第95話手伝い
「美味しい!美味しいです、女将さん!」
王蘭は顔を輝かせて声をかけた。
「そうかい!そんなに美味しそうに食べてくれて嬉しいね!」
「だって本当に美味しいんだもの!」
王蘭は他の料理も食べると頬を押さえて悶える。
「本当に美味そうに食うな」
仁は笑いながら王蘭とは違い上品に食べていた。
美味しさに箸が止まらずあっという間に料理を平らげる。
「ふー、お腹いっぱい!」
満足して息を吐くと女将さんがまだ慌ただしく動き回っているのが目に入った。
「食べ終わったことだしそろそろ店を出るか」
静が席を立ち会計をすまそうとするが女将さんは料理を運んだり、注文を取ったりと手が飽きそうにない。
「すみません、そこにお会計置いといて下さい」
女将さんが声をかけると静がキッチリ料金分を机に置いた。
「じゃ、俺達も置いとくよー」
すると隣で食べていた男達もお金を置いてそそくさと出ようとする。
王蘭はチラッと席のお金をみてあれっ?と疑問に思った。
「すみません!そこのお兄さん達、お金足りなく無いですか?」
男の肩を掴んでニッコリと笑いかけた。
「え?」
男はビクッと肩を跳ねる。
「だってお兄さん達4人でしょ?私達よりも料理注文してたのに金額少ないなんて有り得ないでしょ」
自分達の机のお金と男達の机のお金を見ると明らかに少なかった。
「あ、あれ!本当だ!悪い悪い!」
男達は首の後ろをかいて笑って誤魔化す。
明らかにわざとらしかった。
「うっかりしちゃったんですね。まぁ料理が美味しいからわかります。次は気をつけて下さいね」
ウインクすると男達の頬がうっすらと赤くなる。
「そうだな、次は気をつけるよ!」
「お姉さんもまたここに来るのかい?」
男達に囲まれて声をかけられる。
「はい!美味しかったからまた来たいです。お兄さん達もまた来てくださいね」
ニコッっと笑顔を向けた。
「お姉さんが来るならまた来ようかな!女将さん悪かったね、また来るよ!」
「お姉さんもまたね!」
男達は鼻の下を伸ばしてご機嫌に出ていった。
「お嬢ちゃんありがとうね!助かったよ、たまにああして忙しい時にちょろまかす人が居るのよね」
女将さんは困った顔でお金を数えて袋に入れていた。
「大変そうですね…私で良かったら人が来るまで手伝いますよ。ねぇ兄さん達のいいですよね」
「王蘭様!駄目ですよ」
「王蘭、駄目だ!」
二人に同時に却下される。
「手伝ってくれたら助かるけど無理そうだからいいよ、気持ちだけありがとうね」
女将さんは笑ってお礼を言うとまた呼ばれて注文を取りに行ってしまった。
忙しそうなお店を後にすると足取りが重い、大変そうな女将さんの姿がよく働く春さんや凛々と重なった。
「王蘭、諦めて視察に向かうぞ。まだまだ見に行かないと行けないところはあるんだ」
「仁、静さん…お願い!あの店から一歩も出ないから!私がいない方が視察も捗るでしょ?」
王蘭は二人の前で手を合わせて頭を下げる。
二人は眉をひそめて顔を見合わせていた。
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