第53話 魔法陣
ドス!
俺の背中を何かが貫き……かけて皮膚で止まる。
そのまま振り向きざまに剣を抜き放ち、それの首を飛ばした。
「驚いた。何もいないと思ったが……まさかこんな所に隠れているとはな」
「シュタルさん! 無事ですか!?」
「ん? ああ、問題ないぞ。
俺は殺した魔物を見る。
それは体長1mくらいの茶色いトカゲだった。
そいつは鋭い爪を持っていて、それで俺を切り裂こうとしたらしい。
「すいません……私が魔法陣を見ていたばかりに……」
「気にするな。お前の安全は俺が守ると言っただろう? 俺はお前を何があっても守り切って見せる。それが俺がやるべきことだからな」
「シュタルさん……」
リュミエールがちょっと嬉しそうな、悲しそうな顔で俺を見ていた。
「さて、リュミエール。さっさとこの魔法陣を壊すぞ」
俺は剣を振りかぶり、陣を物理的に壊そうとする。
すると、リュミエールにとめられた。
「あ、待ってください!」
「どうしたんだ?」
「この魔法陣何ですけど、強引に壊そうとすると爆発を起こすみたいなんです」
「なるほど、それも防げばいいわけだな? よし」
俺はそう言って陣を壊そうとすると、彼女がまたしても止めてくる。
「ま、まま、待ってください! 私に、私に任せてもらえませんか?」
「リュミエール……お前が解けるのか?」
「分かりません……ここまで高度な物は習った事がないので……。でも、私でも出来るってみせたいんです。ずっと……ずっとシュタルさんに守られているだけでは……嫌なんです。王城の時の様に……」
「気にするな。それは俺がやるべきこと、と決めただろう? 気にしなくてもいいんだぞ?」
「私が気にするんです! なので……。これは私にやらせてもらえませんか?」
「なるほど、そこまで言うのであれば仕方ない。やってみるといい」
「! ありがとうございます! シュタルさん!」
それからリュミエールは魔法陣の上に行き、じっくりとその魔法陣の
俺はいつでも彼女を救えるように近くで見守る。
「……」
「これが……こっちに対応していて……それで、こっちが……どこ? こっち?」
リュミエールはじっと……食い入るように魔法陣を見つめ、ああでもないこうでもないと
俺はそれをのんびりと見つめ、彼女の成長を期待する。
俺の護衛ではなく、パーティメンバーになって欲しい。
そんな事を思ってはいない。
けれど、ただこうやって彼女がやりたいと言った事はやらせてあげたいのだ。
どことなく親目線になっているのかもしれない。
そんな事を思いつつも更に2時間。
リュミエールはずっと集中を続けていた。
いつもならこんな時間であれば眠っている時なのに、ここまで集中していられるとは。
彼女の集中力は目を見張るものがある。
そう思っていた。
「あ」
ガギン!
リュミエールの不穏な声と共に、魔法陣から異音が聞こえた。
俺は速攻でリュミエールの側に行き、彼女を抱えて魔法を張る。
「『
魔法陣を囲むようにして『
ドォオオオオオオン!!!
「……」
「……」
ただ、幸いなことに、『
「大丈夫か。リュミエール」
「私……私……。そんな……」
しかし、リュミエールが精神的に無事ではなかった。
「リュミエール。心配するな。お前は頑張ったんだ」
「でも……でも……私……」
それから俺が何を言っても彼女は顔を覆って首を振るばかりだった。
俺はそんなリュミエールをしかりつける。
「リュミエール。いつまでそうしている」
「……」
「リュミエール!」
ビクッ!
俺が大声を出すと、彼女は跳ねたように少し飛び上がった。
それから俺は彼女に優しく話かける。
「リュミエール。失敗してしまったな?」
「はい……私……私……」
「だが、それは失敗ではない」
「は……え? でも……私……」
「考えてもみろ、お前が失敗した時にどの様な被害が起きた?」
「……シュタルさんのお陰で……何も起きていません」
「だろう? なら、それは失敗ではない、俺が魔法陣を壊しただけだ。ちょっと強引なやり方でな」
「そんな……」
「だがリュミエール」
「……はい」
「お前にはまた魔法陣を解いてもらわなければならない」
「どう……して……ですか」
リュミエールが信じられないという目を俺に向けてくる。
「感じないか? 恐らく、さっきの陣が起爆したことで、新しい魔法陣が起動したらしい。この村の違和感はなくなっていないし、さっきは何も感じなかった所に新しい違和感が生まれている」
「そんな……こと……あるんでしょう……か?」
「実際にそうなっている。だから、お前が魔法陣を正しく解いてもらわなくてはこの村に安全は訪れない」
「私……が……解く……? 失敗したのに?」
「そうだ。リュミエール。お前だけが頼りだ。だから、今回の件。お前に任せてもいいか?」
「え……シュタルさんが……私を頼って下さるんですか?」
「そうだ。俺は魔法陣を強引にしか壊したことはない。だから……ここはお前の力が必要になるんだ」
俺はそれから黙り、彼女を見つめ続ける。
彼女は彼女で1人ずっと考えているのか、じっと……どこかに視線を送り続けていた。
少しして、覚悟が決まったのか真っすぐに俺を見る。
「シュタルさん。分かりました。私……もう一度やってみます。今度こそ……。今度こそ確実に魔法陣を解いて見せます!」
「よし。その行きだ。行くぞ」
「はい!」
俺達は、新しい違和感がある場所に向かって行く。
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