第112話 絡みループ
俺達は道中で困っている魔族を助けたりしながら、魔王城を目指す。
そして、1か月程かけて魔王城に到着した。
「やっとついたな」
「うん。何だかんだで結構かかったね」
「あれだけ人助けをしていれば……それはかかりますよね」
そんなことを話しながら、遠くに見える魔王城を見る。
魔王城は真っ黒の
更にその下には大きな城下町が拡がっていて、それなりに発展している様子が見える。
ただ、遠くから聞くと、何だか悲鳴の様な……歓声の様な……声が聞こえている気がした。
「さっさと入るぞ」
「うん」
「はい」
魔王城には特に入る資格等はないらしく、並ぶことすらなく簡単に入ることができた。
そして、城下町は城下町で、魔族らしい場所になっていた。
「おらぁ! 死ねぇ!」
「お前がな!」
「死に晒せや!」
「生意気な角を叩き折ってやるよ!」
そのような感じでかなり……街中なのに戦いがそこら中で始まっていた。
「これは……」
「中々……」
「いいから行くぞ。宿を取らないといけないだろう」
「
「どうしたらそこまで簡単に受け入れられるのさ……」
リュミエールとアストリアは少し疲れ気味なようだ。
長い旅路のせいもあるだろう。
宿屋に急ぐのが一番だ。
「さて、巻き込まれても面倒だ。行くぞ」
「は、はい……」
「分かった」
俺達は戦いに巻き込まれないように少し脇にそれて進む。
それからどこがいいのかと宿を探し始める。
「どこか行きたい宿とかあるか?」
「私は別に……」
「僕も特に。あ、シュタルがいればいいよ?」
「そうか。では……折角だ。それなりの所にしてみるか?」
「いいんですか?」
「いいの?」
「ああ、長旅で疲れただろう。たまにはそういうところでもいいと思う」
俺は2人にそう言って、近くに歩いていた、少しごつめの魔族の男に声をかける。
「なぁ、少しいいか?」
「あん? いいだろう。おれに勝ったら……時間をすこしくれてやろう」
「は?」
「そら! 行くぞ!」
魔族の男はいきなり何か言ったかと思うと、俺に襲い掛かってきた。
ただ、その動きはのろく、カタツムリが止まることもできそうなほど。
俺は彼の手をそっと掴んで止める。
「まだやるか?」
「く……貴様……やるな。それだけ強いのであれば仕方ない。おれで分かることなら答えよう」
「では……」
俺がそう言うと、邪魔が入る。
「おうおう。お前……中々いい強さしてんじゃねぇの?」
そう言って来る魔族はいつぞやに戦った魔族の様にかなり筋肉質な体をしている。
俺は面倒に感じて黙った。
しかし
「……」
「ちょっくらおいらとも戦おうや」
「断る」
「あん? おいらの拳が受け取れないってか?」
何だ拳が受け取れないって。
初めて聞いたぞ。
しかし、俺は魔族ではない。
もしかしたら、魔王城の付近ではこういったことがあるのかもしれない。
他の町ではこういったことはなかったので、問題ないとは思っていたんだけれど……。
仕方ない。
「いいだろう。さっさとかかってこい」
「おいらの一撃! 岩すら砕くぞ!」
奴は拳を振りかぶり、街中でもあるのに周囲をまとめて吹き飛ばしそうな威力で攻撃を放って来た。
俺は周囲のことを考え、やつの拳を受け止めた。
ズン
「う、うそ……だろ……」
「今目の前で起きたことくらいは理解しろ。それとも、貴様の拳、握りつぶしてからにして欲しいか?」
「ひ! いででででででで!!??」
「ほら。まだやるのか?」
「すいませんでしたぁ! 謝る! 謝るからもう許してくれ!」
「そうか」
俺は面倒に感じ、奴の手を離す。
よし。これで問題はないと思ったところで……。
「きゃはははは! いいねぇ、すっごくいいよ! 新しい四天王選ぶためっていうから来たけど……中々楽しめそうな奴がいるじゃない!?」
「今度はなんだ……」
俺が声のする方を見ると、ピエロのようなペイントや格好をした男がいた。
そいつはナイフを手に持っており、時折刃を舐めている。
武器を舐めるとかバカかこいつ。
そう思っていると、奴は何も言わずにナイフを振るってきた。
「きゃはは! せめて楽しませてよね!」
「断る」
俺はそう言って、奴のナイフを持つ手を握りしめる。
「いだだだだだだ!!??」
「楽しませる? 時間の無駄だ。いいから放っておけ」
「きゃはは、こっちは……」
「うるさい」
「いったいです!?」
「まだやるのか?」
「やりません、やりません! 許してくださいー!」
ピエロは先ほどまでのキャラを維持できないのか普通の口調で謝ってくる。
「ふぅ……これでさっさと……」
「へいへいへいへいへい! 俺のクラブも受けていって欲しいもんだがな!」
そう言って来るのは両手をカニのハサミの様に変化させた者だ。
俺は頭を抱える。
「いつまでこの絡みループは続くんだ」
それから襲い掛かってくる連中を黙らせるのに1時間かかった。
他の2人はその間近くのベンチで何か食いながら遊んでいたらしい。
全く……。
俺は2人の元に行こうとして、女性に声をかけられる。
「お前か、城下町で荒らし回っているという奴は」
「は?」
俺は振り返ると、そこには、今までのやつとは違う圧力をした者がいた。
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