第119話
王蘭は痛みに目を瞑っていたが…痛くない?
目を開くと仁が自分に覆いかぶさり倒れていた。
「大丈夫ですか!」
黄燕は静に捕まえられ地面に抑え込まれていた。
「仁!」
王蘭は仁をだき抱えて体を起こす。
仁は髪が乱れて顔を覆っていた。
顔が隠れて少し見える隙間から殴られた痕が見える。
「仁が…」
動かない仁に手が震えて上手く触れないでいると…「うん…」仁が微かに動いた。
「よかった…」
王蘭は力が抜けて震える手で仁の髪を退かそうとすると…
あれ?
見覚えのある姿に違和感を覚える。
いつも見ている仁の顔が髪で隠れて口元しか見えない。
なのにその隠れた姿に見覚えがあった。
紅花の騒ぎの時に駆けつけた陛下の隠された顔が頭をよぎる。
「え?いや…まさか…ね」
「王蘭、大丈夫か?」
「れ、仁…大丈夫?い、今ね仁の顔が陛下に見えて…いや、そんなわけ無いよね。ごめん私、混乱してるわ」
色んなことがありすぎて頭が上手く整理できないでいた。
仁は髪をかきあげるとどうしようかと困った顔をしている。
するとそこに居るはずのない南明の姿まで見える。
「陛下ー!」
南明が驚いた様子で仁を陛下と呼びながら兵士を引き連れこちらに向かっている。
「へいか…?」
「大きい声で…」
仁はため息をつくと王蘭を抱き上げて立ち上がった。
「私は大丈夫だ、それよりも王蘭の傷の手当てを」
そう言って兵士に私を預ける。
「ま、待って!」
王蘭が仁に手を伸ばすと仁はその手を掴んでスっと甲にキスをする。
そして一言「すまん」と言って悲しそうな顔をした。
どういう意味…?
王蘭が理由を聞こうとするが仁は兵士や南明に囲まれて何処かに行ってしまった。
王蘭も兵士達に連れられて馬車へと連れていかれるとそのまま乗せられ走り出した。
王蘭は何処に連れていかれるよりも今あったことの整理が追いつかずに頭を抱えて制止する。
仁が陛下?だって文官で宦官なんじゃないの…
色々考えるが思い返すと仁が来る時変な事が多かった。
他の令嬢達の前に出なかったり、春さん達でさえ姿を見せなかった。
王蘭のところに来る時はいつも一人か南明様か静さんと…
よくよく考えると正体を隠すためにやっていたのだと気がつく。
「それに…最後の謝罪はなに…」
あの時の悲しそうな仁の顔が頭から離れない。
まるでもう会えないと言っているような気がした。
「最後なら…お礼くらい言わせてよ…」
王蘭の瞳から、ポロッと涙がこぼれ落ちた。
ぼーっと椅子に寄りかかって外を眺めていると馬車が止まり、いつの間にか後宮に着いていた。
そのまま誘導される様に歩くと医務室に連れていかれ手当てをされる。
その間王蘭はふわふわとしていて自分の行動を覚えていなかった。
気がついた時にはベッドに寝ていて泣き顔の凛々と心底ホッとする春さんの顔が自分を覗き込んでいた。
「王蘭様!」
「王蘭様…よかった。何処か痛いところなどありませんか?」
「春さん…凛々」
王蘭は起き上がろうとすると春さんが慌てて後ろを支えてくれた。
「大丈夫、ありがとう。二人とも心配かけた…みたいね」
力なく笑うと凛々は安心したのか王蘭の膝元でよかった~と泣き出した。
「本当に大丈夫ですか?」
春さんはまだ心配そうに優しく背中をさすってくれた。
その優しさにまた涙がこぼれる。
「「王蘭様!」」
二人が驚き王蘭を支えた。
「二人ともありがとう、嬉しくて泣けてきちゃった!」
王蘭は二人に笑いかけた。
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