第60話 初戦
***
「隊長……この作戦……本当に大丈夫なんですかね……」
Cランクの冒険者は不安を隠そうともせずに、隊長に問う。
その隊長はBランク冒険者で、シュタルの実力を知っているからか不安はない。
「心配するな。今回指揮を取っているのはあのシュタルだ。俺達の勝利は決まっている」
「そんな……だからって俺達1隻を囮にするんですよ? 流石にもうちょっとやり方があるんじゃないですか?」
「馬鹿いえ、俺達は仮にもそれなりの兵力があるんだ。奴らを巣から引きずり出すためには必要なんだよ」
「でも……この湖はそんな兵を隠す場所なんてないですよ……」
Cランク冒険者はそう言って周囲を見回す。
見渡す限りの湖が拡がっていて、前方には水賊であろう連中がこちらに向かっているのが分かる。
「それは……きっとシュタルなら考えがあるはずだ。いいから行くぞ」
「……はい」
それから少し経って、水賊達が明らかにこちらを狙っているのが見える。
それを確認した隊長は大声で声をかけた。
「よーし! 逃げるぞ! 真っすぐ来た道を戻る!」
それに、自分たちが囮だともバレてはいけない。
中々に難しい仕事だ。
しかし、隊長はその仕事をやり切った。
シュタルが施して魔法の防御のお陰もあるが、彼の腕も確かだったのだろう。
水賊達は彼らを追い、守り神の巣から出てくる。
それも、50隻にはなろうかという程の量でだ。
そんなすぐ後ろには危険が迫っていたが、Cランク冒険者は不思議そうに周囲を見ていた。
「あの……隊長」
「なんだ」
「ここ……
「しらん。恐らくシュタルが何かしたのだろう」
「……そんなことが?」
「ああ、というかそろそろだな。合図を送れ!」
隊長の命令で火の魔法が空に打ち上げられる。
すると、その霧の中から水賊に向かって船団が現れた。
******
「全軍突撃! 1人も生きて帰すな!」
俺は他の冒険者達にそうやって激を飛ばし、慌てている水賊を狩りに向かわせる。
そうしていると、後ろから俺にこの街で唯一のAランク冒険者が話しかけてきた。
「流石シュタル様。こんな事も出来るとは」
「獲物を狙っている時が狙い目だからな」
「敵は慌てふためいて中々迎撃がうまく行っていませんね。しかもこの霧が上手く働いていて、こちらの連携を邪魔しないようにしかも敵だけを的確に邪魔しています」
「そうなるように操作しているからな」
「は……この規模……1㎞は囲っていると思うのですが……それを操作されている……と?」
「そうだ。俺ならばそれくらいは出来る」
「……桁違いのお力を持っているのですね」
「いいからお前も向かってこい。俺はここで巣にいる奴らが援軍に来ないか見張っておく」
「しかし……手柄は良いのですか?」
「俺は要らんよ。それよりもお前達が自分たちの手でこの場を取り戻したという気持ちの方が大切だ」
「……シュタル様。そこまで考えて下さっているとは……。ありがとうございます」
「いい。速くしないと敵の増援が来るぞ」
「は。すぐに行って参ります」
そう言って彼は水賊達を狩りに行く。
彼の手際はかなり素晴らしく、剣の1振りで数人を切り裂いていた。
彼の力のお陰もあり、水賊達が逃げる時間も隙も与えずに50隻全てを
最後らへんは諦めて投降する水賊もいたので、戦いとしては楽勝だった。
俺はその中にいた水賊の中で一番偉いやつに話を聞く。
「お前、後水賊はどれくらい残っている?」
「そいつぁ……高くつくぜ?」
そう言って俺を挑発するように見てくる。
捕まったとしてもこの態度、自分たちの立場を理解していないらしい。
俺は剣を抜き放ち、奴の首筋に当てる。
「別に言いたくないならいい。ただ、言えばお前の命は助かるかもしれないな?」
「ひぃ! は、ハッタリだ。俺を殺したら情報はあがっ!」
俺はそいつの首をきり飛ばし、次の瞬間に
「さて、後何回死にたい?」
「え? は? なん……ごばっ!?」
俺は再び首を切り飛ばして蘇生する。
「いいか? 何回でもお前は死ねるんだ。その事を理解したか? それでも、まだ言いたくないと抜かすか?」
「言います! 言いますから!」
「サッサとしろ」
「はい!」
それからそいつが言うには、守り神の巣にはまだ多くの水賊がいて、船にして100隻はいるという。
守り神から攻撃されない理由は船に張られた魔法陣のお陰らしい。
なので、俺達も拿捕した船に乗り換えて行くことが決定した。
それと、更に詳しい情報を絞り取ると、奴らの中には守り神に指示を出せる巫女の一族が1人……捕らえられて言うことを聞かされているらしい。
「では……そいつらも助けないといけないな」
「それは……出来るでしょうか……」
「やるんだよ。さぁ……行くぞ。まだまだ戦いはこれからだ」
俺達は今度は水賊達が集まる場所に向かって行く。
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