第56話タイプ

「元気が出たみたいで良かった」


王蘭の気さくな態度に紅花もようやく本当の笑顔を見せた。


「ありがとうございます。私、王蘭様なら陛下との事応援出来ます」


「だから・・・・・・本当に興味無いのに、それよりも私は普通の男と恋がしたいわー」


王蘭は頭の後ろで手を組むとそのままドサッと倒れ込んだ。


「王蘭様は本当に陛下に興味が無いのですか?」


「ええ、だってここに来てから一度も顔を見せないし来ることもしない男の何を好きになるの?」


「でも・・・・・・あの時手を差し伸べて下さいました。きっと優しい方なのだと思います」


紅花はその時の事を思い出すと、頬を熱くなった。


「ほほぉ~」


王蘭はそんな紅花の顔を覗き込んでニヤニヤと笑う。


「な、なんでしょう?」


紅花はなんか気まずくなり顔を隠してうかがう。


「紅花様・・・・・・いや、もう紅花ちゃんでいいかな?もしかして、好きな人出来た?」


「な、な、何を・・・・・・好きな人など、私達は陛下の為にいるのですから」


「ちょうどその人が好きなんですよね~」


「ち、違います。好きとかではなく、ただ優しかったと・・・・・・」


紅花はますます頬をあからめる。


「でも問題無いわよね、陛下の為にいるのなら陛下を好きになるのは当然のことでしょ?」


「そ、そうですが・・・・・・」


「私は紅花ちゃんが誰を好きでも応援するわ」


「ありがとうございます。でも私はここに来ると決まった時に色々と諦めていましたから」


「なんで、別に我慢する必要はないんじゃない?」


「そうでしょうか?」


「ええ、恋愛だけじゃ無くて他のことでも何も諦めることなんてないわ。我慢しなきゃいけないこともあるだろうけどできる範囲で私は好きな事をする」


それじゃなきゃ第二の人生を貰った意味がない。


紅花は王蘭の言葉を噛み締めていた。


「少し話しすぎたかしら、もう遅いし寝ましょうか?」


王蘭は紅花におやすみと布団をかけてやると紅花から小さな声で返事が返ってくる。


王蘭は隣の温もりに程なく瞼を閉じると眠りに落ちていった。


隣で規則正しい寝息が聞こえてくると紅花は王蘭の顔を見つめる。


綺麗な横顔をじっと見つめるとそっとそばに寄り添った。


「王蘭様・・・・・・ありがとうございます」


王蘭の腕に頭をくっつけて紅花は安心して眠ることが出来た。





◆◆◆




「陛下、失礼致します」


静の声に仁は顔をあげた。

すると、いつの間にか目の前に静が膝まづいている。


「ご苦労、それで王蘭達の様子はどうだった」


陛下の言葉に静は天井の事を思い出してクスクスと笑い出す。


「な、なんだ?気持ち悪い」


いきなり笑いだした静を気味悪がる。


「いえ、王蘭様のことでちょっと・・・・・・」


「また、なんかしたのか?」


仁はため息をついて呆れると先を促した。


「いえね、俺の前に一人王蘭様を監視する目があったんですが・・・・・・下手こきやがって音出したんですよ。そしたら・・・・・・」


また笑いが込み上げて静はクックッと話を止めた。


「なんだ?一体何があったんだ」


「それが王蘭様天井にネズミがいると思ったみたいで兵士から槍を借りて天井にぶっ刺したんですよ!」


「はぁ!?あいつ、何やってんだ」


陛下は痛い頭に手を当てた。


「中のネズミはそりゃまぁ驚いて出ていきましたよ」


「そりゃそうだろうな、まさか妃后が槍を突くなんて思わんだろうからな」


「しかもその後がまた傑作!」


「まだあるのか・・・・・・」


仁は先を聞くのが怖くなってきた。

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