第14話 魔族
「ま、魔族……」
リュミエールが浅黒い肌の男を見てそうこぼす。
すると、その男はニヤっと笑い、棒読みで口を開いた。
「しまったーバレてしまったー……。これでは、殺すほかないな?」
最初から殺すつもりだったとでも言わんばかりの喋り方。
ここに誘った時点で殺すつもりだったに違いない。
ただ、こんな領主の館で堂々とやるとは……。
この街はすでに支配されてしまっているのだろうか。
「しゅ、シュタルさん! 逃げましょう! 魔族は無理ですよ!」
「なぜだ?」
「なぜって! 魔族は1人でも軍隊と戦える位の強さなんですよ!? だから勇者が命がけで戦うんです!」
「ほほう。そこの小娘、よく分かっているじゃないか。褒めて……貴様。そのペンダント。どこで手に入れた!? それは部下に万が一の時の為に持たせていた物!」
魔族が口を挟んで来たので、俺はついでに聞く。
「ほう。それでは山の中にいた奴隷商はお前達の仕業か?」
「はっ! 当然だろう。この国の優秀な奴を俺達の国に連れて帰り、先ほどの雑魚冒険者達と同じように種を植えて奴隷の様に操る。貴様らの国力は落ち、我らの国力は上がる! 素晴らしい案だろう!」
「なるほどな。それで優秀な人材を捕らえようとしていたのか」
「貴様程度の雑魚共では想像もつくまい。まぁ……貴様ら人間など、俺にかかれば一瞬、10秒も持てばいい方だ」
俺はそんなことを高らかに話すこいつに更に聞く。
「その人間を滅ぼす。という考え方は魔族全体の考えか? 魔王もその様に考えているのか?」
俺が魔王の名前を出した途端、彼は顔を真っ赤にしながら怒鳴り始める。
「ふざけるな! あんな弱腰等と一緒にするな! 魔族は最強だ。魔族は全てを支配する! 貴様ら人間との
「なるほど、では人間と戦うつもりがあるのはお前や一部の魔族だけ……ということだな?」
「一部ではない! 弱腰な奴らが一部なのだ!」
「どちらでもいい。話は分かった。リュミエール。その魔道具の使い方は分かっているな?」
「ど、どうしてそれを……」
「何回もそれを使っていただろうが、それくらい分かる。使って離れておけ」
「わ、分かりました……」
リュミエールはペンダントの姿や気配を消せる魔道具を使って、隠れる。
これでこの魔族との戦いで彼女が傷つく事はないだろう。
まぁ……他に考えることもあるが。
「貴様……俺を前にして女に話しかけるとは余裕だな。人間の分際で許さぬ。行くぞ!」
ヒュン!
奴はその巨体に似合わぬ速度で俺に近付き、拳の連打を放つ。
「そらそらそらそらそらそら!!!」
俺は奴の拳に当たらない様に、ゆっくりと、その場から少しずつ離れるようにして移動する。
奴は俺が下がっているのを見て逃げていると見たのか挑発してくる。
「くははははは!!! 逃げているだけではこの俺は倒せんぞ! まぁ! 今まで俺の前に立った人間は全員殺して来たがな!」
そう言いつつも拳が止まる様子はない。
しかし、その程度では俺には届かない。
「おい。ウスノロ。お前の本気はその程度か」
「貴様! 人間の分際で! 殺してやるぞ!」
「殺せるものならやってみせろ」
俺は剣を引き抜き、振りぬいて来る左の拳を斬り飛ばした。
シュパッ
「は……」
奴は何が起きたのか理解できずに目をパチクリとさせている。
「愚か者が」
俺は奴の右腕を根本から斬り飛ばす。
ザンッ
「な、何がおきて……」
「お前が本気を出さないからこうなったんだよ。分かるか?」
「き、貴様……」
「まぁ安心しろ。『
俺は奴の腕を再生させていく。
「は……? 貴様……正気か? この俺を回復する? 死にたいのか?」
「さっきから言っているだろう? やれるものならやってみろ……と」
「いいだろう。貴様がその気なら俺の本気を見せてやろう。殺せる時に殺さなかった愚かさを呪うがいい」
「はっ。それで一度死にかけた愚か者が言うと
「当然だ。俺様の体は全て筋肉で出来ている」
「そうか……これ以上は無駄だな」
話しても無駄だと思い、こいつが本気を出すのを待つ。
「はあああああああ!!!」
奴は全身から紫のオーラを放ち、力を溜めているようだ。
俺はそんな奴の姿を見て、周囲に他の敵がいないか視線を巡らせる。
屋敷からは貴族の格好をした男やメイド等が俺達の戦いを見ていた。
これは後であいつらの為にも動かないといけないかもしれないな。
そんな事を思っていると、魔族は力を溜め終えていた。
「行くぞ! 俺の全力の一撃! 【
オーラが全て奴の右腕に宿り、俺の腹に向かって打ち出される。
ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
俺の後ろの草木が吹き飛び、広い庭に大きな傷跡を残す。
この修理だけで何日かかるのか。
俺はそんなことを気にしていた。
「ば……ばかな……。俺の……俺の力全てを使った一撃……だぞ?」
俺は無傷だった。
服は少し破れてしまったが、それだけだ。
「それが?」
俺がそれだけ言うと、彼は顔に脂汗を流して後ずさる。
そして、力を使ったためかひざをつく。
「う、嘘だ……人間風情にそんな……そんな力ある訳……」
「あるだろう。では今、こうして俺が立っているのはどうしてだ?」
「い、インチキだ! インチキに決まっている! 何かそういうスキルがあるのだろう!? 何だ! 言ってみろ!」
「スキル? まぁ、確かにインチキかもな」
「それ見ろ! 何のスキルだ!」
「俺のスキルは簡単だよ。【最強】ただそれだけのスキルだ」
「【最……強】……?」
奴は俺が言っていることが理解出来ない様なので、俺はしっかりと説明してやる。
「そうだ。【最強】だ。何者にも負けず、常に勝利し続ける。戦いにおいて決して負けることはなく、何人たりとも俺に
「そ、そんなふざけた……」
「あるからこうしてお前は俺にひざをついているんだ。筋肉しか入っていない頭で理解したか?」
「ふ、ふざけるなああああああ!!!」
「仕方ない。一度殺すか」
俺は剣を引き抜き、やつの首を飛ばす。
でも、まだ足りない。
俺は、奴の体を
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