第9話 至高の剣
***〈至高の剣〉サイド***
「いやーあいつを追放してすぐにセントロの領主様に誘われるとはな」
「僕達も運がついに向いて来ましたね」
「本当に、私たちもこれで適正なクエストが受けられます」
3人の男女はセントロの領主の食事会に呼ばれていた。
3人の前に座っているのはセントロの領主だ。
自慢のヒゲを整えた40代の男が口を開く。
「適正なクエストとは、〈至高の剣〉ともあろう方々であればどんなクエストでもクリア出来る。最強のパーティーだ。と聞いていましたが?」
それに応えるのは盾使いであるバスラ。
彼は黒髪を
「いえ、我々が最強だなんてそんな。しかし、領主様の期待に相応しい依頼をこなして見せましょう」
それに続くのは魔法使いのセルジュ。
彼は紫のローブをまとった痩せた男で、茶色い髪を肩口で切りそろえている。
「ええ、我々にかかれば、ほとんどの依頼をこなせると確信しています」
彼の言葉をしめるのはヒーラーであるメリア。
彼女は修道服を着ている女性で、くすんだ金髪を伸ばしていた。
「領主様のご依頼であれば、全力で向わせて頂きます」
「貴公らの意気込みを大変嬉しく思う。だがまずは食事にしないか。もてなしも出来ない領主と言われては
領主の言葉に、〈至高の剣〉のメンバーは顔を見合わせてすぐに頷く。
「もちろんご一緒させて頂きます」
「そうかそうか。ではこちらへ」
彼らは食堂へ行くと、そこには
「これは……食べきれないな……」
「ええ……数日に分けて食べたいくらいです」
「こんなに食べちゃったら太っちゃう……」
「はっはっは! そう言ってもらえると準備したかいがあったものだ。それではまずは……」
執事やメイド達が彼らに飲み物をさっと準備する。
その手際は流石領主の執事たち、とても
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
4人はその飲み物を飲み干し、食事をそれぞれ望むように取る。
暫く楽しい話をしていたが、メイアが酔ったからかゆっくりと床に倒れる。
「おいおい、メイア。いくらうまいからってそれは失礼だぜ」
バスラがそう言うけれど、メリアは反応しない。
「全く……仕方ない。セルジュ、連れていくぞ」
「……」
「おい、セルジュ……お前もかよ」
バスラはそう言ってセルジュの方を向くと、彼もテーブルに向って倒れ伏している。
「はっはっは! お気になさらず、バスラ殿、貴方もお疲れでしょう。今一度休まれるといい」
「しかし……」
「いいから、やれ」
「は?」
ゴキっ
バスラが何を? と聞く前に、彼のアゴが打ち抜かれて、彼は白目をむいて崩れ落ちる。
そんなバスラを見て、領主は近くにいる執事を怯えた表情で見た。
「こ、これでよろしいのでしょうか」
「ええ、〈至高の剣〉……Aランク冒険者パーティーと聞いていましたが……
「わ、分かりません。我々の話を受けた時には既に3人だったと……」
「まぁいいでしょう。1人減った程度でそこまで戦力は変わりません」
執事はそう言って、どこかから取り出した紫色の種を彼らの口の中に放り込む。
「うっ! うぐぅ!」
「ごっは! がはっ!」
「うええええ!!!」
3人とも拒否反応を起こして吐き出そうとするが、食べた物が出てくるばかりで種は出てこない。
「よしよし。これで植え付けられましたね。ここまでやればこの街は問題ないでしょう。ウリル」
「は」
執事の元に
彼はタンクトップのシャツをまとい、筋肉を見せつけるような格好をしていた。
髪も黒髪を角刈りにし、顎は四角くがっちりとしている。
「後の事は任せます。私は他に行かねばならないことがありますので、あまり派手にやってはいけませんよ。いいですね?」
「畏まりました。彼らを使い全ての人間共を根絶やしにします」
「ひぃ!」
そう言うのは領主だ。
命を助けると言われたから従っていたのに、こんなことになるなんて。
しかし、それはウリルと呼んだ執事が否定する。
「ウリル。現状維持をしなさい。正体がバレそうにならなければ殺してはいけません。いいですか?」
「なぜですか? こんな雑魚共はすぐに潰してしまえばいいのです」
「それではいけません。ちゃんとこの国を滅ぼせるようにしてからでないと。ああ、領主や他の皆さん。他の誰かに言おうとしても無駄ですよ。もしもそんな事をしようとしたら、彼らも飲んだ種が貴方方を内側から食い破りますからね」
「……分かっています」
「よろしい。ウリル。いいですか? 絶対に私の命令があるまで何かしてはいけませんよ? 私は王都に向かいます。任せましたよ?」
「はい。ミリアル様」
「ええ、それでは……」
ミリアルと呼ばれた男は、背中から紫の翼を生やして窓から飛び立とうとして、止まる。
「ウリル。私の命令は覚えていますか?」
「はい。正体がバレそうになるまで現状維持。です」
「良く出来ました。では私はこれで」
そう言って、ミリアルは夜空に飛び立つ。
ウリルはそれを見て口を開く。
「つまり、正体がバレそうになってしまえば、殺してもいい……と」
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