第113話厄介

王伉と黄燕が居なくなると仁は王蘭を睨みつけた。


「おい、なんでこんな事になっている!」


従者達がいるのでわざと近づいて耳元で囁く。


傍から見れば女にじゃれついてるように見えるだろう。


「すみません、女将さんのお店が…」


「それは聞いた。なんでこんな姿であの男の言いなりになってるんだ…」


仁は王蘭の言葉を遮って露わになっている肩を撫でた。


「ひゃっ!もうからかわないで下さい」


王蘭はサッと仁の服で体を隠した。


「いいからすぐにここを出るぞ。あいつらが戻ってきたら無理矢理でもお前を引き取る、だから 話を合わせるんだ」


「わかってますけど…私以外にもあの男に捕まってる#娘__こ__#達が、私が戻らなかったらあの黄燕って男がその#娘__こ__#達に酷いことを…」


王蘭は不安そうに仁を上目遣いで見つめる。


「その娘はお前のなんだ?知り合いなのか?」


王蘭は眉を下げてふるふると首を横にふる。


「ならそこまでしなくてもいいだろ、自分の事を最優先に考えろ…こんな怪我までして」


仁は痛々しげに王蘭の頬を撫でた。


「すみません…でも知ってしまった以上見て見ぬふりなんて…」


申し訳なさそうにする王蘭に仁は盛大なため息をつく。


「まぁお前らしいと言えばお前らしいな」


「じゃあ!」


「とりあえずはお前が優先だ!ここを一度出てから他の娘達は後で助ける」


「でも…」


「いいな!」


「はい…」


王蘭は納得出来なかったが今は仁の言う通りにしておいた方がいいと頷いた。


王蘭が頷き下を向くと仁は後ろにいた静を見た。


目で合図をすると頷きサッと物陰に消えていった。


王蘭の話を聞いてこの屋敷を調べに向かった。


そんな事とは気が付かない王蘭は顔をあげて仁を見つめる。


「そういえば仁はなんでここに?しかもあの王伉っておじさんにかなり気に入られてるみたいだけど…王宮の文官でそんなに偉いんだっけ?」


王蘭は仁が来たことで少し気が楽になりようやく周りを見れるようになった。


キョロキョロと屋敷を見るが王伉はかなりの権力者のように見える。


黄燕の様子からもそんな気がしていた。


王蘭にじっと見つめられて仁はそーっと視線を外した。


「今回の視察がこの王伉の案内で行っているんだ…だから少しでも私達に媚びを売っておきたいのだろう…」


「そう…なんだ」


王蘭は何か引っかかりながらも頷いた。


「それよりも余計な事は言わないしないで大人しくしてるんだぞ」


仁に執拗く言われてしまった。


「はい」


王蘭の素直な返事を聞いて仁はようやくほっとした。


「それにしても遅いな」


仁は少しでもここから王蘭を連れ出したいと王伉達が来るのを待っていた。

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