第110話交渉

「おい、お前ら客人が来ているから相手をしてご機嫌を取れ。そうすればさっきの罰は無かったことにしてやる」


黄燕は睨みつける王蘭を無視して隣の籠に入る女に声をかけた。


「ヒッ!」


女性は黄燕に声をかけられるとパニックになりガタガタと震えだした。

人の相手をとても出来そうにない…その様子に黄燕がイラつきこめかみがピクピクと動く。


「なんの役にもたたねぇやつだな…これだから女ってのは最悪だ」


ペっ!と女性に向かって唾を吐き出した。


「こんな使えない奴は……捨てるか…」


黄燕は何か思案するように顎に手を当て女性を見つめるとボソッと呟いた。


「ま、待って下さい!で、出来ます!」


女性は慌てて黄燕に向かい頭を下げる。


「なら俺にお酌してみろ」


黄燕は女を出すとそばにあった湯呑みを掴み女に突き出した。


女性は恐る恐る茶器を掴むが手が震えて上手く入れられそうに無い…


カチャカチャと湯呑みにぶつかりお茶をこぼしている。


「やっぱり使えねぇな…」


「うっうっ…」


女性は恐ろしさからペタンと地面に座り込んだ。


腰を抜かしたのか立てそうにない。

黄燕はそんな彼女の腕を掴んで立たせようとするがもう抵抗する気も無いのかボッーとしている。


黄燕が引きずりカゴに戻すとため息をついた。


「お前は後で捨てる」


そう吐き捨てると他のカゴの女達をみるが、彼女達も震えていて相手など出来そうになかった。


黄燕は仕方ないと王蘭の入っている籠の方をみる。


「どうだ?もしお前が上手く客人をもてなせるならここにいるヤツらへの罰は無かったことにしてやるぞ」


「ん…」


王蘭は猿ぐつわをされたまま考えを巡らせる。


上手く行けば逃げて助けを呼べるかもしれない…


了承するようにコクリと頷いた。


「よし」


黄燕はにやりと笑って王蘭をカゴから出した。


「いいか、布を取るがまた舌を噛み切ったり抵抗してみろ…ここにいるヤツらを生き埋めにしてやるからな…もちろんあの女達もだ」


黄燕は王蘭の耳元でそっと囁いた。


油断した瞬間逃げようと思っていた王蘭は固まった。


「ふっ、その反応はやはり何かしようと思ってたな。お前はただでは言う事を聞かないだろうからな、あいつらは人質みたいなもんだ。別に見捨ててもいいんだぞ、他人だしな。ただあいつらを殺す時はお前のせいだと言っておくがな」


王蘭は振り返り黄燕を睨みつけると楽しそうに笑っていた。


「お前の接客次第だ、まぁ頑張れ」


黄燕が王蘭を縛ることなく歩き出すと王蘭は閉じ込められた女性達を見つめる…怯えて泣いている彼女達は知り合いでも無ければ話したこともない。


王蘭が彼女達の責任を取らなくても誰も責めはしないだろう…


王蘭もそれはわかっているがやっぱりそのまま見なかった事には出来なかった。


王蘭は悔しそうにそっと黄燕の後を追った。


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