第123話 ライデン

『それでは遂に決勝戦! ここまで勝ちあがってきた2人はある意味、当然と呼ばれても仕方のない強さを誇っているのかもしれません! それでは入場して頂きましょう!』


 実況はそういって叫んでいる。


 俺は今は舞台のそでにいて、呼ばれるまではここにいる。

 という演出になっているらしい。


「シュタルさん! シュタルさんならきっと勝てます! 頑張って下さい!」

「そうだよ! シュタルが負けるわけないから! ぶちかましてきて!」


 俺を応援してくれるのはリュミエールとアストリア。

 俺はその声に答える。


「ああ、任せておけ。今回の敵……恐らく過去最強だろう。だがそれでも、真の最強は俺だ。だから勝つ」

「はい!」

「うん!」


『まずはこちら! 全身黒ずくめの優男! これまで試合。決勝トーナメントからずっと座ったまま戦い。そして勝利を続けてきた男! 毎日が最高だと声高こわだかに叫ぶ彼を止めることが出来る者はいるのでしょうか!? その飄々ひょうひょうとした態度からは想像もつかないほどの強さを持ち、今だ限界を見せないその姿は新たな四天王!? それが今この場で決まる! さぁ! 登場してください! ライデン!』

「わああああああああああああああああああ!!!!!」


 実況が言うと、俺よりも先にライデンが舞台の上に上がっていく。

 そして、観客には笑顔で手を振り、サービスを振り撒いていた。


『そして対するはこちら! こちらは予選から一歩も動いていません! どんな敵が来ようとも! どんな攻撃が来ようとも! 決して逃げることもなく、正面から受けて砕きつぶす! それがこの最強の男! 彼に勝つことが出来るのか。それが今日ここでハッキリする! さぁ! 登場してください! シュタル!』

「わああああああああああああああああああ!!!!!」


 俺は実況の言葉にあわせて舞台に出て行く。

 ただし、観客にサービス等はしない。


 俺は戦いにきているので魅せる為にいる訳ではない。


「よう。やっぱりこうなったな」


 ライデンはそう言うと、俺の目の前で座る。

 胡坐あぐらをかき、片ひじをひざの上に乗せてその上にあごをのせた。


「ほう……俺の前でそれは……いい根性をしているな?」

「当然だ! 俺は最高だからな! いくらお前が強いといっても、俺に勝つことはない!」


 奴は自信満々にそう言ってのける。


 俺は思わず笑ってしまう。


「くく、中々おもしろい奴だな。こんなところではなく、もっと違ったところで出会ったらおもしろくなったのではないかと思うぞ」

「まぁな。だが、そんなことはいい。いいから……やろうぜ?」


 奴がそう言うと同時に、実況が試合の合図を叫ぶ。


『それでは、始めて頂きましょう! レディ……ファイト!』


 俺は実況が叫ぶと同時に、拳を振り抜き、拳圧を奴に飛ばす。


 パン!


 しかし、奴は俺の攻撃を打ち消した。


「ほう……やるな」

「お前もな。次はこちらの番だ」


 奴はそう言って俺と同じように拳を振り抜き、拳圧を放って来た。


 パン!


 俺はそれを叩き落とす。


「ふむ……やっぱ効かねぇか」

「当然だな。だが、まだ……挨拶すら終わっていないだろう?」

「当然」


 奴の目が光り、奴は拳を連打して振り抜く。

 そして、1秒の間に、20以上の拳圧の衝撃波が俺に向かって放たれる。


「なるほど。おもしろい」


 俺はそれを迎え撃つ様に、大きな一撃の拳圧を放った。


 ズン!


 俺の一撃は奴の連打を全て吹き飛ばし、奴に叩きつける。


「おっと!」


 しかし、奴もその威力は理解しているのか、遂に立つ。

 そして、そのまま力を込めた拳を振りぬいて来た。


 威力はかなり強く、俺の放った衝撃は打ち消されてしまう。


「ほう……やるじゃないか」

「お前さんも……ここまで出来るとはな。最高だ」

「だがいいのか?」

「何がだ?」

「立っているじゃないか」

「いやぁ、流石にお前さん相手では無理だよ。それくらいは分かる」

「そうか。では……俺はここから動かずに勝ってやろうか?」

「言うじゃねぇか……じゃあ、俺も……次は立ったまま……勝負を決めてやろうかなっと!」


 奴はそう言いながら拳を振り抜き、先ほどの数倍の衝撃波を放ってくる。


 俺はそれを打ち消すように、高威力の一撃を放ち続けた。


「うおおおおおおおお!!!」

「おらあああああああ!!!」


 お互いに気合が入り続け、その密度、威力、連射は徐々に速度が上がり続けていく。


 俺は決して譲らない。

 そして、それは奴も同様だった。


 ドンドンドンドンドンドンドン!!!!!!!


 衝撃波と衝撃波がぶつかり合い、その余波で舞台が壊れ始める。


 このまま続けていてはいずれ壊れてしまう。

 それをライデンも察したのか、漆黒の剣を抜いて遠距離から振りぬいて来た。


 シュパァ!


 俺はそれを見て、打ち消すように剣を振りぬく。


 ズバァ! 


「やるなぁ! シュタル! おれとここまで戦えるやつぁ初めてだ!」

「同感だな。俺もこれからの戦いが楽しみだよ」

「そうだよなぁ! やっぱりツエー奴と戦う時が最高に上がる! 最高になるんだよなぁ!」


 奴はテンションを上げて、剣を振る速度がこれでもかと上がっていく。


 俺も負けじと速度を上げていき、そして、やつは業を煮やしたのか何か特別な事をして来る。


「これでお前は動かざるをえんだろう! 『能力付与エンチャント:絶対切断』!」


 奴の剣の衝撃波は、それまでとは一線をかくしていた。

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