「『魔陣構築:ゾーン』!」
老人がそう言うと、俺の体が少しだけ重たくなる。
「それは相手を弱体化させる物か。中々だな」
「その程度ではないわ! 行け! ゴライアス!」
「おで、あいつ、殺す!」
鉄仮面の巨体は俺に向かって突撃してくる。
俺は奴を正面から迎え撃つ。
「死ね!」
奴は拳を振りかぶり、俺に向かって振り下ろす。
ズン!
「そ……そんな……」
俺は奴の拳を手のひらを差し出して受け止める。
ちょっとダンジョンが沈み込んだ位で、俺自身にはびくともしない。
「次は俺の番だな?」
「あぅっ!」
ドゴォ!!!
俺はゴライアスの腹をぶん殴り、吹き飛ばす。
そして、奴をダンジョンの壁にめり込ませる。
「う……嘘……じゃろう?」
「嘘かどうかは貴様が決めろ。それが現実になるかどうかは知らんがな」
「なに? がっは!?」
俺は【魔陣】の両足を蹴り折った。
【魔陣】は地面に転がり、下から俺を見上げている。
「がっふっ……き、貴様……何を……」
「何を? 冒険者を殺しておいて貴様が殺される事を考えなかったのか?」
「そ、それは……」
「先ほど貴様が言っていたではないか。『強い者が奪う。それはこの世の真理。それは全ての者に平等にもたらされる』と。俺もその通りだと思うぞ? 強い者は奪ってもいいのだろう? 全て、そう、全てを」
「……」
「貴様の命も、貴様の財産も、貴様の大切な物全てを奪う。それも問題はないのだろう? なぜなら強い者が奪って良いから。違うか?」
「ワシに……ワシにそんなことを言って後悔せんのか? ぐぅ!?」
俺は足だけでなく、奴の手を踏みつぶした。
「や、止めんか!」
「お前は今まで殺して来た相手の命乞いを聞いて来たのか? 来ていないだろう?」
「そ、そんなことぐあ!」
俺はもう片方の手も踏みつぶす。
「さて、こうやっていたぶってもいいが、情報を吐いてもらう。だから生かした。ああ、不用意な事はするなよ? もしそんな事をしたらどうなるか。その身をもって味わうことになる」
「き、貴様……」
奴は恨めしい目を向けてくるけれど、俺にはその程度の目は何も感じない。
俺は奴の目を正面から見て、尋問を続けようとしたら後ろからゆらりと近付いてくる者がいた。
「ねぇ。待って」
「ん? どうした。アスタ」
「ボクにやらせて」
「何をだ?」
「ボクが……ボクがこいつらを殺す。大事な仲間だった。王都からずっと良くしてくれた。Sランク冒険者の2人も、ボクの為に必死に戦ってくれた。教え導いてくれた。そんな……そんな皆をこいつらは
アスタは目に憎悪を宿らせて、どこからともなく出した光り輝く剣をもっていた。
俺はそれを見て、ハッキリと言う。
「ダメだ」
「は……なんで? どうして? ボクに……ボクに恨みを晴らさせてよ」
「恨みを晴らす? ならそのままでいいのか? 俺が倒したこいつらに止めを刺して、それで満足なのか? お前は……勇者としてそれで満足出来るのか?」
「っ……それは……それは! でも、ボクは……ボクは!」
そう言ってアスタがこちらに来た時に、奴は動いた。
「! おで、殺す!」
「っ! 危ない!」
いつの間にかゴライアスが近付いて来ていて、その拳を俺ではなく、アスタに振り下ろす。
それは、先ほどまでとは違う。
俺が
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