第113話 宿
「誰だ。お前は」
俺はこちらを推し量るような視線を向けてくる女性に向き直る。
彼女は足首まで届くほど長い青い髪。
スラリと伸びた体躯は鍛え上げられているのが分かる。
彼女は両手を前に持ってきて破顔した。
「そんなに怖い顔で見ないで? 別に戦おうと思っている訳じゃないから」
「そうか。で、一体なんのようだ?」
「簡単よ。あなた、今度の武闘大会に出ない?」
「
「ええ、今魔王軍は強い人を求めている。あなたの様にね」
「四天王の募集もしているのだったか?」
「……ええ。それも……後3人必要なの」
「3人も殺されたのか?」
その内2人を殺したのは俺だが、一応問うてみる。
彼女は少し苦々しい表情を浮かべて、答えてくれた。
「ええ、魔王様の命令を無視して勝手に行った挙句……死んだのよ。全く、困った連中。ただ、そんなあいつらでも、強さは圧倒的だった。だから、逆らえる連中も少なかったの。でも、そんな連中でも死んでしまえば、人間が攻めてくる。それは……なんとしても防がなければならない。だから、あなたの様に強い人を探しているの」
「ではそのまま魔王の元に俺を案内してもいいのでは?」
「それはできないわ」
「なぜ?」
「大会で力を示さなければ他の者が納得しない。それをせずに四天王にしても、どうせ四天王になった後に力を示さなければならない。どうせ示すなら大会でやっても一緒でしょう?」
「なるほどな。分かった。いいだろう。元より大会には出る予定だったからな。気にするな」
「そう。邪魔したわね。貴方と一緒に働けるように期待しているわ」
彼女はそう言って優雅に
俺はそんな彼女を見送り、それからアストリアとリュミエールの元にいった。
2人はのんびり近くのベンチで談笑している。
「お前達。ずいぶん楽しそうだな」
「あ、終わったの? お疲れ、早く宿にいこう」
「シュタルさん。お疲れ様です。怪我はないですか?」
「そんなことある訳ないだろう。だが……こうやってのんびりしていてもまた喧嘩を売られそうだ。と、そうだ」
俺は思い出し、そこら辺に転がっている魔族を起き上がらせる。
「おい」
「ひ! な、何でしょう……」
「ここ辺りで高くても問題ない。いい宿を探している」
「はぇ……や、宿?」
「そうだ。どこかいい所はないか探して話を聞こうとしたらお前らが喧嘩を吹っ掛けてきたんだ。それくらいは答えてもらうぞ」
「い、いやぁ……あっしは地方から出て来たばかりですので……」
「……ほう。覚悟はできているのだろうな?」
「ま! 待って下さい! 大丈夫です! ちゃんと紹介しますから!」
そう言って彼は他に倒れている者達に声をかけていく。
「お、おい! 助けてくれ! このままじゃ殺される!」
別にそんなことをする気持ちはないんだが……。
まぁ、それだけ真剣に聞くという気持ちがあるのならその方が楽でいい。
それからしばらくして、転がっていた者達から聞き出した宿に向かった。
「ここらしいな」
「ここですか?」
「ここ?」
俺達の前にはすごく……大きな屋敷と思える程に大きな建物があった。
正直、普通の街であったなら、領主の館。
そう言われてもなんら不思議ではない。
「とにかく入ろう」
俺達は中に入って行くと、そこでは、黄金で
練度がとてつもなく高いという事が分かった。
「いらっしゃいませ。当館のご宿泊ですか?」
「ああ、武闘大会が終わるまで泊まろうと思っている」
「畏まりました。何部屋ご希望ですか?」
「2部屋だ。いいか?」
「はい」
「いいよ」
「承知いたしました。お調べさせて頂きます」
そう言って受付は台帳を調べ始めると、少し怪訝な顔を浮かべる。
「申し訳ありません。その期間ですと、かなり混んでいまして、3人ご一緒の部屋ならご用意できるのですが……」
「なんだと……途中で部屋を代えてもいい。それでもないのか?」
「はい……なにぶん今回の武闘大会はかなり注目度も高いので……」
「そうか。分かった。少し相談する」
「畏まりました」
俺は2人の元に近付くと、2人はあっけらかんとした感じで話す。
「私は……それでもいいですよ」
「ボクも気にしないよ。もう……見られちゃったんだし……」
「……そんな表情をするな。だが、それでいいならいいか」
別に俺だけ他の宿にしてもいいし、別に『
俺はそれから宿を取り、3人で部屋に行く。
部屋の中はなるほど、確かに桁違いにすごく豪華な場所だった。
天井からはシャンデリアがぶら下がっていて、テーブルもこれ1つで一体いくらになるのだろうか。
部屋の中には食事もおいてあり、腹が減ったら好きなだけつまんでもいいということなのだろう。
「すごいな」
「ええ! 私、こんなすごい所初めて泊まります!」
「ボクも……王都で泊まった時位だよ」
そんなことを話しながら、夕食を食べ、風呂に入り寝る時間となる。
「よし。では俺はここで……」
ヒシ
「ん?」
俺は2人にそう告げて部屋から出ようとすると、リュミエールとアストリアにそれぞれ両手をつかまれる。
「一緒に寝ましょう? シュタルさんもお疲れでしょうから」
「一緒の部屋に泊まるって言ったんだよ? シュタルは逃げないよね?」
2人は、離してくれる気配は
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