第114話正体
「父上!なんだってあんな男にヘコヘコと頭を下げているんだ!」
黄燕は父親の不甲斐ない姿にたまらず文句を言った。
「うるさい!いいからお前は私の言う通りにしていればいいんだ!あの方には逆らうな!」
「あんな俺よりも若い男に媚びへつらって情けないったらありゃしない…」
黄燕はボソッと呟いた。
「私だってあんな男に頭など下げたくないが仕方ないんだ。いいからあの女は諦めろ、女ならまたすぐにでも用意してやる。あっそうだ、女が好きならもう少し用意しておくか…」
王伉はいい考えを思いついたとすぐに従者達に声をかけた。
「あの女は特別なんだよ…そこら辺の馬鹿な女とは違う、ああいう反抗的な奴を手懐けるのが楽しいのに…」
黄燕はわかちゃいないとブツブツと文句を言っていた。
「ブツブツうるさいぞ!いいからお前は大人しく顔だけ覚えて貰え」
頭ごなしに言われて到底納得出来ない黄燕だったが、父親はさっさと女を用意してあの客人の男の元に行ってしまった。
「ちくしょう…」
黄燕はわざと遅く歩いて行く、そして離れの方に何となく顔を向けた。
するとあの優男の従者が離れの方へと走っていくのが見えた。
しかも木の上を…
「なんだありゃ…」
黄燕は信じられないものを見たと目を擦る。
次に目を開いた時にはその姿は見えなくなっていた。
「気のせいか…」
首を傾げて黄燕も父親の後を追った。
「すみません、お待たせしてしまい申し訳ございません」
王伉は仁にヘコヘコと頭を下げた。
そして新たに何人か女性を連れて戻ってきた。
「ほら、お前達もお客様をおもてなししなさい」
「はぁ~い、わぁお客様すんごいいい男…」
「本当に!良かったらお酒注がせて下さい」
連れてこられた女性達は慣れた様子で仁をもてなした。
「ちょっとあなた退いてくれる」
「お酌もまともに出来ないなんて失礼な子ね、どこの子かしら」
女性達は仁の隣にピッタリとくっつく王蘭を睨んで退かそうする。
「えっ!?」
王蘭はグイッと引っ張られるとその隣に女性達は仁を挟んで寄り添うように座った。
「なんなのよ…」
王蘭は軽く押し退けられて体勢を戻すとすぐ隣に狙ってたように黄燕が座った。
「お前は俺の相手でもしてくれ」
そして王蘭の肩を掴んで自分の方へと引き寄せる。
仁がしたような事をされて王蘭はゾクッと全身に鳥肌が立った。
仁にされた時には感じなかった嫌悪感が全身を走る。
思わず叫びそうになるとその体がスっと離れた。
「「えっ?」」
王蘭と黄燕はお互い驚いて離された原因を見つめた。
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