第48話仁陛下

「これは何事だ!責任者は名乗り出ろ!」


衛兵の怒鳴り声に優麗様がゆっくりと前に出る。


「はい、私優麗にございます」


「優麗様、一体なんの騒ぎでしょうか?」


見たことない宦官らしき男が優麗様と話している。


その後ろには一人少し地味な装いの昔の中国資料なので見る冕冠と呼ばれる冠を被った男性が佇んでいた。


周りを兵士に囲まれているからかなり身分が高いのだろう。


見ればチラチラと頬を染めて王妃達がその男を見ている。


「まさか…」


そう思っていると…


「しかし後宮に陛下が来て下さるとは…そのお心遣い嬉しく存じます」


優麗様がその男に頭を下げた。

すると後ろに取り巻く王妃達も一斉に頭を下げる。


「王蘭様も…」


見ればいつの間にか女官達は床にひれ伏していた。

隣にいた春さんも地面に膝を付きながらそっと声をかけてきた。


まぁ目をつけられたら叶わない…


私は顔を隠すように頭を下げた。


「一体何があった」


宦官の男が聞くと…


「なんでもありませんわ、少し話が白熱しすぎただけですわ。ねぇ皆さん」


優麗様がそう問いかけると王妃達が頷く。


はぁ?まさかこれまでの事を無かったことにするつもりか…


ピキッ…


拳に握ると骨がなった。


「なんの音だ?」


宦官がキョロキョロと様子をうかがう。


「ちょっと…よろしいですか?」


私は我慢できずにこめかみをピクピク引き攣らせて顔をあげた。


「ぶっ!」


すると陛下の後ろに控えていた地味な男が吹き出した。


「静!静かにしてろ」


男は陛下に何か言われ窘められている様子だった。


「あなたは…確か王蘭様ですね、何か発言が?」


「はい!」


「お待ちください。王蘭様…何を言うつもりかわかりませんがよくお立場を考えてくださいませ…ここは私達だけでなく陛下がいらっしゃる事をお忘れなく」


「ええもちろん。陛下のお耳に入れたく真実を話しますから!」


私の声に優麗がキッ!と見えないように睨んできた。


「申してみよ…」


陛下の小さな声が聞こえてシーンとなる。


ん?…なんか知ってる声に似てるような…


「王蘭様?」


宦官が中々言わない私に声をかけてきた。


「ああ、すみません。まずは発言の許可感謝致します。どうせできるならもう全部吐き出します!ここにいる紅花様ですが、あろう事か女官から嫌がらせを受けております!しかもその女官はどうも愛琳様の女官と内通している模様…こんな事を王宮は許していいのですか?」


「ああ…」


言ってしまった。


誰ともわからないため息があちらこちらで聞こえた気がした。


「それは真か?」


宦官が先程から怯えている紅花様に声をかける。


「え?あ、あの…」


紅花様はなんと答えようとオロオロとしてしまう。


駄目か…


私はもう一度と落ち着かせようと紅花様に近づこうとすると…


「落ち着け、それは本当か?ゆっくりでよい話せ」


「へ、陛下…」


陛下自ら紅花様のそばにいき優しく声をかけた。

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