第81話また

数日後、例の妃が嬉しそうに屋敷を訪れた。


「これ、よかったどうぞ…」


綺麗な生地を女官に持たせてやって来ると素っ気なく渡してくる。


「え?くれるんですか?」


「ええ、あの縄跳びすごくいいわ。屋敷でいつでもできるし…見て…」


周りをうかがうように確認すると妃は細くなったお腹に王蘭の手を引き寄せ触らせる。


「わ!効果抜群ですね!」


「そうなの!もう嬉しくて、これうちの実家から送られた生地なのよ」


「すごく綺麗です。ありがとうございます」


王蘭は笑顔で受け取りお礼を言う。


「なんかあなたの事、勘違いしてたわ…また何かいい運動あったら教えてくださる?」


「もちろんです」


妃は満足そうに帰って行く、すると入れ替わるように紅花がやってきた。


「王蘭様…あちらの方は…」


満足そうに帰る後ろ姿を不安そうに見送っていた。


「ああ、最近ちょっと仲良くなったのよ」


「仲良く?」


「ええ、話してみると結構みんないい人ね。こんな贈り物貰ったわ」


王蘭は先程貰った生地を見せる。


すると紅花がサッと後ろに何かを隠した。


「ん?」


王蘭が覗き込むとそれはこの前褒めたピンクの花束だった。


「すみません…こんなモノしか持ってきてなくて…」


紅花は恥ずかしそうに花を抱きしめ隠そうとする。


「私に?」


コクリ…と力なく頷いた。


「嬉しい!紅花様ありがとうございます!」


王蘭は嬉しくて紅花を抱きしめた。


「キャッ!」


「あっごめんね、嬉しくて」


「い、いえ…」


紅花が花よりも赤く染った。


王蘭は花を受け取り匂いをかぐ。


「紅花様も私なんかじゃなくて陛下に持っていけばいいのに」


私の言葉に紅花は顔をあげた。


「私…陛下より王蘭様に差し上げたいと思ってしまいました…」


「え?」


なんか思っていた答えと違うものが返ってきた。


「紅花様は陛下をお慕いしてるのよね?」


「そうだと思っていたのですが…」


紅花は言いにくそうに目を泳がる。


「私確かに陛下のことをお慕いしていたのですが…それよりも親身に話を聞いてくれていつも優しくそばに居てくれる王蘭様の事の方が大切に思っています」


「あ、ありがとう…」


それって…親友としてって事でいいのかな?


王蘭は戸惑いながらお礼を言った。


「突然こんな事を言ってしまい申し訳ありません。今までお力になってくれていたのに…」


「別にいいのよ。それにこれからも応援するわ」


「いえ!もう大丈夫です!それよりも王蘭様、さっきの方とどうして仲良くなったのですか?」


紅花はグイッと近づき可愛い顔で真剣に見つめてきた。


もういいとは…まぁ自分で頑張るって事かな?

それなら私は余計な事はしないであたたかく見守ってあげよう!


そう決めると切り替えて王蘭は紅花にも縄跳びを教えてあげた。


そうして朝縄跳びをすると言うと朝一緒に飛びたいと参加するようになった。


やっぱり女の子はダイエットとなると必死になるものなんだな。


これはどの時代でも変わらないんだな…


王蘭はのんびりとそんな事を考えていた。

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