第85話 オリハルコンゴーレム
「どうした? 強くなりたいのだろう? 死んでもいいのだろう? 短期間で強くなりたいのなら、それくらいの事はしないと意味はないぞ」
「分かった。ボクは何をしたらいいの?」
「ではまずは奥に行くぞ」
「奥……階層主の所に行くの?」
「そうだ」
「分かった」
俺達は3人で階層主の場所に向かう。
ただその前に……
「『
俺は出来るだけ対象範囲を拡げて、『
「………………よし。いないな」
「今何をしたの?」
アストリアが不思議そうに聞いてくるので答えてやる。
「ラビリスの街に【魔陣】たちがいないかと思ってな。確認していた」
「ここから分かるものなの?」
「俺は最強だぞ? 当然分かる」
「……そんな」
アストリアは信じられないと言った顔をしているけれど、リュミエールはそんな彼を微笑ましく見ていた。
「大丈夫ですよ。アストリア様。すぐに慣れます」
「そんな……本当?」
「ええ、私もすぐに慣れたので」
「流石光に巫女だね」
「それほどでも」
俺達はそんな事を話しながら進み、30階層主の扉をくぐる。
部屋の広さは縦横奥行き30m四方はあり、かなりの大きさを誇っていた。
そして、その部屋の中央には、この部屋の階層主であるオリハルコンゴーレムが直立している。
奴は高さ3m程。
全身をオリハルコンで固めていて、剣の攻撃はもちろん、魔法による攻撃にもかなりの耐性をもつ。
しかも、それだけでなく自身の小型の分身を操作し、周囲にいる者を襲わせるかなり強い敵だ。
「よし。ではアストリア。1人であいつを倒せ。死んでもいい。俺が復活させてやる」
「え……え……? ひ、1人で?」
「そうだ。安心しろ。勝てるまで何度でも復活させてやるからな」
「え……ええ……」
「いいから行け」
「わわ!」
俺はアストリアの背中を押し、少し前に進ませる。
「『
それから、俺は『
******
***アストリア視点***
「ちょっと!? これどういうこと!?」
ボクは訳が分からず後ろにいるシュタルに問い詰める。
でも、目の前には強力な『
そんなボクを
「さっきも言っただろう。目の前のオリハルコンゴーレムを1人で倒せ」
「無理だよ! ここを突破した時も結構ボロボロにされたんだから! ボクが出来るのは小型のゴーレムの相手位だよ!」
「そうか。では今から1人で奴を倒せるくらいまで強くなれ」
「むちゃくちゃな……」
「急いで強くなりたいのなら。それくらいの事はして見せろ。そら。来ているぞ?」
「!?」
僕は慌てて横に飛ぶと、そこにはオリハルコンゴーレムの拳があった。
そんなボクが死ぬかもしれない状態になっても、シュタルは動く気配を見せない。
こうなったら……。
「分かったよ。やってやる。やってやるよ! 食らえ!」
ボクは勇者のみがもつ事を許される聖剣を抜き放ち、オリハルコンゴーレムに叩きつける。
ガギィン!
聖剣は流石の固さを誇っているから欠けることはないけれど、奴には少しもダメージを与える事が出来た様子がない。
「クソ! これならどうだ! 『
一緒にダンジョンを潜ったテンダーに教えてもらった魔法だ。
これでなら少しはダメージを与えられるはず。
『
「そんな……どうしたら……」
ボクが絶望感を味わっていると、後ろからシュタルに声をかけられる。
「アストリア。後ろから来ているぞ」
「!? ぐぅ!」
ボクはいつの間にか後ろにいたミニゴーレムに頭を殴られて地面に倒れる。
「つぅ……ぅ……」
「おい、逃げないと死ぬぞ」
「! うあ!」
ズン!
ボクの頭の真横を奴の足が踏み抜き、地面が揺れる。
急いでそこから逃げ出そうとして……。
ゴシャ!
ボクの頭は奴に潰されてしまった。
「あ……」
ボクの体が倒れる。
そう思ったけれど、数秒もしない内にボクの体を
「……あれ? ボク……生きてる? でも、勇者のスキルは使った感じは……」
「アストリア。気をつけろ。まだ敵はいるぞ」
「へ? あぶ!」
ボクは少し戸惑っている間に、オリハルコンゴーレム殴りつけられた。
そして、壁の端まで吹き飛んでしまう。
全身が痛い。
今にもバラバラになってしまいそうだ。
訳が分からない。
でも、ボクは……ボクはあいつらに勝つって決めたんだ。
だから、これくらい厳しい戦いでも、勝って見せなければならない。
「ぐぅ……うわああああああああ!!!」
ボクは自分に活を入れて何とか起き上がる。
そして剣を握りしめて、奴に向かって突撃した。
「食らえ! ごふ……」
しかし、ボクの攻撃は届かず、またしても奴に殺されてしまった。
それから、僕は何度も……何度も
殺されたと思ったらまたすぐに復活して、そして、すぐにオリハルコンゴーレムとの戦闘になる。
一体どれほど続けているのか、感覚がなくなってきた。
何日、何週間、何か月、下手をしたら何年も戦っているような気さえする。
でも、ボクは今まで少しも奴を傷つけることが出来なかった。
「どうして……」
どうしたらいいのかぼんやりとしながらオリハルコンゴーレムの攻撃を避ける。
もうずっと奴の攻撃をみてきた。
もしかしたら目を瞑っても避けられるかもしれない。
でも、こちらの攻撃が一切通らないのだ。
本当にどうしたらいいのだろうか。
そこに、シュタルから声をかけられる。
「集中しろ。敵の動きを見切り、そして、どこなら攻撃が通じるか考えろ。お前なら出来る。今までずっと戦って来たのだろう?」
「……集中……分かった」
ボクは目の前の奴に意識を集中して、動きをこれまでよりも深く、より深く観察する。
そして、拳を振り上げた時の、
「そこ?」
ボクは奴が振り上げた拳を間一髪で避け、そのまま脇を切りつける。
バギン!
すると、奴の腕は面白いほど簡単に切り離された。
「やった……ボクでも……出来た」
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