第90話 守護神

***レールトン視点***


 俺は星団の牙をかばい、魔族と対峙する。


「そんで、お前らの目的はなんだ?」

「ほう……人間の癖に多少は戦える者がいるようですね」

「戦う……? 今のは挨拶あいさつと一緒だろう? 戦闘ですらない」

「……言いますね。人間風情が。戦いだと思わなかった事を後悔するがいい」


 魔族は話す気など全くなく、やはり殺して来るのがメインなのだろう。


「まぁ……その方が楽でいいか」


 奴は両手に緑色の気を集めて、何かをしてくるつもりのようだ。


 俺は万が一に備えてタワーシールドを構える。


「死になさい!」


 奴は大振りに手を振り、俺に向かって放ってくる。

 先ほどの攻撃の様に見えないけれど、何かがあることはハッキリと分かった。

 だが、それが俺に効果をもたらさないことも。


 俺はそう感じてそれを受け止めた。


「思ったより軽いな」

「な……わ、私の攻撃を受けて……そんな……」

「さて、次はこちらの番だな?」

「ふ、フン! 貴様と戦うつもりなんてこちらにはない。むしろ……貴様と出会った時の対策は既にある」


 奴はそう言いながら両手を俺以外の方に向けて振る。


「そうするだろうな……【守護神】」


 俺はスキルを発動させ、奴の攻撃を全て引き寄せる。


 奴の攻撃は元々俺を狙っていたかのように、俺に向かって飛んでくる。

 そして、それら全ては俺の鎧に当たったが、無傷で終わった。


「な……何が……」

「俺のスキルでこっちに向けただけだぜ。さて、後は……」


 俺は一息で奴に向かって飛び、そのまま首を切り飛ばす。


「ばか……な……」


 奴はそのまま地面に落ち、二度と動かなくなる。


「ふむ。そこそこの連中だな」

「さ、流石レールトンさん! どうやってそれだけの力を……」


 俺が地面に降りると、星団の牙の剣士が話しかけてくる。


「……これは俺の後悔が産んだスキルだ。戦いで仲間を失い、死にそうになるほどの思いをしたからこそ得られたもの。このスキルが……ダンジョンの時にでもあれば……な」

「そうですか……」

「ああ、だからおススメはせん。この力の代償に、大切な者を失ったのだ。お前は……まだ生きている。大事にしろよ」

「は、はい! ありがとうございます!」

「よし。お前達は他の魔物を倒して行け。今回の魔族は別格に強い。お前達は無理をして戦うな。逃げるのは恥ではない」

「分かりました! おい! お前達! 行くぞ!」

「ええ! この街は私達が守るわ!」

「当然だ!」


 星団の牙はそう言って走り去っていく。


「さて……後は……お前達か?」


 俺は振り向き、俺をわざわざ待っていた2人と向かい合う。


「ほっほっほ。人間もやはり侮れん者ばかりじゃのう」

「おで……正直、不安」

「ほっほ。まぁ……お主でも……あ奴が相手では厳しいかもしれんの。【守護神】」

「そういうお前は……【魔陣】と【剛腕】か?」

「流石じゃの。どれ、食らうがいい。『魔陣構築:ゾーン』」


 【魔陣】がそう言うと、俺の体が重たくなる。

 ただ、多少……という程度であって、そこまで問題ではない。


「『魔陣構築:ヘルフレイム』」


 ボアアアアアアアアアアアア!!!


 周囲に魔法陣が起動し、俺に向かって炎が吹き荒れる。


「【守護神】!」


 俺はスキルを使い、俺自身の防御力を高める。

 これで俺は無敵に近い、更に……。


 魔法が終わったタイミングで、スキルを開放する。


「【反射】」

「!?」


 ボアアアアアアアアア!!!


 先ほど俺を焼いた炎を【魔陣】に向かって解き放った。


 シュン


 しかし、【魔陣】は老人とは思えない程の速度で瞬時に移動し、俺のカウンターを避けた。


「年寄りなのに動けるじゃないか」

「ほっほ。まだまだ若い者には負けんわい。しかし、やはりお前は……ちと厳しいの」

「そうか? 最後まで戦ってみないと分からないと思わないか?」


 俺は奴らを挑発し、俺と戦うように仕向ける。

 魔族はプライドが高いから、こうした方が俺を目掛けて戦うようになるだろう。


 しかし、奴らは慎重だった。


「ほっほ。少し前であればその可能性も考えたんだがのう……。少し前にその考えは変わった。という訳で、お主とはおさらばじゃ」

「!?」


 俺の足元に魔法陣が展開し、そのまま俺は飛ばされた。


「【守護神】!?」


 俺はスキル複数個を強引に使う。

 己の体を強化することと、敵が俺に使ってきた魔法やスキル等を無効化するものだ。


「ここは……」


 急いで発動したが、俺は……どこか分からない場所に飛ばされていた。


「まずい……俺が居なければあの街は……。いや、シュタルがいるか? それか勇者……では足りんだろうなぁ……」


 街にいたSランク冒険者である、ヴェーリとテンダーを連れてダンジョンに潜ったまま帰って来ていない。

 それに、帰って来たとしても、今のあの子の実力では恐らく……。


 しかし、シュタルが追いかけて行ってくれたはずだ。

 彼なら……異変に気付いて対処してくれるかもしれない。


「頼んだぞ……」


 俺はそれから空高く上がり、ここがどこかを把握する為に周囲を見回した。

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