第11話 セントロの街
俺達は無事にセントロの街に辿り着く。
セントロの街に近付くと、余りに大人数だったからか止められてしまった。
「お前達止まれ! 一体それだけの数を集めて何の用だ!」
「俺達は……なんなんだろうな? リュミエール?」
「私に聞かれても困ります! 正直……色々とありすぎてなんと言ったらいいのか……」
隣にいたリュミエールもちょっと困っている。
しかし、そんな彼女の姿を見た兵士は叫ぶ。
「あ、貴方は光の巫女様ではありませんか!?」
「え? ええ、はい。そうです。私が光の巫女です」
「おお……このセントロの街に来られるとは……本当に……神はいるのですね……」
「何かあったのですか?」
「じつは……」
兵士はそれから何があったのか語ってくれた。
それを要約すると、
山に住みついたファイアードラゴンのせいで移動が制限されてかなり物流に影響が出ている。
しかも、その山の中に強力な山賊が住みついていて、騎士団としてもかなりの被害が出ていた。
この街の騎士団長も討たれてしまったらしい。
更に街の周囲で多くの魔物の被害が多発していて、それの対処に追われていて元気もないと。
うん。
これは……信じてもらえるだろうか。
リュミエールもそう思ったのか、そっと……
「あの……その内、2つはもう……解決してますよ?」
「な、何をいうんですか光の巫女様。貴方といえどそんな冗談……」
ズン!
俺は面倒とばかりにファイアードラゴンの死体を彼らの目の前においた。
「う、うわああああああ!!!」
「ど、ドラゴンだああああああ! ドラゴンが出たぞーーーー!!!」
「落ち着け。こいつはもう死体だ」
「へ……そ、そんな……」
兵士たちは動かないドラゴンの死体を槍でつんつんとつついている。
その程度の攻撃で傷はつかないので別にいいか。
「ほ、本当に……?」
「この死体をみれば分かるだろう」
「で、では、もう一つというのは?」
「その山賊は奴隷商の事だろう? この後ろにいるのは捕らえらえていた者達だ。残っていた者は全員助けたぞ」
「そんな……そんなことってあるんですか?」
「無かったら彼らはここにはいないし、ドラゴンの死体もないだろう」
兵士は未だに疑わしいのか、リュミエールに視線で確認する。
彼女はこくりと頷いた。
その瞬間、兵士が振り向き大声を出す。
「領主様に連絡だ! この街に救世主様が現れたぞ! いや! もしかしたら勇者様かもしれない! きっとそうに違いない! 今夜は祭りだ!」
「おいおい。俺は勇者じゃないぞ」
勇者を倒す者だ。
という言葉は流石に飲み込む。
「何でもいいです! ささ! 中へ! 後ろの皆さんも囚われていたのですね? それを助けるとは流石勇者様! これは祭りですよ!」
そう言われて俺達は皆中に連れ込まれた。
入ろうと思っていたのは確かだけれど、こんなことになるとは……。
俺達は街の中に入ると、出て来た時よりもどことなく空気が重たい。
やっぱりさっきのが影響しているのだろう。
「少しいいか?」
「何でしょう?」
「この街の雰囲気、流通も止まり祭りを開けるような食材はあるのか?」
「それは……しかし、こんないい情報はそうそうないんですよ! ですから出来るだけの事はしないといけないんです!」
兵士はそう必死に訴えかけてくる。
なるほど、確かに暗い表情のままではきっと良くないだろう。
この街に住む者として、譲れない何かがあるのかもしれない。
「では、
「どう……とは?」
「ここにくる途中にかなりの数を倒してな。せっかくだからそれで祭りに使ったらどうかと思ったんだ。道中に食べたが、流石に1体しか食べられなかった」
「そんな……高級品を……出してくださるのですか? いえ、でも、我々にそこまでの資金は……」
「別に無償でいい。この街に世話になったからな。それくらいはしてやろうとも」
「あ……あ……」
「あ?」
「ありがとうございますぅ!」
「おい!?」
兵士は涙を流しながら俺に抱きついて来る。
何とか肩を止めるけれど、強引に引き
「男色の趣味はない。抱きつくな」
「お礼ですぅ!」
「礼になってない」
「す、すいません! 隊長! 離れてください!」
他の兵士達が隊長を強引に引き
良かった。
「まぁいい。それで、すぐに祭りは出来るのか?」
これからの予定もあるし、ある程度は聞いておきたい。
「あ、流石にすぐには無理ですので、明日の夜までお待ちください。今関係各所に連絡を送っていますので」
「なるほど。それで、
「ああ、それでしたらわたくし共と一緒に冒険者ギルドまでお願いします」
「分かった。後ろの皆はどうしていたい? いや、いいか」
俺はそこまで考えて、一番前にいた、セレスタ……だったか?
彼女に金貨がたっぷり入った袋を渡す。
「え? 重……。こ、これは……なんでしょうか?」
「それは奴隷商から奪った金貨だ。お前達で平等に分けろ。元の場所に行くくらいの金にはなるだろう? 足りなければ言ってくれればまだある」
「そ、そんな……こんなに一杯……」
「気にするな。最強の俺は稼ごうと思えばすぐに稼げる。もう捕まるなよ」
俺はそれだけ彼らに残して、冒険者ギルドを目指す。
******
***セレスタ視点***
「ねぇ……こんなにもらってどうしよう……」
「どうしようもない。言っていただろう。皆で平等に分けろと……と」
「ええ……そうね……」
あたし達は全員で平等になるように金貨を分けた。
これだけの金貨があれば、余裕で元の場所に帰ることが出来る。
でも……。
そんなあたしの考えを見抜いたのか、一番の年長者の彼が言う。
「これからの事を考えるのは後じゃ。明日の祭りに参加してからでいいじゃろう。シュタル様も許してくださるに違いない」
「そうだな」
「今夜を楽しんでから考えよう」
「ええ……そうね……」
あたしに何か返せる物があるのだろうか。
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