第111話接客

黄燕は王蘭を従者の元に連れていった。


「この娘が客人の相手をする。何かそれなりの服に着替えさせろ」


「こ、この娘はいったい?」


従者達は初めて見る王蘭に驚き黄燕に聞くが黄燕は答える気は無いと睨みつける。


「いいから早く用意しろ」


「は、はい」


「余計な事は言うなよ…」


王蘭は頷き案内する従者の後を黙ってついて行った。


「胸は無いが足がいいからそこを意識した服にしろ」


むかっ!


こんな時だが黄燕の言葉にイラッとする。

余計なお世話だ!


黄燕の指示に頷き女官がいくつか服を持ってきた。


「こちらなどどうでしょう?」


黄燕は確認すると一着の服を指さした。


王蘭は部屋に連れられて服を着替えさせられる。


「大変お似合いです」


王蘭を着飾る女官が笑顔で話しかけるが王蘭は笑う元気は無かった。


鏡の前には後宮では着ないような露出の多い肌けた服を纏った。


胸元は大きく開き鎖骨がしっかりと見えて足にはスリットが入り歩くと太ももまで足が見える。


髪を整えられ黄燕に叩かれた頬には隠すように厚めに白粉が塗られた。


支度を整えると黄燕の前に連れていかれる。


黄燕は上から下までじっくりと確認して満足そうに頷いた。


「うむ、まぁまぁだな」


「まぁまぁ?お客様にまぁまぁな女を用意するわけ?」


王蘭はたまらずに言い返す。


「こいつ…」


「ちゃんと客を満足させたら…私達を解放しなさいよ…」


王蘭が確認だと囁くと黄燕はわかったわかったと早く行けとばかりに手を振り払う。


「ではこちらです」


従者を先頭に王蘭、黄燕と続いて広間へと向かった。


王蘭はふんっ!と気合いを入れて覚悟を決める。


ここでどうにか上手く立ち回りあの女性達も解放させる…もしこいつが約束を破るようなら…


王蘭はチラッと後ろを偉そうについてくる黄燕を見た。


こんな奴が出迎える客ならそれなりの人物なのだろう…駄目だと思ったら客も巻き込んで暴れ回ってやる。


王蘭はグッと拳を握って扉の前に立った。



トントン…


「父上、失礼します。お酒を持って参りました」


黄燕が猫を被ったような声で話しかけると中から返事が返ってくる。


王蘭が驚いてる間に扉が開くと慌てて膝をついて頭を下げた。


「男ばかりでは華が無いので女を用意致しました。この酒はこの町で一番の酒です、どうぞ楽しんでください」


黄燕が酒を持ち上げてニッコリと笑って紹介する。


「ほら、隣に行くんだ」


黄燕に言われて王蘭はサッと言われた場所へと移動した。


客人とこの家の主人で黄燕の父である王伉の間を後ろから眺める。


客人はこちらを振り返ることなく王伉と話をしていた。


従者に酒を持たされると王蘭は客人へと近づき声をかける。


「こちらを…」


「ああ、ありがとう」


客人が容器を手に取り王蘭へと差し出す。


王蘭は注ごうとしてチラッと客人の顔を見て思わず叫び出しそうになった。

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