第47話ため息

「陛下ご報告が·····例の王蘭様ですが後宮の王妃候補者達とのお茶会で騒ぎを起こしていまーす」


静は先程見ていた光景を仁陛下に伝えに来ていた。


「はっ?なんで騒ぎになんて…今まで一度もそんな事なかったぞ。それにあの王蘭が揉め事を…おこすか…」


仁はため息をつき眉間に皺を寄せた。


「どうも、他の王妃の間の揉め事に口を出したようですね。それまでは端で大人しくしてたのでますが…」


納得する答えにため息をつく。


「それで、上手く収まりそうか?」


「それが…これまでの王蘭様の動向を見ていて感じたんですけど、あれ多分何か良くない事しようとしてると思いますよ」


「良くないこと?」


「まぁ俺も王蘭様に会ったこと無いんでなんとも…でもあの顔は王妃がする顔じゃないね」


「くっ…」


やりかねない王蘭に仁は部屋の中をウロウロと歩き回る。


「仕方ない!行くぞ!」


「えー!とうとう顔見せるんですか?あんなに隠してたのに」


「いや…文官として…」


仁陛下は服を脱ごうとする。


「それは無理でしょ、だって王妃候補者がほとんど居ますよ。その中では陛下の顔を知ってる者がほとんどでしょ」


確かに…


「ここは陛下として行くのが妥当じゃないですか?」


静はニヤニヤと笑っている。


「くそ!わかった着替えを持ってこい!後宮へ行く!」


仁陛下の声に文官達は一瞬意味を考えて停止していた。


あんなに後宮に行きたがらない陛下が自ら行くと…


「陛下…やっとお気持ちを固めてくださったのですね…」


声を聞いていた大臣達が流れそうになる涙をグッと堪える。


「い、いや…今日は王妃達が集まって何かしていると聞いたのでな、一度挨拶だけ…」


「わかりました!おい!一番いい冕服を用意せよ!」


「ハッ!」


バタバタと側近達が用意に取り掛かる。


「お、おい!地味な…一番地味な服にしろ!あと冕冠を忘れるな!すぐに着替えて出る!」


「お任せ下さい!一番いい物を用意致します!」


「一番良くなくていい!一番顔が隠れる物にしろ!」


「え?」


「早く!」


「は、はい!」


やる気を出した側近達のおかげで仁はすぐに着替えて後宮へと向かった!







私は誰が一番手を出しそうか周りを眺める。


ここは…さっき紅花様を転ばした人がいいかな…確か愛琳とか言ったな。


私は愛琳に的を絞ってにっこりと微笑む。


「優麗様、お騒がせして申し訳ごさいません。ここにいる愛琳様が事情を知っていると思いますよ…ねぇ愛琳様~」


他の人の陰に隠れて後ろにいた愛琳様に声をかけると皆が振り返り愛琳に注目が集まる。


「あら、愛琳様が?」


優麗様に名前を呼ばれて慌てていた。


「ち、違います優麗様!この人の言ってる事は嘘ですわ!私は何も…」


「あら!紅花様の足を踏んで転ばせて謝りもしないじゃないですか!しまいには女官達に何か言ったんでしょ?だってその馬鹿な女官達は本来紅花様の後ろに付くはずなのにあなたの女官達と仲良さそうですもんね」


「愛琳様?今のは本当ですか?」


「い、いえ!違います!ちょっとあなたいい加減なさいませ!」


愛琳はキッ!と王蘭を睨みつける。


「ふふ…」


王蘭は思わず笑ってしまった。


「くっ…今笑いましたね…いい加減に…」


愛琳が扇を振り上げてこちらに向かってきた。


王蘭はそれをじっくりと眺める。


あんなひ弱な腕で振り下ろされた扇などハリセンみたいなもんだろう。


どこで受けようか…頭…はさすがにやりすぎかな。

それならやっぱり肩辺りかなぁ


首を少し曲げて振り下ろされるのを待っていると…


「なんの騒ぎだ!」


衛兵の声に王妃達がビクッと肩を跳ねた。


肝心の愛琳も驚き扇を持ったまま固まっている。


あーあ…


思わぬ邪魔が入り王蘭はひとり心の中で舌打ちをした。

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