第55話夜
「ではおやすみなさいませ、ほら、凛々行きますよ」
春さんは凛々を支えながらどうにか歩かせて部屋を出ていく。
まぁ春さんがついてるから大丈夫だろう。
「じゃあ私達も横になろうか?」
王蘭は寝具に横になると隣をポンポンと笑顔で叩く。
「し、失礼します」
紅花はそっと王蘭の隣に横になった。
「今日は色々あって疲れたでしょう、ゆっくり休んでね」
「ありがとうございます、こんなに楽しい夜はここに来てから初めてです」
「それは良かった」
「王蘭様・・・・・・聞いてもいいですか?」
「なぁに?」
横になり灯りを消すが天井の穴からの月明かりで室内の様子がうっすらと見える。
王蘭は顔を横に向けて紅花を見つめた。
「王蘭様はなぜ私を助けてくださったのですか?」
「そりゃあんな一方的ないじめ見過ごせ無かったし・・・・・・何より紅花様が可愛かったからかな」
「可愛い・・・・・・? 冗談はやめて下さい。私の姿をみてそんな事を言う人なんて」
紅花は悲しそうに顔を逸らす。
「あら、どうして? 紅花様のそのふわふわの髪も透き通るような白い肌も小柄な姿も可愛いと思いますよ」
「嘘!」
紅花は突然大きな声を出した。
「こんな薄気味悪い髪なんて可愛くない!こんな髪嫌い!」
紅花は起き上がって自分の髪を掴んだ。
「紅花様、私の母はあなたと同じような髪なのよ。薄い茶色の髪で陽の光を浴びるとキラキラするの・・・・・・私はそんな母の髪に憧れたわ」
「王蘭様のお母様が?」
「ええ、残念ながら私は父ににてこんな髪だけどね。だから紅花様を初めてお見かけした時、母の姿が重なったの」
王蘭は髪を掴んでいる紅花の手をそっと触ってその手を下ろした。
「だから私の好きな髪をそんな風に言わないで」
「でも・・・・・・王蘭様以外でこの髪を好きと言ってくれる方なんて・・・・・・」
「あら、私の父はそんな母にベタ惚れだったのよ」
「べた・・・・・・ぼれ?」
「大好きだったって事」
王蘭は紅花様の髪を撫でるとニコッと笑う。
「きっと紅花様の髪や容姿を好きになってくれる人はいるわ、私がそう思うようにね」
紅花は王蘭の瞳をじっと見つめる。
「王蘭様は、会った時から私の事を気味悪がって見ないでくださいました。王蘭様の言葉を信じたい・・・・・・」
「きっと大丈夫よ、だってこんなに可愛いんだもの」
王蘭は紅花様をギュッと抱きしめた。
紅花は安心する温もりにそっと身を王蘭に預ける。
上を見上げると王蘭の口がニコッと笑い、口角が上がった。
それを見て、ある事を思い出す。
「そう言えば・・・・・・皇帝陛下も私を見て王蘭様の様に笑ってくださいました」
「へー!そうなの? じゃあ陛下は紅花様の様な女の子がタイプなのかもね!」
「たいぷ?」
「好きな子って事!」
紅花様の可愛い鼻をチョンと触る。
「え?え?」
紅花様は顔を真っ赤にすると、頬を押さえた。
「あら、その反応満更でもなさそうね」
「そ、そんな私など・・・・・・陛下に相応しくなど・・・・・・」
「相応しいってなに?ここにきた時点でみんなにその資格があるんじゃない?」
「私なんかより、王蘭様の方がよっぽど・・・・・・」
「えー!無い無い!私、陛下に興味無いから」
「え、そうなのですか!?」
「だって皇后になるとかすっごく面倒そう・・・・・・考えただけで鳥肌が立つわ」
王蘭はブルっと身震いする。
「ふふ、でも王蘭様なら・・・・・・とてもいい国になりそうです」
紅花の笑顔に王蘭は優しく微笑んだ。
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