第54話お泊まり

今夜は春さん達に寝る支度を整えてもらい、王蘭と紅花は同じ寝具で寝ることになった。


「王蘭様…本当によろしいのですか?私と同じで…」


紅花はまだ不安そうにしている。


「当たり前でしょう、じゃなきゃパジャマパーティー出来ないし!凛々!春さん!」


王蘭が二人を呼ぶと二人とも寝間着に着替えて恥ずかしそうに部屋へと入ってきた。


「王蘭様…私達も本当に一緒にやるんですか?」


春さんが嫌そうに聞いてくる。


「えー楽しそうじゃないですか!みんなでお菓子食べながらおしゃべりするんですよね?」


凛々は楽しみにしてるようでウキウキしている。


「ええ、そうよ。女だけで話をするの!ここでの事は無礼講で他言無用よ!」


「了解です!」


凛々は笑顔で敬礼すると、春さんは諦めたのかため息をしながらも苦笑している。


私達は早速床に敷物を敷き、お菓子を広げてお茶を用意する。


「それじゃあいただきます!」


まずは王蘭が最初に手を伸ばした、それをみて紅花、春さんと続く。


「んー美味しい!ほら、凛々も食べてみな」


王蘭は凛々にお菓子を摘んで口元に持っていく。


「いただきます!」


凛々はアーンと口を広げてそれを食べた。


「凛々!」


それを春さんが注意しようと声を荒らげる。


「春さんもはい!アーン」


春さんの怒った口に王蘭は同じようにお菓子を放り込んだ。


「これで春さんも共犯ね!凛々を怒っちゃダメだよ」


王蘭はニヤッと笑うと自分もまたお菓子を食べた。


「はぁ…わかりました。でも今夜だけですよ」


「とりあえずね!はい紅花様もどうぞー」


王蘭が紅花にもお菓子を差し出すと…


「あんっ!」


紅花様は思い切って口を開いて一口でそれを食べた。


「あはっ!いい食べっぷり」


王蘭はその様子にニコニコと笑う。


こんな女同士の夜は久しぶりだった。


話は大体王蘭か凛々が喋っていたが、時折紅花様と春さんも笑っていて、四人で楽しい夜を過ごした。



「はぁ~」


凛々の大欠伸に春さんがお茶を持ち上げた。


「凛々も限界のようなので、今夜はこの辺で終わりにしましょう」


「えー!まだ夜はこれからなのにー」


「凛々は明日も仕事がありますからね、続きはお二人で…でも、楽しい夜でした」


春さんが笑顔でおやすみと言うので王蘭も納得して自分の飲み食いした物を持って立ち上がる。


「王蘭様?何を?」


春さんが不思議そうに見つめていた。


「春さんは凛々を運ばないとでしょう、後は私がやっておくわ」


「そんな!いけません」


「ほら、凛々が頭を打っちゃうよ。それに今日は無礼講でしょ!こんな時くらい春さんも楽してくださいよ」


凛々を見ればもうコックリコックリと頭をふらつかせて今にも倒れそうになっていた。


春さんは慌てて凛々を支える。


「わ、私も手伝います」


王蘭がお菓子を集めていると紅花様もお茶を掴んだ。


「大丈夫?無理しなくていいんだよ」


「いいえ!王蘭様がしているのに自分だけ見ているなんて、やらせて下さい」


「ありがとう」


王蘭は紅花様の頭を子供を褒めるように撫でた。


紅花はその行為にポっと頬を赤らめた。

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