第46話怒り
「ぎゃあ!」
女官はあまりに痛さに紅花様から腕を離した。
私は紅花様の手を掴むと自分の方へと引き寄せる。
「きゃっ!」
そのまま隠すように腕の中に抱きしめた。
「そんな主人を主人とも扱わない女官になんの意味がある!あなた達は自分の役目を放棄した!この事は私が上に話しておきます。今すぐその不快な顔を消してくれる?」
あまりの怒りに言葉遣いが悪くなるのを必死にこらえた。
油断したらふざけんなクソ野郎と叫びそうだった。
「王蘭様…何か勘違いをしていませんか?私達は紅花様の言う通りしているだけでございます。ねぇ紅花様そうですよね?」
女官はにっこりと笑って紅花様を見つめた…その目は余計な事を言うなと言っている。
紅花様はビクッと肩を揺らして怯えるように私の胸に寄りかかる。
「あ、あの…私…」
何か言おうとするが私は紅花様の瞳に写る不快な風景をそっと手で隠した。
「大丈夫、ゆっくりでいいです。あなたがどうしたいか言ってください。助けて欲しいなら私は最後まで一緒にいます」
耳元で優しく語りかけた。
震える手をギュッと握りしめながら強く抱きしめる。
紅花様の震えはゆっくりと治まっていった。
「私…あの人達に…馬鹿にされて…でもそれはここでは普通だって…でもやっぱり耐えられないです」
紅花様はそう言うとポロポロと涙を流した。
「女官がお世話をする主人を馬鹿にするなど有り得ません」
春さんがキッパリと言い切る。
「決まりましたね。誰か!衛兵を呼んできてください!」
私が叫ぶが誰も動かない…そのうちに騒ぎに優麗様がこちらに歩いてきた。
「なんの騒ぎでしょう、せっかくの王妃達の宴に相応しくない声が聞こえてきましたが…」
優麗様は私と揉めてる女官達を見つめる。
女官はすぐに膝をついて優麗様に謝罪した。
「優麗様、申し訳ございません。こちらの王蘭様が私達の事に難癖を…それはもう恐ろしい鬼のような顔で…」
「鬼のようなって……まぁしたかも」
そこは否定しない。
「でもこの人達主人であるはずの紅花様にずっと不敬を行っておりました…それこそこの後宮の物として恥ずかしい行為だと思います。この事は今すぐに陛下のお耳に入れるべきかと…」
陛下と聞いて王妃達がざわついた。
「こんな問題を陛下のお耳に入れる方が不快にさせるのでは?ここは私が開いた会です。私が責任をもって判断致します…」
優麗様がそう言うと頭を下げていた女官の口がニヤリと笑った。
ふん…なるほどね。みんなグルってわけか…
それならここでどう吠えようとこの女官に罰はあたえられない。
それどころかこのまま紅花様がこいつらと帰ったら何をされるか…
帰ってすぐに仁や南明様に報告したいが自分から彼らを呼び出した事も無いのでいつ来るかもわからなかった。
「はぁ…」
もういっそこいつら全員殴ろっかなぁ…
そうなったら私の罪ってなんだろ?
それか極限まで怒らせて叩かれてからやり返そうか!
それなら正当防衛になるかも…
私はいい考えだとニヤリと笑う。
「王蘭様…今何か良くないこと考えてませんか?」
「私もそう思いますー」
春さんと凛々が顔を顰めて私を止めようとする。
その時·····風も無いのに遠くで木が揺れた気がした。
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