第78話 星団の牙
「そこまで言うのなら相手をしてやるよ。俺達Sランク冒険者パーティ『星団の牙』がな」
「ほう。楽しみだ」
そう言って来るのは男2人、女1人の3人組だった。
男は剣士の格好をしており、その装備はダンジョン産だからかかなり質も良い。
もう一人のシーフの様な男は、腰に短剣を差していたり、腰のポーチには色々な道具が入っていそうだ。
最後の女は魔法使いのローブをまとっていて、その瞳は鋭い。
「それじゃあ覚悟しろよ」
「安心しろ。お前ら程度であれば、俺はここから動かずに勝って見せる」
ブチブチブチブチブチブチ
俺が
「ほら。かかってこい」
「てめぇ! 死んでも後悔すんじゃねぇぞ!」
「俺がお前達程度に殺されることはないから安心しろ。むしろ自分たちの事を心配した方がいいぞ? Sランク冒険者パーティでたった1人に動かすことも出来ずに負けたと言われるのだからな?」
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ
「まじで殺す!」
そう言って剣士が俺に切りかかってくる。
速度は本気で殺すと言わんばかりで、奴の筋肉は膨れていた。
ただ、やはり挑発が効いているのか、動きが単調だ。
まぁ、ここでは敵がダンジョンで現れる魔物にフェイント等はあまり使われないから当然かもしれない。
最近は魔族の侵攻も少ないし、当然だろう。
「はぁ!」
奴が切りかかって来るのを、俺は指で挟んで止める。
「は……」
「おいおい、指で止められる程にお前の剣速は遅いのか?」
「いや……ふざけうご!」
俺は空いている方の手で拳を作ってやつの腹にぶち込む。
奴は剣を手放し、そのまま反対側の壁にぶつかって動かなくなる。
「ほら、後2人。本当に俺に一歩も動かせない気か?」
「! 食らえ!」
俺がそう言うと、もう一人のローブ男がポーチからこちらに向かって何か放つ。
それは光の粉の様に見えるけれどなんだろうか。
少なくともいいものではないだろう。
俺には効かないにしても、リュミエールや後ろにいる受付には被害を出す訳にはいかない。
「『
「ぐあああああああ!!!」
「きゃああああああ!!!」
俺が風でその粉を吹き飛ばすと、それを浴びた者達は悲鳴をあげた。
そして、そのまま動かなくなる。
一応、息はしている様なので、死んではいないはず。
それにしても中々えげつない物を使う。
「てめぇ! 魔法も使えたのか!」
「当然だ。『
「何!?」
「きゃ!?」
俺は面倒なので、残っている2人を魔法で捕らえる。
魔法使いの女は何か詠唱をしているようだったけれど、俺の魔法に囚われた瞬間魔法は消えていた。
「ほら。どうする? まだやるか? それとも泣いて謝るか?」
「て……てめぇ……俺達にこんなことをして……どうなるかわかっているんだろうな」
「どうなるんだ? 言ってみろ」
「この街には誰も敵わないと言われるSランク冒険者【守護神】がいる。それも……この場に……だ。覚悟しておけよ」
「それは楽しみだ。では早速出て来てもらうにはどうしたらいいのかな?」
俺はなんだか悪役の口調が楽しくなって更に続ける。
そして、丁度いい物を見つけてこちらに手繰り寄せた。
それは、『星団の牙』の女魔法使いだ。
「ほう、お前、中々可愛い顔をしているじゃないか」
「いや! 止めて!」
「何を言っているんだ? この街では力が全て、戦って勝つ奴が正しいんじゃないのか?」
「そ、それは……」
俺がそう言うと、もう一人の男は恨みを込めた目で俺を見てくる。
いい、いいぞ。
ちょっとふざけたつもりでやっていたけれど、これで俺に向かって来てくれるのであれば、この方がいいのかもしれない。
俺は近くに呼び寄せた女魔法使いの『
「ほう。中々いい体だな?」
「嫌! 許して! 謝るからぁ!」
「てめぇ! 楽に死ねると思うなよ……」
「ははははは、謝って許される? では俺がここで動いてお前らを殺しにかかったらどうなると思う?」
俺は少しだけ殺気を出して冒険者を威圧する。
当然、後ろにいるリュミエールや受付は当たらないように気を付けて……だ。
「ヒィ!」
それを食らった冒険者達は一様に息を飲み、それ以上何も言わなくなる。
しっかりと力の差を見せつけられただろうか。
ドン!
そこに、1人の男が降りてくる。
金色の鎧に身を包み、右目には黒の眼帯をした男。
「【守護神】」
彼はそう呼ばれる程に強く、人望もとても高い。
彼がいるからこそ、恐らくこの街はミリアムの攻撃も弾き返していたはずだ。
そんな彼が、俺に向かって近付いてくる。
ノシノシノシノシ
彼の体重からか、装備の重さからか、床を凹ませながら向かってくる。
そして、彼は俺の前に立つと口を開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます