第105話 野暮用

「シュタルー!」

「アストリア。ミュセル達には渡して来たか?」

「うん! 2人ともすっごく美味しそうに食べてたよ!」

「そうか。それは良かった」


 俺は万が一のことを考えてリュミエールの側にいた。


 しかし、それは杞憂きゆうだったようで、問題なく魔族の人達は優しかった。

 それは、辛い環境にあるから、こうやって少しでも周囲と協力しなければならないからだろうか。


 とにかく、何事もなく多くの人が腹いっぱいになるまで食べていた。


 俺はその様子を見て、アストリアに後を任せる。


「アストリア」

「何?」

「俺は少し野暮用が出来た。リュミエールのこと。任せたぞ」

「うん? 今から? そろそろ日も暮れるよ?」

「ああ、すぐに帰ってくる。心配する必要はない」

「べ、別にボクは心配なんかしないよ」

「そうか。ではこちらの事は任せたぞ」

「え? 本当に? 分かったよ。いってらっしゃい」

「ああ」


 俺は中央広場に彼らを残して、村の外を目指す。


 村の外の少し離れた位置には、多くの者達が夜が来るのを隠れて待っているようだった。

 俺は夜が来る前に先手を打つ。


「さて、お前達。一体この村になんの用だ?」

「……」

「出てこないのか? いるのは分かっている。それとも、殺されないと理解出来んか?」

「……誰が……誰を殺すって?」


 そう言いつつ森から出て来たのは先日殺した兵士よりも階級が高そうな鎧を着た男だった。

 男の周りにはかなりの者がいて、そいつらは俺を囲んでいた。


 俺はまずは話をしようと思い、奴らの為すがままにしようとする。


「お前達があの村を攻めるというのなら、俺がお前達を殺すだけだ」

「はっ! たった1人でよく言うぜ! 大人しく逃げておけばすんだのによ」

「なんだ? 逃げたら見逃されたのか?」

「いいや? 地の果てまでも追いかけて殺すがな。ついでに……あの村も使えそうな奴は連れて行く。最近減ってきているからな。丁度いい」

「減っている……とはどういう事だ?」


 嫌な感覚に囚われながらも、一応聞いておく。


「はっ! 決まってんだろう? 俺達のおもちゃに決まってる。総隊長が張り切ってよく壊すんだよ。だから……な? 調達が必要なのさ」

「そうか……お前達……国境第4警備部隊で間違いはないな?」

「良く知ってんじゃねぇか。誰に喧嘩売ったか……教えてやる」

「よく言った。その言葉……決して忘れるなよ?」

「は?」

「『氷結領域アイスゾーン』」


 俺は魔法を瞬時に起動し、奴ら全てを一瞬で氷つかせる。

 周囲にいる敵の数は全て把握しているし、実力も大した事はないことは分かっていた。


 そして、隊長だけは頭を出しておいて、喋れるようにしておく。

 1つ……聞きたい事があったからだ。


「は……な、何が……」

「貴様らが喧嘩を買ったのだろう? これがその喧嘩の答えだ」

「ひぃ! て、てめぇ! 俺達に盾突いくとどうなるか分かっているんだろうな!?」

「ほう。ではどうなるのか。教えてもらおうか」

「俺達がここに来たことは本隊に既に伝わっている! そして、俺達が帰って来なかったら……。総隊長含め、他の隊員達がここを踏み荒らすぞ!」

「ほう。それは一体何人いるんだ?」

「そんな事も知らないのか!? 俺達は3000人以上もいるんだ! いくら貴様が強いと言ってもそれには勝てねぇ!」

「なるほどな。情報提供感謝する。ついでに、貴様らの拠点に案内してもらおうか」

「は? そんなことする訳ねぇだろうがっああああああ!?」


 俺は凍りつけになっているやつの両手を切り飛ばす。


「ほら。次は両足を切り落とされたいか?」

「ふざ! ふざけ! そんなぎいいいいいい!?」


 俺はうるさいとばかりに両足を切り飛ばす。


「さて、まだやるのか?」

「て、てめぇ。後悔しても知らねぇぞ」

「そうか。ではな」


 俺は奴の首を切り飛ばし、命を断つ。

 そして蘇らせる。


「は……ここは……」

「よう。お前が案内したい。そう言うまで何度も……何度も蘇らせてやる。さて、後何回耐えられるかな?」

「ひぃ! う、嘘だろう!? そんな……そんな回数蘇生なんて出来る訳!」

「お前の体で試してみるといい。何回お前の精神は持つのか……楽しみだな?」







 俺はそれから数回殺して蘇らせてを繰り返し、奴がもう許してくれと言うまで続けた。


「それじゃあ……案内したいか?」

「はい……許して下さい。もう……言います。案内します……から」

「よし。では行くぞ」

「え? は、はいいいいい!!!???」


 俺は隊長を掴み、森の方へ走る。


 凍りつけにした連中は放置だ。

 あのままでは決して出られないし、もし出そうになったら命を奪うようにもしてある。

 あのままの姿で後悔をするといいだろう。


 俺は高速で走り、その日の内に国境第4警備部隊の本隊がある所に到着した。


「ここがお前達の本拠地か?」

「はい……そうです……」


 周囲は森に囲まれ、位置的にはお互いの国の丁度境い目だろう。

 そんな森の中に、砦が築かれていた。


「分かった。では……お前はもう用済みだな」

「はえ?」


 俺はそのまま隊長の首を切り飛ばして、その辺に捨てる。

 こいつらを消した後は魔物が綺麗に処理してくれるだろう。


 俺は……まずは囚われている人を助ける所から始めなければならないだろう。


 俺は、次にやるべきことを考えて行動していく。

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