第53話気持ち

「えっと…これはなんでしょうか?」


紅花様に話を聞きに来た宦官が王蘭の部屋の天井を見上げて唖然とする。


「いや、なんかネズミが居たみたいでムキになってたらこのように…あっでもこのままで大丈夫ですから」


王蘭は気にした様子もなくニコッと笑った。


「王蘭様がそうおっしゃるのならこちらからは何も言いませんが…気をつけて下さいね」


紅花様の女官が決まり、明日には手配できると知らせに来てくれた宦官は王蘭を不思議そうに見つめる。


「紅花様はどうされますか?私共の方でお部屋もご用意できますが…」


紅花様はチラッと王蘭を見つめる。


「ん、何かしら?」


「その…一人はまだ怖くて…王蘭様と今日は一緒に過ごしても大丈夫でしょうか?」


「もちろんよ!じゃあ今日はパジャマパーティーね!」


「ぱじゃま?」


紅花様は知らない言葉に顔を顰めた。


「す、すみません。私知らないことばかりで…ぱじゃまぱてぃとはなんでしょうか」


恥ずかしそうに聞き返す。


「紅花様、大丈夫ですよ。変な事を言ってるのは王蘭様ですから、ぱじゃまぱーてぃーなんて私達も知りませんよ。ねぇ春さん」


「ええ、その通りでございます。紅花様は王蘭様の言葉を鵜呑みにしなくて大丈夫です」


「うわっ!二人とも酷い!」


王蘭は凛々と春さんを頬を膨らませて見つめた。


「そ、そうなのですか?」


「ええ、王蘭様の言葉は話半分くらいがいいですよー」


凛々がペロッと下を出してウインクすると紅花様はクスッと笑った。


「本当に皆さんは仲が良くて羨ましいです。私も次の女官達とは王蘭様達の様になれるといいなぁ…」


「なれるわ、でもそれには紅花も変わらないとね」


「そうですね。紅花様はもう少し王蘭様の様に図々しくなるべきですね」


「春さん…私の事そんな風に…」


王蘭はショックを受けた顔で春さんを見つめた。


「図々しく…ですか…」


紅花は自信なさげにしている。


「そうね、急には無理でも…好きか嫌いくらいはっきり言えるようになるといいね」


「好き…嫌い」


「それなら自分の気持ちに聞けばいいでしょ?」


「紅花様は妃候補なのですから、もっとわがままをおっしゃってよろしいのですよ」


春さんが優しく笑いかけた。


「そうだ!春さん少し紅花様の女官が落ち着くまで監視してあげれば?」


「監視…そしたら王蘭様の世話はどうするんですか!」


「凛々がいるから大丈夫よー、それに私は自分の事はなるべく自分でするわ」


春さんは眉をひそめて王蘭と紅花を見比べる。


「春さん…もし来れるなら来て欲しいです。やっぱり少し不安で…私に後宮での在り方を教えて下さい」


「紅花様…」


春さんははぁーと深くため息をつくと仕方ないと頷く。


「じゃあ私が後で宦官に言っていてあげるわ」


王蘭がウインクすると、紅花はほっとしたように目をうるませる。


「皆さん、本当にありがとうございます。私、皆さんの事は好き…です」


「紅花様、可愛い!」


頬を赤らめて好きと言う紅花に王蘭はギュッと抱きついた!

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