第3話 護衛

「ふぅ……こんなものか」


 俺はあれから数回ファイアードラゴンをよみがえらせた。


 奴の近接攻撃、ブレス、逃げる移動速度などほぼ全てを上回っている事を確認した。


「もう……満足ですか?」


 リュミエールは暇をしていたのか、転がっていたドラゴンの爪で絵を書いていた。

 中々上手い。


「ああ、十分だ。素材もロープで結んだし、街に帰ろうか」

「それ……引っ張っていくんですか?」

「問題あるか?」

「いえ……何でもないです」


 俺はロープを引っ張りながらリュミエールと一緒に街に向かう。

 ちなみに、ドラゴンの心臓を拳で殴ってとどめを刺したので体は綺麗なままだ。

 これで素材も全て有効に使える。


「それで、街まで案内すればそれで問題ないか?」


 俺は最強にならなければならない。

 その為に彼女の様な足手まといの世話をすることは出来ない。


 しかし、彼女は悲しそうに話す。


「そうですか……では……私はまた……奴隷でしょうか……」

「なぜだ? 街まで送るんだ。それで問題ないと思うが」

「考えてみてください。街に……エルフってどれくらいいますか?」

「ああ……。確かに、これから行くところでは1人も見たことがないな」

「それに私はこんな服です。街でおいていかれたら、すぐに捕まってしまうと思いませんか?」

「では金をやろう」

「私は何もしていません。そんなお金をもらうようなのはエルフのプライドとしても許せません」

「そうか……しかし……」


 それならばどうしたらいいのだろうか。

 町に連れていく。

 それは俺もこれから帰るから問題ない。


 しかし金を受け取らないとなると……。


「何か職を斡旋あっせんしてほしい。ということか?」

「え、あー普通はそうなりますか」

「他に何がある?」

「えーあーうー……私を連れて一緒に旅をしてくれませんか?」

「旅……?」


 なぜ俺がそんなことまで?

 それに俺は最強になるという目的がある。


 彼女を連れたままでそれが出来るとは思わない。


「私……どうしても勇者様に会いたいんです! いえ、世界を救うために会わなければならないんです!」

「大変だな。頑張ってくれ。流石にそこまでは出来ん」

「でも……シュタルさんだったら……最強であるシュタルさんだったらそれくらい出来ると思うんです!」


 彼女は俺にぐいっと近づいて来ながらそう言って来る。


 俺はしっかりと彼女に答えてあげた。


「確かにそうだろう。最強である俺にかかればそれくらい出来る」

「では!」

「だが、俺は最強を目指す旅をしている。その旅についてくるという事は……リュミエール。お前も最強を目指す。そう考えていいのか? 足手まといはいらないぞ?」

「それは……」


 ここまで言えば彼女もきっと諦めるだろう。

 何の理由があるのか知らないが、勇者にでも魔王にでも会うといい。


 ……でも勇者か……魔王を倒す存在……という事はやっぱり強いのだろうか。


 俺の表情を読んだのか、リュミエールが口を開く。


「あの、シュタルさん」

「なんだ」

「私について来て下されば……勇者様を紹介しますよ?」

「別に勇者を紹介されても……」

「戦ってもらえるように私も説得しますよ?」

「……リュミエール……お前は勇者と何か関係があるのか?」

「はい。あります。私は……光の巫女です」

「……なんだ? それ?」

「え……、決まっているじゃないですか! 勇者の側にあって、魔王を倒すと言われている存在ですよ!」

「ふーん、で?」

「ふーんて! そんな! そんな!? 私達の故郷でもっともいい待遇なんですよ!? なのになのでそんな反応何ですか!?」

「だって俺知らないし。勇者がいるよー位しか聞いたことないから」


 俺は最強であることが大事なんだ。

 勇者のえ物とか興味はない。


「そん……ふざ……もう……でも、いいですか?」


 なんとか怒りを収めたのか、リュミエールが続きを話す。


「それで、光の巫女である私が、勇者様に貴方と戦ってくれるように話します! だから……一緒に……そうですね。護衛として旅をして頂けませんか?」

「しかし……足手まといはな……」

「ま、待ってください!」

「なんだ?」

「考えてみてください。シュタルさんは最強になりたいんですよね?」

「そうだ」

「それであれば、足手まといを……いえ、護衛と言ってください。護衛を連れて守りながら旅をする。それをしながら強い敵と戦って行くことが出来れば、より最強に近付いていくとは思いませんか?」

「それは!?」


 俺は衝撃を受けた。

 確かに、彼女の言う通りだ。


 今までは自分をいかにより強くすることしか考えて居なかった。

 けれど、彼女の発案は、俺にデメリットを負わせるものだ。


 けれど、それが出来た時、確かに最強へと一歩進めるような気がする。


 俺は彼女に向かって右手を差し出した。


「リュミエール。これからよろしく頼む。いい足手まといでいてくれ」

「シュタルさん……いい足手まといって何ですか。護衛って言ってください」


 彼女はそういいながら、軽く笑って俺の手を握り返す。


 これが……俺達の色々な悪いやつをぼこしに行く物語の始まりだった。

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